富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一氏、以下、富士フイルム)と順天堂大学医学部附属順天堂医院(所在地:東京都文京区、院長:桑鶴 良平氏、以下、順天堂医院)は、院内の多様な医療データを一元的に管理できる富士フイルムの医療機関向け統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder(シータ クリニカル ファインダー)」内の診療データを基に、AI技術を用いて、外来患者の転倒リスクを予測する技術を共同で開発した。本技術により、外来患者の転倒リスクを高い精度で予測できるようになり、患者の転倒予防につながることが期待できる。
患者の転倒事故は、国内の医療現場において高い頻度で発生している。転倒は骨折や頭部外傷などの大けがにつながり、患者の生命予後やQOLに対して深刻な影響を及ぼす可能性がある。そのため、多くの医療機関では入院患者を対象として、転倒リスクアセスメントシートを用いて患者の転倒リスクを判定・数値化し、リスクの程度に応じて付き添いや歩行介助などの転倒防止策を講じている。一方で、外来患者は入院患者に比べてアセスメント対象となる患者数が多く、また医療機関における限られた滞在時間では患者の状態を把握することが困難であるため、十分に対応することが難しい状況にある。そのため、外来患者を対象として、効率的かつ高精度に転倒リスクを評価する方法を開発することが強く求められている。
今回、富士フイルムと順天堂医院は、富士フイルムの統合診療支援プラットフォーム「CITA Clinical Finder」に蓄積された診療データと、AI技術を用いて、外来患者の転倒リスクを予測する技術を開発している。本技術は、電子カルテや放射線部門システム、内視鏡部門システムなど院内のさまざまなシステムと連携する「CITA Clinical Finder」に集約されたデータから、年齢・特定の薬剤の処方歴など500種類以上の転倒リスクと関連性が高いと考えられる特徴量を生成し、AIに学習させて開発したものである。「CITA Clinical Finder」に登録されている診療データを基に各患者の転倒リスクを予測し、パーセンテージで表示している。また、予測に寄与した特徴量を、想定される転倒リスク要因として提示することが可能だ。
順天堂医院の外来患者約70,000名のデータを用いて本技術の精度評価を実施したところ、予測精度を示すAUROCは、0.96であり、入院患者を対象にした先行研究(AUROC:0.90)と比べて優れた結果を示した。本技術を活用することで、医療従事者は、外来患者の転倒リスクを高い精度で評価できるようになると期待できる。
富士フイルムと順天堂医院は、今後、本技術のさらなる有効性検証を進め、早期実用化を目指した。
順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長 桑鶴良平氏のコメント
順天堂医院では、長らく医療の質の指標(Quality Indicator)の一つとして75歳以上の外来患者さんの転倒発生率の低下を挙げてきた。病気の診断、治療のために来院した患者さんが院内で転倒してしまい、さらなる疾患を患うことは避けたいという理由からである。今回は、これまで研究が進んでいなかった外来患者さんの転倒のリスク因子に着目し、統合診療データと機械学習を用いて富士フイルム株式会社と共同で転倒リスク予測モデルを構築した。本研究結果が、外来患者さんの転倒リスクを精度高く予測し、医療機関が前もって対応することで、その発生率が低下することを期待している。
富士フイルム株式会社 執行役員 メディカルシステム開発センター長 鍋田敏之氏のコメント
医療の質・安全性の向上のために多くの取り組みを推進されている順天堂医院の医学的知見と、富士フイルムの「CITA Clinical Finder」にて管理している病院内の包括的かつ大規模な診療データならびに当社独自の医療特化型予測AI技術を融合させることで、外来患者を対象とした転倒リスクを高精度に予測する技術を開発することができ、大変嬉しく思う。今後、本技術の社会実装を実現し、外来患者の転倒リスクの早期把握に寄与していく。
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