【JRC2012スペシャルレポート】「その5 第71回日本医学放射線学会総会 2日目午前」 米虫 敦先生(関西医科大学放射線科)より
米虫 敦先生(関西医科大学放射線科)よりJRC2012の速報をいただきました!

2012.04.14
 第71回日本医学放射線学会総会 2日目の午前が終わりました。筆者が参加したセッションについて、印象を述べます。

(教育講演11)消化器1:良性肝腫瘍の鑑別1
 JRSの魅力の一つに幅広い分野の教育講演を聴くことができるところがある。自分の専門分野のセッションにばかり参加していると、専門分野についての知見を深めることができるが、逆に専門外の分野についてどんどん知識が劣化して行ってしまう。このような機会に自分の専門分野以外の教育講演を拝聴することで、知識をリフレッシュできることは非常にありがたい。
 2日目の朝イチの教育講演として筆者は『(教育講演11)消化器1:良性肝腫瘍の鑑別1』のセッションに参加した。会場は機器展示ホール2階の一番奥のF205+206であり、最も遠い会場である。会議センターから歩くと少し距離があり、思ったより会場に到着までに時間がかかってしまった。
 このセッションは肝嚢胞性腫瘤(信州大学・山田 哲先生)と肝血管性病変(徳島大学・松崎健司先生)についての教育講演である。
 肝嚢胞性病変は、日常臨床で毎日のように遭遇するものである。本講演では単純性肝嚢胞との鑑別について、内部の信号、局在や分布などのシェーマを用いて非常に分かりやすく解説していただけた。
 肝血管性病変としては、海綿状血管腫が代表的なものである。典型的なものでは診断は非常に簡便であるが、非典型例について診断に難渋することが多い。本講演では、非常に多くの非典型的な血管腫症例を呈示していただき、とても勉強になった。

(Cypos 12)IVR 2:塞栓術 除く肝臓
 本学会でのCypos発表は、ネット上でのCypos供覧の他に、1題あたり4分間の口頭発表と質疑応答のセッションがある。ところが、口頭発表の後すぐに質疑応答を行わず、各セッションのすべての口頭発表が終了した後に、まとめて質疑応答の時間を持つという少し変則的な構成となっている。このため、口頭発表が終了した後に質疑応答を行わずに、すぐに次の発表者が別の演題の口頭発表が始まる。いつもの学会発表の形式と異なるため、筆者は少し違和感をもった。質疑応答をまとめて行う形式は、充分に議論を深めたい演題について多くの時間を割くことができるが、逆に誰からも質問をされない演題もあった。これについても賛否両論があるかもしれない。
 本セッションは「塞栓術 除く肝臓」といことで、幅広い臓器の塞栓術の演題が集まった。特に注目が集まっていた発表は、日本医科大学・嶺 貴彦先生の「C74:出血性胃十二指腸潰瘍に対するNBCA-TAEの循環動態への寄与と内視鏡観察による潰瘍治癒の経過」である。消化管出血に対してNBCA-Lipiodolを用いた塞栓術後に、内視鏡にて経過観察を行っても虚血性の消化管潰瘍は発生しなかったという主旨の発表である。消化管に対してNBCA-Lipiodolを使用する際には、虚血性潰瘍を来してしまうかもしれないという不安がつきまとうが、本発表によってNBCA-Lipiodolを使用する際の一助となるかもしれない。

(一般口演 34)IVR 5:塞栓術(除く肝・胃静脈瘤)・凍結療法
 こちらも、様々な領域の塞栓術についてのセッションであり、非常に幅広い発表が集まっている。
東海大学・小泉 淳先生の「Murrayの法則を用いた部分的脾動脈塞栓術における梗塞率定量化」の発表は、脾臓各分枝の直径を3乗したものが、各分枝の還流する脾実質体積に良く相関するという主旨の発表である。とても簡便な方法で部分的脾動脈塞栓術を施行する際の梗塞率を塞栓前に予測することができる方法である。本発表は先日のSIR2012でPoster Awardを受賞されている。