MY BOOKMARK No.29 使いやすく多彩な機能を持ったZiostation2

2022.02.21

熊本大学病院医療技術部診療放射線技術部門

榎本隆文

はじめに

 私のお気に入りの装置は、「Ziostation2(ザイオソフト株式会社)」である。ご存知の方も多いであろうが、Ziostation2は3D医用画像処理ワークステーションであり、多彩なアプリケーションを搭載した装置である(図1)。実際に当院でも3D解析、術前計測、機能解析など様々な場面で使用しており、当院の画像検査を行ううえで、欠かすことのできない装置の1つになっている。ここでは、Ziostation2の簡単な特徴、また実際の当院での使用経験から、お気に入りの機能やアプリケーション、最新のアプリケーションをいくつかピックアップしてご紹介したいと思う。

Ziostation2の特徴

 まず1つの特徴は、Ziostation2へのアクセスのしやすさである。画像検査には様々なモダリティがあり、モダリティごとに解析を行うことが一般的であるが、Ziostation2はマルチベンダー、マルチモダリティに対応しているため、装置1つで多くの画像検査に対応した解析が可能である。他のモダリティとのフュージョン画像も容易に作成でき、非常に有用である(CT/SPECT フュージョン、CT/MRI フュージョンなど)。また、複数コンポーネントの組み合わせで構成されるため、クライアントPCがあれば、院内のどこからでもアクセス可能である。当院での構成を図2に示すが、CT室・MRI室・血管造影室・RI室・読影端末・診療科など複数のクライアントPCを接続しているため、どこからでも操作することができる。当院では、消化器外科の医師が、肝切除術前のシミュレーションとして、肝臓ボリューム解析や切除面の最終確認などを遠隔で行うなどしている。また、読影端末でも遠隔で使用可能であることから、放射線科医師も所見を書く際、気になった部分を自身で3D展開して確認することも可能である。

 もう1つの特徴としては、操作のわかりやすさである。ワークステーションの操作に慣れない人が3Dを作らなければならない、といったシーンは多くの施設で経験があるだろう。Ziostation2には多くの自動処理機能が搭載されており、複雑な処理を簡略化してくれる。例えば、骨除去や血管の分離、臓器の抽出など複雑な画像処理過程をほぼ自動で行ってくれる。もちろん修正も多少は必要であるが、その精度は非常に高く、画像処理の大幅な時間短縮に繋がっている。また、マクロ機能というものも搭載されており、様々な処理工程を自動で行うように設定が可能である。当院でも多くのマクロ機能を用いており、画像保存の形式や角度、色など誰が作っても同じような画像になるよう工夫をこらしている。このように、事前に設定を行うことによって、誰でも簡単に操作することが可能である。また、更に使い方に慣れてくると、自分でマクロ機能を設定することができるので、自分の使いやすいようにユーザーでカスタマイズができる点もありがたい部分である。

 また、アプリケーションの種類が豊富にあるという点も特徴の1つである。Ziostation2には、50種類以上ものアプリケーションがラインナップされており、当院では44種類のアプリケーションを使用している。その中で、実際に使用してみて良かったおすすめしたいアプリケーションや機能、注目のアプリケーションなどを次に紹介したいと思う。

おすすめのアプリケーション

CT肝臓体積測定

 まずご紹介したいのが、「CT肝臓体積測定」である。これは主に消化器外科の肝切除術前、移植外科の生体肝移植術前で用いられている。肝臓の動脈相、門脈相、静脈相の各フェーズの画像を読み込むと、ガイドに沿っていくだけで血管、腫瘍、肝臓のマスクが抽出され、3D表示することが可能である。それぞれの体積も自動で表示され、セグメントの自動分割も可能である。もちろん造影効果やタイミングによっては修正を必要とするが、その精度はかなり高い。また、各フェーズで呼吸による位置ずれが想定されるが、Ziostation2では、位置合わせを必要とする多くのアプリケーションで、剛体と非剛体位置合わせの使い分けが可能であり、補正による正確な位置合わせが実現できる。更に、前述のマルチモダリティのフュージョンが可能であるため、アシアロシンチグラフィーと併せて残肝機能も考慮したシミュレーションが可能となる(図3)。

TAVR術前プランニング

 次にご紹介したいのが、「TAVR術前プランニング」である。このアプリケーションは、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の術前シミュレーションに特化したもので、各種ガイドラインに対応した計測項目を自動計測する。このアプリケーションも、ガイドに沿っていくだけで必要な計測項目を網羅できる。また、最近のアップデートで、自動計測時に石灰化を含まないように調整が行われ、しっかりとガイドラインに沿った仕様に随時アップデートされており、使い勝手が非常に良い。このアプリケーションが登場するより前は、既存のアプリケーションを駆使しながら、全ての計測に1時間以上の時間を要していたが、このアプリケーションを使うことで半分程度の時間で計測が可能となった。Dynamic ROIという機能も搭載しており、計測時に1時相のデータにROIを描くことで、他の心位相でもROIが追従し、最大径・最小径などを容易に計測できる。このアプリケーションは、当院のTAVR術前プランニングにおいて欠かせないアプリケーションである(図4)。

CT心筋ECV解析

 最後にご紹介したいのが、「CT心筋ECV解析」である(図5)。CTにおける心筋ECV解析は最近のトピックであり、このアプリケーションも最新のアプリケーションである。ECV解析というのは、心筋における心筋線維化の程度を定量的に評価する手法であり、MRIでの評価がゴールドスタンダードである。しかしながら、近年では逐次近似再構成や様々な画質改善方法の登場によって、CTでも同等の解析が行えるようになった。CTによるECV解析には、シングルエネルギーによって、造影前後の画像(単純・遅延造影)をサブトラクションすることにより算出するサブトラクション法と、デュアルエネルギーによって、遅延造影のヨード密度画像から算出するヨード法がある。どちらの手法においても、従来はマニュアルでROIを囲い、値をエクセルシートなどで計算するという手順を踏む必要があった。このアプリケーションを使用すれば、計算を自動で行い、心筋全体のECV値を算出することが可能である。セグメントごとの表示も可能だ。またサブトラクション法では、非剛体位置合わせを使用するので、位置ずれの影響がない。そして、このアプリケーションを使うことにより、3次元ボリュームデータとしてECVマップを保存することが可能である。このデータと、冠動脈CTAの画像をマルチデータフュージョンさせれば、また新たな付加情報を得ることができる(図6)。まだ登場して間もないアプリケーションではあるが、こういった評価手法は、今後の心臓CT検査において欠かせないものとなっていくだろう。

まとめ

 簡単にではあるが、Ziostation2の特徴や使いやすいおすすめの機能、アプリケーションの一部を紹介した。もちろん、まだまだ紹介しきれていないアプリケーションは数多くあり、自分自身も使用したことのないものが多くある。全てのモダリティのアプリケーションに共通して言えることは、常に新しい機能、最新の情報が取り入れられており、臨床的に非常に有用なものばかりであるということだ。それでいて、操作に慣れない人でも使いやすく、普段使い慣れない当院の医師からも非常に好評だ。アプリケーションや処理によっては、まだまだ改善の余地があるものも存在するのは事実であるが、そういったユーザーの声を逐一拾い上げ、反映させてくれるのも嬉しい部分である。使用する機会があれば、是非手に取って一度使っていただきたいものである。