日本電信電話株式会社、IOWN APN接続による離れた2つの病院間での遠隔手術支援を実証~手術支援ロボットの高精度かつ安定した遠隔操作、同一手術室にいるようなコミュニケーション環境を実現~
日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明氏、以下「NTT」)、東日本電信電話株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷直樹氏、以下「NTT東日本」)、弘前大学医学部附属病院(青森県弘前市、病院長:袴田健一氏、以下「弘前大学病院」)、株式会社メディカロイド(兵庫県神戸市、代表取締役社長CEO:宗藤康治氏、以下「メディカロイド」)、鹿島建設株式会社(東京都港区、代表取締役社長:天野裕正氏、以下「鹿島建設」)は、遠隔手術支援の実現に向けて、物理的に離れた2つの病院間に設置した手術支援ロボット「hinotoriTM サージカルロボットシステム」(以下、「hinotoriTM」)をIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(以下、「APN」)で接続する遠隔手術支援の実証に成功した。本実証結果を活かし、今後の遠隔手術支援の社会実装への貢献が期待されている。
背景
手術支援ロボットを使用して行う遠隔手術支援は、地方外科医師数の減少による地域医療格差といった社会課題の解決、地域医療支援と若手外科医の教育・育成による医療レベルの向上(医療の均てん化)に寄与することが期待されており、日本外科学会が中心となって社会実装に向けた遠隔手術ガイドラインの策定を推進されている。2025年度には遠隔手術ガイドラインの改定が予定されており、今後、遠隔手術支援の社会実装が進められる。
実証目的
今回の実証目的では、遠隔手術支援の応用可能性を確認するため以下を課題とした。
- 物理的距離がより離れた病院間での遠隔手術支援や、通常のロボット手術と変わらない形で執刀医がより良い遠隔手術支援を行えるように、ネットワークの遅延やゆらぎの影響を僅少化すること。
- 遠隔コミュニケーションにおいて、途中で切断や遅延なく、執刀医や医療従事者がデバイスを装着しなくても同一手術室にいるような臨場感あるコミュニケーションができること。
共同実証内容
青森県内にある弘前大学医学部附属病院と、つがる西北五広域連合つがる総合病院を、大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を併せ持つAPN(NTT東日本提供の「All-Photonics Connect powered by IOWN」)にて接続し、実際の医師による人工臓器モデルを使用した現実に即した遠隔手術支援の実証を実施。
(1)APNの通信品質の評価および、同環境下に接続したメディカロイドの「hinotoriTM」を高精度かつ安定して遠隔操作実現できるか。
(2)同環境下に接続した鹿島建設の立体音響スピーカー「OPSODIS 1」、バイノーラルマイク、高精細4Kリモートカメラ、および大型モニタをAPNと組合せて活用することにより、離れた病院間の手術室にいながら、まるで同一の手術室にいるかのような臨場感のある円滑なコミュニケーション環境を実現できるか。
図:APNを活用した遠隔手術支援の構成イメージ
なお、本実証は、日本医療研究開発機構(AMED)の「医療・介護・健康データ利活用基盤高度化事業(高度遠隔医療ネットワーク実用化研究事業)」「手術支援ロボットを用いた遠隔手術の実現に向けた実証研究(24hsa422001h0003)」の支援により実施された。
本取り組みの成果
1.高精度な手術支援ロボットの遠隔操作
APNの通信品質の評価については、定量的な通信品質測定を行い、片道の伝送遅延は0.28msec、遅延ゆらぎは平均0.00μsec、最大0.02μsecという結果であった(表)。さらにAPNとNTTの従来ネットワークとを比較し、APNは従来のギャランティ型回線より、約4倍の伝送遅延性能、120倍以上の最大遅延ゆらぎ性能であることを確認した。今回は約30kmの距離において評価を行ったが、APNは距離に伴う遅延やゆらぎの影響を僅少化できるため、さらに長距離となった場合の効果が期待される。
片道の伝送遅延 | 遅延ゆらぎ(平均) | 遅延ゆらぎ(最大) | |
---|---|---|---|
IOWN APN | 0.28msec | 0.00μsec | 0.02μsec |
従来のギャランティ型回線 | 2.20msec | 0.17μsec | 2.96μsec |
上記の結果により、ネットワークの遅延やゆらぎの影響を僅少まで軽減した伝送環境を用いた、手術支援ロボットの高精度な遠隔操作を実現。遠隔地にいる術者が、ネットワークを介さずに行うロボット支援下手術と変わらない形で遠隔手術支援を行えることが確認された。
2.同一手術室にいるかのような高品質なコミュニケーション
遠隔コミュニケーションの評価については、術者にコミュニケーション環境を体感してもらい、「コミュニケーションの臨場感を感じるか」等のアンケートに対して高評価の結果が出た。
これらの評価結果により、APNを用いて大容量・低遅延・ゆらぎなしでの音声信号、映像信号を伝送し、立体音響スピーカー「OPSODIS 1」、バイノーラルマイク、高精細4Kリモートカメラ、および大型モニタを用いた高品質な空間を創出、まるで同一の手術室にいるかのような臨場感のあるコミュニケーション環境を実現できることが確認された。
遠隔操作の様子:
左:現地施設側(弘前大学医学部附属病院)、右:遠隔施設側(つがる総合病院)
今後の展開
今回のIOWN APN実証結果から従来ネットワークに対するAPNの性能優位性が認められたことを踏まえつつ、今後、将来の遠隔手術支援社会実装に向けたフィールド実証が共同で進められる。
また、IOWN APNの技術により、医療の質の向上、質の高い医療へのアクセシビリティの確保、医療業界のDXへの貢献が期待されている。
お問い合わせ先
日本電信電話株式会社
IOWN総合イノベーションセンタ 広報担当
問い合わせフォームへ
東日本電信電話株式会社
経営企画部 IOWN推進室
Mail:info-iown-ml@east.ntt.co.jp
弘前大学医学部附属病院
総務課
Mail:jm6453@hirosaki-u.ac.jp
株式会社メディカロイド
経営企画部
Mail:sh.mrd_contact.pr@medicaroid.com
鹿島建設株式会社
広報室
Tel:03-6438-2557