書評「倒れるときはマエノメリ! 海外IVR挑戦記」中島康雄(聖マリアンナ医科大学)

2015.11.19
IVRを目指す若い医師だけでなく
日本人が忘れかけている何かを得られる好著!

 
中島康雄
聖マリアンナ医科大学放射線医学講座

 
 現Dotter Interventional Instituteで活躍中の堀川雅弘著、『倒れるときはマエノメリ! 海外IVR挑戦記』を読ませていただいた。副題にある“実用サムライ式米国臨床留学メソッド”には堀川氏の熱意の発露が見える。また表紙カバーには“倒れるときはマエノメリ!”、“他流試合だ!カテで勝て”、“あなたも世界で活躍できる医師を目指そう”など、本書の内容を端的に表した言葉が一つ一つちりばめられている。本書はIVRを目指す若い医師だけでなく日本人が忘れかけている何かを得られる好著である。とにかく皆さんに読んでいただきたいと切に念願する。
 本書の構成は日本のIVRに関する序文に始まり臨床留学への道程と具体的な準備方法、実際の米国での体験とサバイバル方法、そしてこれからの夢、と続いている。随所に彼の持っているグローバルな視点からくる価値観がわかりやすい言葉で表現されている。結構過激な内容も含まれているため、頭の硬い年寄りは嫌悪感を感じる可能性はあるが、表現が洗練されているため嫌みを感じずに読み進められる。また、様々な理不尽の中で診療している姿のすべてがリアルに書かれ、その状況が目に浮かんでくる。これらはひょっとすると彼の文才のなせる技なのかもしれない。本書は単なる“侍の気合いと根性話”ではなく実践的に何をいつ、どのように準備するか、留学先で求められることをどのように対処していくかが体験を通して記載されているため、正に“̶成功者の華美な回顧録ではなく̶”実践的に使えるガイドとして完成している。
 はやりの利益相反の観点から私と堀川氏との関係について明らかにしておく。残念ながら私は堀川氏とは一緒に働いたことはなく指導したことも全くない。彼の留学前に日米医学医療交流財団が行っている海外留学助成選抜試験の面接でお会いしたのがその後、気軽に話をするようになったきっかけで、その後、私が編集に携わった『放射線科診療にみる医学留学へのパスポート』(公益財団法人日米医学医療交流財団編/はる書房)では執筆をお願いし、力の入った原稿を投稿いただいた。その後も国際学会でいろいろ話をするようになったが、日本人が失いかけている情熱を実現する戦略を持ち、それを実行できる希有な人材である。海外で活躍する日本人放射線科医は少なくないが、常に日本の医療を変えるという大きな志をエンジンにしている点で、期待の人物である。
 本書は煎じ詰めるとIVRという日本では比較的ニッチな領域を切り開いている侍の体験記である。かつて国連難民高等弁務官を務められた緒方貞子さんが海外貢献を実現するためには“熱い心を持ち冷めた頭で実践せよ”とおっしゃっていたのを聞いたことがある。臨床医としての海外留学にも同じことが言える。本書は本気で海外留学を考えている医学生や研修医、また臨床留学の夢を持ち実際にどのようなものかを知りたいと思っている若手医師、そして日本の社会、医療をより良い方向に導きたいと考えている全ての人にお勧めできる一冊である。

 
倒れるときはマエノメリ! 海外IVR挑戦記

著者:堀川雅弘(Dotter Interventional Institute/クオリティラドIVR)
発売元:メディカルアイ
サイズ:四六判
頁数:160ページ
定価:本体価格2,400円+税
発行年月:2015年9月30日
ISBN-10 4862911322
ISBN-13 978-4862911322

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