IGRTの今後の展開2

2024.02.22

 

ソリッドステート発振方式の
サーモトロン-RF8 GR editionの特長


 
山本ビニター株式会社 高周波研究所  巽 昭二

はじめに

 ハイパーサーミアは、診療報酬点数表において放射線治療に分類され「M003電磁波温熱療法」として収載されている。本療法の治療装置であるサーモトロン-RF8 GR edition(図1)は、*RF容量結合式加温で、高周波発振素子を半導体を用いたソリッドステート発振方式に再編成されたハイパーサーミアシステムである。本装置の特長について紹介する。

特長

1. 省スペース化とシステムの再編

 旧モデルのサーモトロン-RF8は真空管発振方 式の発振器部が装置全長4.2mの1/3を占めていた。GR editionはコンパクトな半導体発振器の採用によるシステムの再編成を行い、全長も2/3に短縮、省スペース化と高機能なシステムを実現した。

2. 自動インピーダンスマッチング機構
 RF容量結合式加温は、単に電極間に最大電力を与えるだけでは深部を加温することは困難である(図2)。これには静電容量を結合させるため、発振側と負荷側のインピ-ダンス整合が重要となる。旧モデルでは手動による2ステップのインピーダンスのチューニング操作が必要であり、操作者の手技によってはインピーダンス整合にバラツキが生じることがある。


 GR editionは自動マッチング機構となっているためチューニングスイッチを一度押すだけで、直ちに最適なインピーダンス整合が得られる。さらに治療中の呼吸変動や患部温度の上昇に伴うインピーダンスの変化にも自動で追従し、常に最適なインピーダンス整合が維持される。

3. オーバレイボーラスの装備(図3)
 容量結合式加温では電極板端で電圧が高くなる現象(エッジ効果現象)が生じる。このため出力を上げるとより強くエッジ部が加温され、これが疼痛や脂肪硬結の原因となり加温電力が制限される。このエッジ効果を解消するため、電極パッドと体表面の間に冷却液が還流するオーバレイボーラスを介在させることによりエッジ部の高電圧が分散し熱感・疼痛が緩和される。電極パッド内には導電性溶液を入れ、オーバレイボーラス内には導電性の専用循環液を還流している。

 GR editionでは、二つの溶液の導電性率を深部加温に最適な値にそれぞれ調整するダブルボーラスシステムを採用しており、エッジ効果よる熱感・疼痛を緩和しながら深部加温に必要なRF出力を容易に上げることが可能となっている。

4. 操作性及び安全性の向上が図られた新機能
 GR editionで旧機にない以下の新しい機能が付加されており、さらに操作性や安全性の向上を図っている。
①治療テーブルセッティング機能
 治療テーブルは上面クッション部が分割式で、伏臥位では顔を埋める空間を設定することが出来る。また患部が電極中心に来るよう前進・後退及び左右と自在に位置決めを行うことが可能である。

②加温部領域の体表面温度計測機能
 加温部領域は赤外線サーモカメラによって常時監視している。またポインターを合わせた箇所の表面温度が非接触で観測可能である(図4)。

まとめ

 2023年9月に開催された日本ハイパーサーミア学会で、放射線治療との併用において41.5℃の加温は76Gy→86.3Gyに相当する効果があることの論文(H PetraKok et al: Quantifying the combined eeffect of radiation therapy and hyperthermia in terms of equivalent dose distributions. Int J Radiat Oncol Biol Phys88(3):739-745, 2014)を引用した発表があり、ハイパーサーミアは41.5℃の加温で10.3Gyの上乗せ効果が望めることが報告された。
 前述1~4の加温特性を持つサーモトロン-RF8 GR editionは、41.5℃はもとよりそれ以上の温度の深部加温が可能であることから、更なる上乗せ効果が期待できるハイパーサーミア装置として、信頼性と安全性を今後も提供していきたい。