SPECT
ほとんどのSPECT装置が未だに1950年に発 明された技術を採用しているのに対し、新たな 技術で検出器にCZTと呼ばれる半導体を用い、 小さな検出器を複数設置することで従来のガ ンマカメラから飛躍的な進歩を遂げた次世代 の心臓専用SPECT装置がD-SPECTである。アン ガー型ガンマカメラでは実現できないほどの 短時間で高感度、高解像度、高エネルギー分解 能の非常に鮮明な画像を撮影することができ る。
従来は20~30分かかっていた撮影時間が2 ~5分、長くても10分以内に短縮できるため、1 日あたりの検査数を大幅に増やすことが可能 で病院経営上も大きなメリットがある。また、少 量の放射性医薬品でも鮮明な画像が撮影でき るため、被ばく量の減少にもつながる。そのた め、経営の面から見てもメリットが大きいこと が特長である。
さらに、座位でも臥位でも撮像できることも、 患者側の体制が楽なだけでなく、医師にとって も横隔膜に邪魔されることなく読影ができるた め、検査効率の向上につながる。
SPECT/CT
「VERITON-CTTM」は、ガンマカメラの理想を叶える、全身用半導体ガンマカメ ラシステムだ。
360°フルスキャン撮像により、体積感度は従来の3倍。高性能マルチスライス CTと全身用半導体ガンマカメラが一体化し、優れた空間分解能を誇る。これによ り、微小な病変の検出が可能となり、診断精度の向上が期待される。 また、あらゆる体格の患者に対応できるよう、226kgの耐荷重、そして、80cmの ワイドボアなつくりになっており、アクセシビリティの追求がされている。 加えて、0.4秒/回転(64列CTの場合)する高速スキャンにより、モーションアー チファクトの低減が実現。高度な心臓検査向けのアキシャルスキャンやヘリカル スキャンが可能だ。
Spectrum Dynamics Medical Japan ブースNo. D2-10
半導体カメラD-SPECT®は高感度、高解像度、高エネルギー分解能を有する椅子状の心臓専用SPECTである。アンガー型ガンマカメラでは実現できなかった短時間で高画質かつ低被ばく量の検査が可能となった。また、心筋血流予備能比(MFR)の計測も可能となっている。今回は中嶋憲一先生に、その特徴から心臓核医学の現状、今後期待されることなどについてお話しいただいた。
中嶋憲一 先生
金沢大学大学院 先進予防医学研究科・機能画像人工知能学 特任教授
国立大学では数少ない核医学専門講座で、日本では金沢大学に初めて1973年に開講された。以後40年以上にわたって、広範囲の専門的核医学研究や核医学診療を行っている。大学の組織としては医薬保健研究域医学系・核医学、附属病院では核医学診療科として研究や診療が行われている。
心臓核医学は、元々虚血性心疾患に対する検査として始まった。カテーテル冠動脈治療(PCI)の適応を決定するのに、初期の頃は冠動脈造影をして狭窄があれば血行再建を行っていた。虚血が10%以上あれば冠動脈治療の適応、それ以外なら薬剤治療が一般的だった。しかし、ISCHEMIA試験の結果を受け、虚血の有無だけでなく、症状や病態に応じて薬剤治療を選択するなど、患者にとって最適な治療を選択するようになる。個別化医療へと方向が変わり、非侵襲的イメージングとしてSPECTとCTAを使い分け、ガイドラインも、低リスクや若年層の患者は冠動脈CTを優先し、中リスク以上の患者や高齢者はSPECTを行うようになった。一方、カメラについては、欧米では2006年から、日本では2013年から心臓専用半導体カメラD-SPECT®が登場し、IAEA(INCAPS報告)の提言もあり、被ばく線量を下げるために放射線医薬品の投与量を減らし、201Tlや99mTcを利用して、半導体カメラなどの高機能SPECTが有効とされてきた。
「金沢大学ではD-SPECT®を2018年度に導入した。きっかけは、学会で実際にD-SPECT®の画像を観たことだった。短時間で高分解能、高感度、高エネルギー分解能と非常に鮮明な画像が撮影可能で、公開当初より従来のSPECT検査の常識を変える方法として注目した。これは核医学検査のワークフローを変えると感じ、一度使うと完全にD-SPECT®へ移行する人も多いと聞く」と中嶋先生は述べる。その販売台数は現在、全体で約500台、日本では約20台だと言う。
その特長の一つとして、撮影時間の短縮による1日あたりの検査数の増加が挙げられる。中嶋先生は、「従来20〜30分かかっていた撮影時間が、2~5分、長くても10分以内で済む。そのため、施設にもよるが、金沢大学やD-SPECT®を導入した市中病院でも1日で最大12人、海外では1日20人ほどの検査が可能となっており、病院経営の面から見ても優れた装置である」と語る。また、高感度ガンマカメラにより少量の放射性医薬品で鮮明な画像が撮影できるため、被ばく量を減少できる。さらに、座位でも臥位でも撮像できることもメリットの一つとなっている。患者にとって体勢が楽なだけでなく、横隔膜が離れるため、背側の減弱が出にくい。循環器疾患の件数が多い施設にとっては、これまで核医学検査は時間がかかるために予約を入れにくく、SPECT検査は難しいと考えられていた。しかし、D-SPECT®を使用することで時間の短縮ができるため、冠動脈CTと効果的に組み合わせることで検査効率のアップが期待できる。
D-SPECT®はアンガー型の心臓専用機と比べ、画像がより鮮明で、下壁の減弱が少ないこと。方針次第だが、被ばく量の減量が可能であること、心筋血流絶対値の測定が可能であることなどがメリットとして挙げられる。また、放射線医薬品の量を減らせるため、検査費用の低減にもつながる。
実際にD-SPECT®を使用した症例では、非常に高分解能な画像が撮影できる。従来のカメラでは不可能だった動態SPECT検査によって血流増加予備能を判断できる。座位での撮影では下壁の横隔膜との分離が明瞭となるため、前壁側も広い範囲で鮮明に撮影できた。
Spectrum Dynamics Medical 社が掲げる「ユーザーと一緒に製品を育てる」方針の通り、D-SPECT®の最大の特長はユーザーの意見が通りやすいことにある。中嶋先生は「これまでも、国内だけでなくイスラエルの開発部門とも日常的に相談しながら改善が重ねられてきた。日本独自の要請である2核種収集の改善、123I-BMIPPや123I-MIBGに対応したソフト開発など、その国での使用に合った検討が今現在も行われている。日本独自のデータベースが必要となるため、日本心臓核医学会で作成し導入された実績もある」という。
今後は絶対定量(SUVなど)、洗い出し計算を含めて、日本独自に発展をした123I-BMIPPや123I-MIBGの解析にマッチしたソフト開発、VERITON®のように全身用半導体SPECTの開発などに期待したい。
D-SPECT®は心臓専用のため、現状の患者数を考えると不要と考える医師もいるはずだ。しかし、現在の件数にだけ目を向けるのではなく、潜在的に検査した方が良い患者は多い。そうした場合に、短時間で済み検査時間の組み立てがしやすいD-SPECT®なら、現状の件数だけではなく、潜在的な心臓検査の人数を見て候補にできる。特に、冠動脈CTが多い病院、PCIの多い病院などでは、循環器内科の支援につながる。高齢者の多い時代に、狭窄の見られる患者への対応として、冠動脈CTとSPECTを組み合わせて使用することが望まれる。
検出器にCZTと呼ばれる半導体を用い、小さな検出器を複数設置することで、従来のガンマカメラと比べて感度、分解能が格段に向上している。放射性医薬品の投与量を少なくしても短い撮影時間で診断に十分な画像を得ることができるため、放射線被ばくの減少にもつながる。
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