MY BOOKMARK No.15 感染対策とポジショニングの一助に医療事故防止に

2021.12.20

KKR札幌医療センター放射線 技術科

鈴木渚斗 先生

はじめに

図1 CT寝台用ビニールシーツ“Cleanpilos”

 日頃検査を行う上で欠かせない製品、特に補助具などは施設毎で異なると思う。今回当院で使用している私のお気に入りの製品をその特徴も踏まえて2つ紹介する。
 1つ目はCT寝台用ビニールシーツである。当院ではキヤノンメディカルシステムズ社製のCT装置2台が稼働しており、そのどちらの機器にもキヤノン医療用品株式会社が販売する“Cleanpilos” というビニールシーツを使用している(図1)。このビニールシーツは寝台マットに被せ、マジックテープで天板に固定するだけで寝台にフィットするもので、誰でも容易に取り付けることができる。また、サイズは表1に示すように寝台の型式(2,000、1,800、1,500)に応じて3種類用意されており、キヤノンメディカルシステムズ社製のCT装置にカスタマイズされている。サイズが合えば他社のCT装置にも装着可能である。
 CT検査時、患者を寝台上に寝かせ、天板をガントリー開口部へスライドさせる必要がある。この際、寝台と天板の間には溝が存在するため、この溝に患者自身や衣類が挟まったり、患者に繋がれたチューブ等が引っ掛かったり、巻き込まれたりと医療事故に発展してしまう可能性がある(図2 a)。このシーツのサイドにはベロが付いており、天板スライド時に患者の衣類や点滴チューブ、ドレーンチューブのはさみ込みを防止することができる(図2 b)。

表1 Cleanpilos の仕様
お問い合わせ先 TEL:03-5805-1221 MAIL:https://supply.medical.canon/inquiry/ より
図2 シーツによる巻き込み防止効果
a チューブの巻き込み
b シーツで患者を包んだ状態

患者のために

 このシーツは塩化ビニルでできており、生地の表面は梨地と呼ばれる超微細な凹凸加工が施してあり、さらさらとした質感でソフトな感触となっている。そのため、患者が寝台に寝た際の違和感を抑えることができる。また、ビニール特有のべたつきもないため、ストレッチャーで運ばれてきた患者の寝台への移乗の際も引っ掛かることなく、スムーズに行うことができる。

寝台をクリーンに

 昨今、新型コロナウイルス感染症の流行は世界中に猛威を振るっており、多くの医療現場でひっ迫した状況が続いている。なぜこれほどに脅威となっているのか。その理由に不顕性感染と感染力の時期の問題がある。新型コロナウイルス感染症は、発症する2日前から人にうつす可能性があることが指摘されている。また、発症後数週間で突然重症化する恐れがあり、死亡する例も少なくない。したがって、我々医療従事者にとって“感染予防” の重大さは、以前に比べて更に増していると言える。
 誰がウイルスを持っているかわからない状況下では、検査を受ける患者への二次感染予防対策を講じる必要がある。Cleanpilosは塩化ビニル素材でありながら表面がさらさらとした生地であるため、汚れを容易に拭き取ることができ、検査後の寝台のアルコール消毒にも適している。当院では、新型コロナウイルス感染予防対策として、検査毎にアルコールを染み込ませたクロスで寝台を拭いて消毒している。ビニールシーツが広範囲に寝台を覆っているため、ビニールシーツの表面を拭くだけで寝台サイドの消毒もでき、作業の効率化に繋がっている。また、造影剤や患者からの廃液、血液や嘔吐物など目に見える汚れを拭き取る際も、付着した汚れの取り残しや、シミの付着もなく、寝台を清潔に保つことができる。もちろん、汚れが寝台と天板の間の溝に入ってしまうこともないため、手間を取ることはない。キヤノンメディカルシステムズ社製CTでこちらを導入していない施設は元より、他社製でもこのような製品を導入することをお勧めする。

万能発泡体

 2つ目に紹介する製品は株式会社生出が販売する”ワンダーエコ” という発泡体の中の“ワンダーボード” という製品である(図3)。主に保護材や緩衝材、断熱材、日用品雑貨などに用いられている。この発泡体は発泡スチロールとは異なり、印刷工程の裁断クズや古紙を主原料にでんぷんと結合剤(ポリプロピレン)を混合し、水蒸気発砲させて製造された初めての紙製発泡体である。化学発泡剤を一切使用せず、廃棄しても自然分解するため、可燃物ごみとしての焼却処分が可能である。また、結合剤のポリプロピレンはダイオキシンを発生しないため、発泡スチロールに代わる地球にやさしい新時代の発泡体として謳われている。サイズは表2に示す規格品のほか、用途に合わせて設計・加工することができる。当院で使用しているワンダーボードは厚さ20mmの340×195mmのもので、腹膜透析液(“ダイアニール-N PD-4 2.5 腹膜透析液 UVツインバッグ 1,500mL/5袋入”)を購入した際、ダンボール底に緩衝材として入っていたものを利用している。購入する場合、当院で使用しているサイズの価格は50枚で5,100円である。

図3 当院で使用しているワンダーボード
表2 ワンダーボードの規格品仕様
梱包材 紙製発泡体「ワンダーエコ」カタログより

用途

 この発泡体は緩衝材としての弾力性・復元性に優れていながらも、適度な柔軟性を備えているため、検査時の患者のポジショニングの際に主に役立つ。
 仰臥位が必要な痩せた患者や脊椎の術後の患者の場合、棘突起が寝台に当たって痛みが強く生じ、ポジショニングに苦労してしまうといった場面が多々ある。そこで、背中の下にワンダーボードを敷くことでクッション代わりとなり、患者の苦痛をスポンジなどを敷くよりも和らげることができる。実際に痛みが軽減したという声も多く、私も積極的に利用している。また、ある程度加重によって発泡体が沈んでくれるため、拡大率はそれほど大きくはならない。
 円背の患者が仰臥位になる場合では骨盤と肩が浮いてしまうため、ワンダーボードを数枚重ねて敷くことで、安定した体位を取ることができる。また圧力の分散により患者の苦痛の軽減も見込める(図4)。
 小児の手指撮影では、固定具として利用している。当院では、患者が暴れてしまうときに、手が動かないように上からワンダーボードで押さえて撮影を行っている。ワンダーボードの外側を押さえるため、患者の手と撮影技師の手が重なる心配はない。固定していながらもある程度の柔らかさがあるため、患者の苦痛も少ない。もちろん、ワンダーボードが照射野に写り込み、撮影部位の評価ができないといったこともない。また、耐久性も高く、固定時に変形しても元の形に復元する。ただし、長軸方向には折り曲げても復元するが、短軸方向に強く折り曲げるとちぎれてしまう場合があるため、注意が必要である。
 他にも頭部や耳鼻科領域のCT検査などで基準線(RBラインやOMラインなど)に合わせる際に、ワンダーボードを枕の下に置いて頭を高くしたり、背中の下に置いて頭を低くしたりなど、1枚単位での微調整が可能である。また円背の患者が仰臥位になる場合の枕を高くする際にも利用できる。ワンダーボードはポジショニングにおける様々な場面で活躍する非常に使い勝手の良いアイテムである。

図4 仰臥位が必要な円背の患者へのポジショニング

画像への影響

 ポジショニングの際に力を発揮するワンダーボードであるが、画像への影響が気になる方もいると思う。一般撮影において、ワンダーボードが照射野に写り込んでしまうことやCTにおいて、アーチファクトが生じたという経験はない。
 試しにCTでワンダーボードを撮影し、CT値ヒストグラムを作成するとCT値の範囲は-940〜-1000 HUであり、X線の吸収や減弱はほとんどない(図5 a)。一般撮影においても、針金をワンダーボードの角に置き、小児の手指撮影の際の条件下で撮影を行った(図5 b)。空気との濃度差はほとんどなく、ワンダーボードが画像に影響することはない。

図5 ワンダーボードを撮影したCT画像および一般撮影画像
a CT(100kV, 100mA, 0.5s/r, HP51.0, スライス厚5.0mm, 再構成関数FC22,再構成処理AIDR eMILD)
b 一般撮影(42kV, 160mA, 3.2msec,)

さいごに

 今回、個人的にお気に入りの製品を2つ紹介したが、CT寝台用ビニールシーツは検査の安全性や感染対策、特に新型コロナウイルス対策に有用であり、導入検討の価値があると思われる。ワンダーボードはポジショニングにおける苦痛軽減や固定具として利用価値が高く、様々な面で我々の助けとなっており、当院では欠かせないものとなっている。院内で腹膜透析を行っている施設では流用を特におすすめする。

謝辞

 本稿の執筆にあたり、当院の柿本技師、渡部技師には熱心なご指導とご助言を賜りました。心から感謝申し上げます。
 また資料作成に協力していただいた、水口技師、松浦技師に心から感謝申し上げます。

<文献>

1) 新型コロナウイルス感染症の再確認:<https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202009_3/
2) 谷正司・水野直人・阿部修司: 小児CT検査における吸引式固定具の有用性と改良
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jirt/58/8/58_KJ00003111440/_ pdf/-char/ja>2002