ASTRO2011見聞記

2011.10.17
図1 ASTROのメイン会場
ASTRO2011見聞記

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
唐澤久美子

 2011年10月1日から6日まで、フロリダ州マイアミビーチ市のMiami Beach Convention Centerで開催された第53回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)に参加した。
 この時期の日本は、彼岸を過ぎ、暑かった夏も終わり、漸く秋の気配が漂って来ていたが、予想通りマイアミビーチは暑かった。しかし、これも予想通り、コンベンション センターは寒かった。節電の極端な弱冷房に慣れていた私には外の方が気持ち良く過ごせたくらいで、ホテルの室温 は65°F(18.3℃)に設定されているし、食事はとても食べきれない量が出てくるし、全く相変わらずの米国の過剰消費文化にはついて行けませんね。今年の夏の放医研は、前期前半の稼働制限のためにHIMACをフル稼働させていたので、時々電力使用量が許容量の100%近くになって、「健康に影響のない範囲で冷房を止めて下さい。」というアナウンスが流れ、30℃の部屋で白衣を脱いでうちわを使っていたのに比べると、エネルギー使い放題の別世界であった。
 今回のPresidential Symposiumのお題は、難治癌の集学的治療で、食道・胆道・膵・直腸癌などほとんどが消化器癌についてであった。これらについて診断から外科治療・化学療法・化学放射線療法を含む治療戦略についての講演が続いた。機能温存についてのセッションでは、眼の悪性黒色腫の小線源治療における視力温存、肛門・直腸などの骨盤腫瘍での排便機能の温存、前立腺癌治療後の性機能温存、乳癌治療における整容性について取り上げられ、特に骨盤領域の話題が日本ではここまで分析しないので興味深かった。
 Plenaryでは前立腺癌の3DCRTとIMRTの比較、直腸癌に対する術前療法の3年結果、RTOG 0617のIII期非小細胞肺癌に対するセツキシマブの有無での60Gyと72Gyの比較試験の結果が発表された。直前に展示会場を歩いていたら、発表者のJeff Bradlrey先生に行き会ったが“I’m nervous.”と言っていた。PlenaryはJeffでさえ緊張するらしい。
 小生の得意領域は、乳腺と頭頸部であるが、最近、乳癌を治療していない施設に異動した反動か、乳腺の話題が恋しくなって、殆ど乳腺たまに頭頸部のセッションに参加していた。乳腺では寡分割照射、加速乳房部分照射(APBI)が相変わらず話題の中心であった。乳腺は教育講演3、口演セッション(9題)4、パネル1、ガイドライン解説1で、前立腺の教育講演5、口演セッション4、パネル2に次いで多かった。ちなみに、頭頸部は教育講演3、口演セッション3、パネル1で、日本からは放医研の長谷川先生とがんセンター東の全田先生が粒子線治療の口演発表をした。

続きは「RadFan12月号」(2011年11月下旬発売)にてご高覧ください。