医用画像をクラウド上のデータベースに集約し、画像診断支援 AI 技術の研究開発を促進
公益社団法人日本医学放射線学会(事務局所在地:東京都文京区、理事⾧:青木 茂樹、以下 JRS)、順天堂大学(本部所在地:東京都文京区、学⾧:新井 一、大学院医学研究科放射線診断学 教授:青木茂樹)、富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社⾧・CEO:後藤 禎一、以下富士フイルム)は、国内の医療機関※1 で撮影された医用画像を集約し一元管理するデータベース「日本医用画像データベース(Japan-Medical Image Database、以下 J-MID)」向けに次世代クラウド管理基盤を構築した。次世代クラウド管理基盤は、富士フイルムのクラウド型医用画像管理基盤を活用したもので、4月3日、稼働を開始した。次世代クラウド管理基盤を採用した J-MID は、国内のどこからでも高速な医用画像の登録・参照・検索を可能にし、医用画像を活用した画像診断支援 AI 技術の研究開発を促進する。
J-MID は、JRS が 2018 年に稼働させた、医用画像を集約し一元管理するデータベースである。JRS は、J-MID の活用を推進し、画像診断支援 AI 技術はじめ、画像診断の精度向上や効率化を支援する技術の研究開発を促進させることを目指す。J-MID には、これまでに国内の医療機関・研究施設 10 施設※1 から提供された 4 億枚を超える CT・MRI 画像が、所見などを含むレポート情報とともに登録されている。現在、J-MID を活用した研究開発をリードする研究代表施設である順天堂大学や、その他複数の共同研究施設※2 において、J-MID に登録された画像や情報をもとに、画像診断の精度向上や効率化に寄与するさまざまな技術の研究開発が進められている。
JRS と順天堂大学は、J-MID の活用を加速させるため、データベースのサーバーを特定の場所に設置して管理する従来の方式から、クラウド上で管理する方式に移行することを決定した。次世代クラウド管理基盤を採用した J-MID は、国内のどこからでも、高速かつ簡便な画像の登録・参照・検索を可能にする。また、画像診断支援 AI 技術などの研究開発プロセスにて医用画像を AI に学習させるために必要なデータ加工(アノテーション※3)を 3 次元領域で行うツール「3D アノテーションツール」や、データベース上に登録された大量の画像の活用状況をモニターできる「ユーザーポータル・ダッシュボード」など、効率的な研究開発を支援する豊富な機能も搭載する。
今後、JRS と順天堂大学は、J-MID のさらなる活用推進と利便性向上に取り組み、学術的な研究から社会実装にいたる幅広い活動を支援する。また富士フイルムは、J-MID 向け次世代クラウド管理基盤の構築を通して得た知見を活かして、自社のクラウド型医用画像管理基盤を用いた製品の開発・提供を加速し、医療情報の安全な保管・活用を支援する。
次世代クラウド管理基盤を採用した J-MID の主な特⾧
(1) 医用画像を高速に登録・参照・検索することが可能
・医用画像を国内のどこからでも高速かつ簡便に登録・参照できるほか、参照したい医用画像やレポート情報を簡単に検索することも可能である。
(2)「3D アノテーションツール」と「プロジェクト管理ツール」で画像診断支援 AI の効率的な研究開発を支援
・ 医用画像を AI に学習させるために行うアノテーションを 3 次元領域で効率的に行えるツール「3D アノテーションツール」を搭載。セグメンテーション※4、ディテクション※5、クラシフィケーション※6 など、学習データ作成に必要なマーキングやラベル付けを直感的な操作で付与できる。
・ 複数の研究者が並行してアノテーションを行うことを想定した「プロジェクト管理ツール」を搭載。開発プロジェクトチームで大量の正解データを効率的に加工することをサポートする。
(3) 「ユーザーポータル・ダッシュボード」で活用状況をモニター可能
・ データベース上に登録された大量の医用画像や、所見などを含むレポート情報がどのように活用されているかを管理画面上でモニターできる。 J-MID を利用する各施設からアップロードされた画像やレポート情報のデータ容量や、ダウンロードされた容量を参照し、各施設での活用状況を把握することができる。
※1 J-MID データ提供施設:順天堂大学、九州大学、慶應義塾大学、大阪大学、岡山大学、東京大学、京都大学、北海道大学、徳島大学、愛媛大学。
※2 J-MID 共同研究施設:順天堂大学、九州大学、慶應義塾大学、大阪大学、岡山大学、東京大学、京都大学、北海道大学、徳島大学、愛媛大学、京都府立医科大学、神戸大学、国立がんセンター中央病院、国立情報学研究所。
※3 AI に学習させる学習データを作成するため、画像内にマーキングやラベル付けを行う作業。
※4 医用画像内から、特定の臓器や病変などの関心領域を輪郭抽出する機能を指す。
※5 医用画像内から、病変などの特定領域を検出して、ボックスなどのマーキングをもって指示する機能を指す。
※6 医用画像全体もしくは特定の画像領域に対して、例えば良性・悪性などの分類を行う機能を指す。
J-MID について
J-MID は、日本医学放射線学会が、2018 年に、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて稼働させた、国内の医療機関で撮影された医用画像を集約し一元管理するデータベースである。JRS は、J-MID の活用を通して、画像診断支援 AI 技術をはじめ、画像診断の精度向上や効率化を支援する技術のほか、画像診断装置やシステムの適正使用、画像標準化、被ばく管理など、放射線医療の向上に向けた研究開発を推進する。2019年より順天堂大学(大学院医学研究科放射線診断学 教授:青木茂樹)が研究代表施設として J-MID を活用した研究開発をリードしている。現在、データ提供施設として国内計 10 施設、共同研究施設として国内計 14 施設が J-MID に参画する。
お問い合わせ
公益社団法人日本医学放射線学会 J-MID について
メール:jmid.office@gmail.com
順天堂大学 総務局 総務部 文書・広報課
TEL:03-5802-1006
富士フイルムホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
TEL:03-6271-2000