Lily MedTech

取材製品情報

超音波

COCOLY

独自の散乱像再構成技術「リングエコー撮像法」によって、受診者に寄り添う乳がん検診を実現するのがCOCOLYである。受診者はベッド型検査装置の上でうつ伏せになり、ベッド中央にある脱気されたお湯で満たされた開口部に乳房を片側ずつ下垂させる。すると、穴の中に設置された約2,000の素子から構成されるリング型振動子アレイの一部素子から超音波が送信され、360°から撮像し自動的にエコーデータを取得する。リングアレイが下に移動して断層像撮影を繰り返すことで、撮像時における乳房の形状変化がほぼないまま高い再現性を持つ3D画像を作成する。術者は位置を調整し、深さを入力して開始ボタンを押すだけなので、術者のスキルに左右されない安定した画像が再現できる。また、受診者と術者が直接触れることや、術者に乳房を直接見られることなく検診ができるため、受診者はコロナ禍でも安心感を持って受診できることもメリットの一つである。

ブースで取締役兼CTOの東 隆氏は「この装置によって、受診者に触れずに3D画像を撮影し、検査を行うことに成功した。しかし、まだ完全に自動で読影までができるわけではない。次の段階としては、AIを活用し、完全に自動で撮像から読影までが可能な装置を作りたい。本製品は開発当初から近い将来にAIを組み込むことを前提として作られているため、術者や撮り方によって同じ症例でも画像が変わるということがない。そのため、AIも組み込みやすいのが特徴である」と述べた。

また、取締役兼COO/CFOの近藤洋平氏は「本製品はこれからの乳がん検診において、受診者、医療従事者双方の負担を大きく軽減することが期待されている。特に、多くの女性受診者に喜んでいただける製品だと考えている」と語った。

 

 

ブースにて、写真左から近藤洋平氏、東 隆氏、寺田 曜氏

 

受診者は腹臥位となり、ベッド型検査装置中央にある開口部に乳房を入れて検査を行う。

ブースインフォメーション

Lily MedTech ブースNo. C1-06

 

技量に左右されない撮像を可能にするリングエコー

日本人の乳がん検診数は、今日では対象人口の50%弱が受診するまでになったが、コロナ禍の影響もあり、減ることはあっても増加は見られない。そのため、死亡率の低下までには至っていないのが現状である。そんな中、乳がん治療の権威である土井卓子先生がセンター長を務める医療法人湘和会湘南記念病院乳がんセンターでは、この度Lily MedTech社が開発した乳がん検診用リングエコー「COCOLY」を導入した。その背景について、土井先生に話を聞いた。

 

土井卓子 先生
医療法人湘和会湘南記念病院
乳がんセンター センター長

 

横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学医学部付属病院での研修後、済生会横浜市南部病院、独立行政法人国立病院機構横浜医療センターなどを経て、2009年にかまくら乳がんセンターを立ち上げる。乳腺外科分野に特化して経験を積み、女性ならではの観点から患者に寄り添う乳がん治療、乳腺分野での治療を行う。現在、湘南記念病院乳がんセンター長として、医師、看護師、薬剤師、体験者コーデイネーターやリンパ浮腫ケアースタッフなど一丸となった乳がん治療チームを組織し、形成外科とも連携した乳房再建など、総合的な乳腺治療を目指す。その他、乳がん啓発のため、さまざまなメディアの出演や講演活動、執筆を行う。
横浜市立大学医学部臨床教授、日本外科学会専門医、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会認定医、乳腺専門医、マンモグラフィ読影認定医、ICD

 

 

湘南記念病院乳がんセンター
〒248-0027 神奈川県鎌倉市笛田2-2-60
乳腺治療に特化した乳腺外来として2009年に設立。外来診察は予約制で年間200例以上の手術を行う。積極的に再発やターミナルケアーも受け入れながら、医師を中心にレントゲン技師、看護師といった乳腺外来のスタッフが一丸となるチーム医療で乳がん治療にあたる。また、積極的な乳がん検診の啓発を行い、早期発見と死亡率低下への貢献を目指す。

 

Q. 昨今の乳がん検診の状況について教えてください

新型コロナウイルス感染症に伴い、昨年の乳がん検診件数は減少したと言われている。しかし、緊急事態宣言中だった2021年6~9月は検診自体を中止していたために、その間の件数はゼロだったが、再開した10月以降は平時よりもむしろ増加しており、特に11月などは受け入れ件数よりも検診希望数がはるかに上回っている。結果、年間総数では減少しているものの、実際はそこまで減っていないのが現状である。
とは言え、まだまだ受診率は伸び悩み、受診歴のある人はリピーターとしてその後も定期的に受診するが、一度も受けたことのない人は受診しないまま、というケースが多い。このコロナ禍においても、これまでに一度も検診を受けたことのない方や若年層の検診件数を増やすこと。そして、検診によって乳がんによる死亡率を低下させること。それが、乳がんと向き合う私たち医師にとっての責務だと考えている。そんな中で、この「COCOLY」の登場は、検診数の増加に寄与できると期待している。

 

Q. 「COCOLY」導入の経緯について教えてください

やはり視触診検診だけでは、早期がんの発見は難しい。しかし、マンモグラフィ検診は痛みや被ばくへの怖さもあり、受診数はなかなか増加しにくい。また、とりわけ若年層に多く見られる意見だが、どちらの検査も「見られる、触れられる」ことへの抵抗がある。特にコロナ禍では技師や医師との距離感、直接触れられることへの抵抗感は増したように感じている。そこで、距離を保つことができる装置、直接触れることのない装置を導入すれば、こうした問題の解決につながると考えた。そんな背景の中、コロナ禍でも安心して受診できるリングエコー「COCOLY」の臨床試験に協力したのがきっかけである。

 

 

Q. 「COCOLY」の特長について教えてください

「COCOLY」の最大の特長は、受診者にとっての受け心地の良さと、技師のスキルに左右されずに画像を再現できることにある。
臨床試験時に行ったアンケート調査の結果を見ると、他の乳がん検診方法と比較して、リングエコーの方が「受け心地が良い」または「受け心地がやや良い」と回答したのはマンモグラフィ、MRIともに9割を超えた(図1)。また、他の超音波検査と比較しても88%の方が好意的な回答をしている。実際に、現在院内で日々検証を行っているが、「眠くなるほど心地良い」という意見も出ている。

 

 

ハンドヘルド型の超音波装置でプローブを当てて操作するわけではなく、受診者が乳房を円筒状のくぼみに下垂させるだけのため、誰が撮影しても、いつでも均等な撮像が可能となる(図2)。画像の質が技量に左右されず、安定しているため、医師にとっても他のエコー画像より時間がかからずに読影がしやすい。また、ハンドヘルド型で生じる圧迫感がないことも、受診者の好意的な意見につながっていると考える。
さらに、画質の面でも、空間分解能が優れているため、再現性の高い3D撮像が可能である。我々医師は腫瘤だけでなく、周囲の引き込みについても注目する。「COCOLY」は小さい腫瘤とその周囲を鮮明に写すため、診断がしやすい。

 

 

Q. 「COCOLY」を使用する上でのメリットについて教えてください

検診を受けるにあたって、男性の医師だと抵抗感のある方も多くいる。そんな時に「COCOLY」なら「見られる、触れられる」心配がない。また、術後の経過が気になる方、のう胞や線維腺腫など、一度は良性腫瘍だと診断されたけど気になる方など、繰り返し検査を受けたい方には、非常に有用となる(図3)。
一方、病院側から見ると、自動で検査でき、読影の時間もあまりかからないため、その分、悪性の疑いがある方の検査などに時間をかけることができる。「COCOLY」は、想定では1人につき15分、1時間で4人の検査が可能となるため、検診スケジュールが立てやすいこともメリットとなる。これまで「検診は時間がかかる」「待ち時間が長い」などのクレームも減るだろう。
さらに、「COCOLY」はエコーゼリーを塗る必要がない。そのため、受検者にとってはゼリーのベタベタによる不快感がない。また、病院にとっても実質消耗品となるのが次亜塩素酸とぬるま湯だけのため、コスト面でもメリットが高いと言える。

 

 

Q. 「COCOLY」の改善点について教えてください

現在はポジショニングによる撮像の違いを検証している。また、乳房温存手術を受けて左右乳房の大きさが違う方への撮像、撮影時の腕や顔の位置など、本格的に受診者に使う前に院内で試験を行っている。まだ位置の問題で抽出できないケースや乳房の大きさによる違いなどがある。
ベッド部分の材質改善やブラインドエリアをなくすための工夫など、機器形状自体の改善も必要な部分もあるが、現在はそれ以上に受診者にとってのメリットが勝ると考える。

 

Q. 今後、「COCOLY」に期待することについて教えてください

高濃度乳房では診断が困難となるマンモグラフィ、粘液がんなど、脂肪と見分けがつきにくく発見しにくい病変もある超音波検査など、それぞれの検査には長所、短所がある(図4)。そのため、理想的には受診者の体形や特質などを理解し、使い分けるのがベストである。それを実現するためには、検診施設すべてに双方の装置が設置されることが望ましい。
「COCOLY」は非常に高分解能だがブラインドエリアは存在し、見つけにくい病変もあると推定される。そこでリングエコーとAIを組み合わせる、ポジショニングを工夫する、読影訓練を重ねる、などによってより正確で病変発見率の高い検査とすることが可能となり、活躍の場はさらなる広がりを見せるだろう。

 

 

対談 AIとCOCOLY

土井:井上先生は「COCOLY」とAIを組み合わせることについて、自分でもシステム開発をされているとか。
井上:そうですね。AIを組み合わせることによって、誰でも自由に乳がん検診を受けることができるようになれば、乳がんによる死亡率の低下に貢献できるのではないかと考えています。理想としては、例えば健康施設やスポーツジムなどに証明写真機のようなイメージで簡易型「COCOLY」が設置され、自分でリングエコー検診を行います。AIが「精密検査が必要」と判断した場合のみ、「病院の検査を受診してください」のようなメッセージが通知される仕組みですね。
土井:ブレストアウェアネスの延長で、自分の意思で「COCOLY」による検査を行うわけですね。証明写真機感覚なら、10代、20代の若い方の受診率も増えるかもしれません。
井上:同様にマンモグラフィにもAIを組み込み、受診者を「この方はエコーも必要」「この方はマンモだけで十分」「この方は病院でのフォローを勧める」などふるい分け、AIで絞り込みを行った方のみ医師が診断すれば、診察時間や被ばくなど、医療機関側にとっても患者にとっても双方にメリットが生まれると考えています。
土井:それは将来的に是非、製品化してほしいと思います。鎌倉市では検診事業の一環として、ブレストアウェアネスの普及に積極的に取り組んでいます。自分に合った乳がん検診の受け方やアドバイスなどの情報を提供するアプリ「ブレストヘルスナビ」の無料ダウンロードを始めるなど、様々な取り組みを行っています。
また、湘南記念病院では「COCOLY」について、YouTubeを利用して紹介動画を配信しています。誰でも見ていただけるように、一般公開していますので、検診を受けたことのない方だけでなく、導入を検討している病院の方にも是非見てほしいと思います。受診率の増加と死亡率の減少につながるように、私たちは今後も努力していきたいですね。

 

井上謙一 先生
医療法人湘和会湘南記念病院
乳がんセンター 副センター長

 

旭川医科大学卒業。北海道大学大学院医学研究科高次診断治療学専攻博士課程修了。癌研有明病院乳腺外科シニアレジデントなどを経て、2011年から乳がんセンターへ。AIを用いた乳腺画像の解析研究で数々の賞を受賞。乳腺疾患の正確な情報に基づいた質の高い診療だけでなく、患者個人のライフスタイルに合わせた対応を心がける。
第26回日本乳癌学会学術総会 Excellent Presentation Award受賞
日本乳癌学会専門医・指導医、日本外科学会専門医、マンモグラフィ読影認定医、乳がん検診超音波検査実施判定医

 

より多くの女性に乳がん検診を受けてほしい
その思いから生まれた新しい超音波画像診断装置 COCOLY

受診者がベッド型の検査装置上でうつ伏せになり、ベッド中央にある37℃の脱気水で満たされた穴に乳房を片側ずつ下垂させる。穴の中に設置された約2,000の素子から構成されるリング型振動子アレイの一部素子から超音波を送信し、散乱波を全素子で受信してエコーデータを取得する。この散乱像再構成技術「リングエコー撮像法」により、乳房を1スライスずつ撮像し、乳房断面の画像を作成する。リングアレイが下に移動して断層像撮影を繰り返すことで、撮像時における乳房の形状変化が少ないまま、高い再現性を持つ3D画像を作成する。下垂した乳房は底面に設置されたカメラとコンベックスプロープ画像から術者は位置を調整し、深さを入力して開始ボタンを押すだけである。また、撮像パラメータが固定されているため、操作者による撮像条件のばらつきが生じず、ボタンを押すだけの自動スキャンで撮像が可能となる。360°からの撮影と、音速を推定して合成することで、均質で高解像度の画像が得られる。

販売名称:乳房用リング型超音波画像診断装置 COCOLY 医療機器認証番号:303AIBZX00011000

 

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