ITEM of the Year 2024~2024年はこの製品が来る!~ 米虫 敦先生(関西医科大学総合医療センター 放射線科)

2024.04.05

第1位 サーフローZERO(テルモ)、スーパーキャス(メディキット)

 2024年1月27日から新留置針「サーフローZERO」が新発売された。カタログを眺めてみると「高圧注入仕様300psi以下に耐える設計」と記載がある。ならば、従来品のサーフロー針は非耐圧だったのだろうか?調べてみると従来品の「サーフロー留置針」や「シュアシールドサーフローII」の添付文書には「高圧(21psi以上)では使用しないこと」と明記されていた。
 サーフロー針は、全国のCT室で造影剤の高圧注入に広く使用されている。これらが全て「適応外使用」だったことになる。今回、高圧注入仕様のサーフロー針が発売されてしまった以上、今後も適応外使用を続けることは許されない。高圧注入仕様の留置針は、今回のITEM2024で、放射線診断部門で最も注目される商品である。なお、サーフロー針と同様に広く普及しているメディキット社のスーパーキャスは、従来18~22Gで300psiまでの耐圧に対応している高圧注入仕様である。

第2位 Gangiソフトガード(シーマン)

 Gangiソフトガードは、スプリング内蔵の鈍端スタイレットが付いた穿刺針である。鈍針を使用することにより軟部組織の損傷を予防する試みの穿刺針は他にも多く存在する。しかしながらGangiソフトガードは、鈍針にスプリングを内蔵することによって膜構造を穿刺する際には鈍針先端がキックバックして穿刺針が露出し、膜構造を突破した瞬間に鈍針先端がスプリングで元に戻る構造となっている。この際に、穿刺針手元部の「ピン」も一緒に挙動し、視覚的・感覚的にも鈍針先端の動きがわかるようになっている。
 実は、この針を初めて紹介されて試用した際は鈍針先端に連動する「ピン」を押し込んだ状態で穿刺をしていた。このため通常の鈍針と同様の挙動を示し、Gangiソフトガードの有用性に気付かなかった。この針の真骨頂は、ピンをフリーにした状態で穿刺した際に「パチン」とピンがスプリングで元に戻ることによって、膜構造の突破が明瞭に分かることである。Gangiソフトガードを使用する際には、ピンをフリーにした状態で穿刺することも考慮して欲しい。

第3位 トリプルガード(マエダ)

 「トリプルガード」は、防護眼鏡を使用せずに水晶体を防護するデバイスである。本製品を一言で言うと、甲状腺防護具の左側に顔面を防護する「防護板のついたて」が装着された防護デバイスである。IVR手技中、一般に術者は患者の右側に立って手技を行う。すると術者の顔面はX線管球との位置関係から、左斜め下方からの散乱線によって被曝されることになる。トリプルガードは、左斜め下方からの散乱線をネックガードに取り付けられた防護版によって遮蔽することができる。
 使用前の最大の関心事は、術中の視野の確保であった。実際にトリプルガードを使用してみると、想像以上に顔面左側の防護板が視野の妨げとなり不愉快であった。しかしながら、矯正用眼鏡と重装防護眼鏡を併用した際の眼鏡の曇りや煩雑さからは解放され「一長一短」といった印象であった。
 しばらくトリプルガードを使用した後、患者ベッドとモニタ画面の位置関係を従来の配置から修正すれば良いことに気がついた。透視画像や参照画像が表示されるモニタ画面を右側(患者の足側)へ移動させれば、術者顔面の左側にある防護板が視界に入りにくくなり、視界が遮られる不愉快さは大幅に低減した。
 トリプルガードは、新しい水晶体防護デバイスになると考えられる。

第4位 EMBOLD(ボストンサイエンティフィック)

 EMBOLDは、従来品のInterlock 18と比較して、より互換性が高く、より柔軟なデタッチャブルマイクロコイルである。
 ボストン社のInterlockシリーズは、一般にIDCコイルと呼ばれ「ファイバーが付いて塞栓力が強いコイル」として普及していた。しかしながら、IDCコイルはデタッチャブルコイルではあるが、カテーテルから出た時点でコイルが切り離されてしまい、また、デリバリーワイヤー先端のフックがコイルに干渉する恐れもあった。
 EMBOLDは、内腔0.021から0.027のマイクロカテーテルに適合し、非常に高い耐キンク性能のデリバリーワイヤーを持ったデタッチャブルコイルである。Interlock18と比較して、ファイバー量は半減しているが、金属ボリュームは56%増加しており、血栓形成能力が期待できる。また、デタッチシステムも簡便であり、手技をシンプルに行うことができる。
 EMBOLDは一部の先行施設でのみしか使用できなかったが、やっと一般施設でも使用が可能となった。今後、様々な場面での活用が期待できる塞栓コイルである。

第5位 塞栓用ヒストアクリル(ビー・ブラウンエースクラップ)

 2023年3月に正式に塞栓用ヒストアクリルが発売となった。ヒストアクリルは液体塞栓物質として世界中で広く使用されてきたが、すべて正式の承認のない適応外使用であった。今回、本邦において正式に承認されたことは世界初であり、世界中より注目されている。
 使用にはe-ラーニングの受講が必須である。施設基準は「日本IVR学会専門医修練認定施設または専門医修練連携施設で実施委基準に該当する医師が行うことができる施設」「上記施設以外で、実施医基準に該当する医師が緊急避難的に必要と判断し自ら行うことのできる施設」であり、実施医基準は「①日本IVR学会認定専門医であり、かつ、ヒストアクリルを用いた血管塞栓術の十分な経験を有す医師」「②日本IVR学会認定専門医に準ずる医師であり、かつ、ヒストアクリルを用いた血管塞栓術の十分な経験を有す医師」「③上記①②以外の場合は、日本IVR学会認定専門医の指導の下で実施できる医師」である。
 今回の正式承認によって、日本IVR学会認定専門医および修練施設、修練連携施設の重要性がさらに高まっていくこととなるだろう。

第6位 VERITON-CT™(Spectrum Dynamics Medical Japan)

 高性能マルチスライスCTと全身用半導体ガンマカメラシステムが一体化されたSPECT-CT。
 12個の独立した検出器により360°のフルスキャンを行う事で検査のスループットを向上させている。高い光子変換効率を有するCZT検出器を採用しており、40~220Kevの範囲内の各放射線同位体の主な散乱光子ピークについて正確な収集と補正を可能としている。CTによる減弱補正と併せて、正確な病変部位の検出、SPECにおける定量化を行うことで、診断精度の向上が期待される。

第7位 CL-S301(JVCケンウッド)

 「CL-S301」は、PACS用途としてはJVCケンウッド社初となるUSB Type-C対応モデルである。Type-Cケーブル1本で、従来のモバイル端末の充電に加えノートPCの画面表示と最大60Wの給電が可能になり、今までノートPCと一緒に持ち運ぶ必要があったACアダプタや複数ケーブルの携帯は不要となった。また、KVMスイッチ搭載により、本機1台で2つの異なるPC端末の入力切り替えができるようになり、設備費用の削減と省スペース化にも貢献する。
 さらに、新ソフトウェア「Meidvisor Utility」に対応したことで、画面に表示されるウィンドウ上のアイコンをワンクリックするだけで、「ターボルミナンス」・「ビジュアルポイントモード」等の各種読影サポート機能の起動や、入力切替ができるようになった。遠隔・在宅読影のニーズに応え、医療機関および医療従事者の業務効率化や働き方改革をサポートする。

第8位 MRI アンビアンスシステム(フジデノロ)

 「MRI アンビアンスシステム」は、検査室の無機質な冷たい雰囲気を快適な空間に変貌させる。映像や音楽は検査前のMRI室に入るところから始まり、ドアを開けると壁や検査装置に投影されるプロジェクションマッピングと連動するRGBライトが患者を包み込む。プロジェクターは1,920×1,080 Full HD、明るい部屋の中でも鮮やかに投影できる5,000ルーメンの輝度を誇る。また、サウンドシステムも内蔵されており、入室した患者は鳥のさえずり、川のせせらぎ、波の音を感じることができる。リアルタイムで変化する映像と音楽はまるでその空間に入り込んだような没入感を与え、検査中の不安な時間を特別な時間に変える。

第9位 Unity(エレクタ)

 治療しながらリアルタイムで腫瘍の位置と形状を確認できる優れたモニタリング技術と高度な軟部組織の識別能力をもつ。これまで放射線治療が困難だった症例でも、軟部組織の詳細をとらえた高磁場MRIによる高品質画像を使用することによって、周辺の健常組織と腫瘍をはっきりと識別でき治療の選択肢が生まれる。

第10位 XTREK series(ジェイマックシステム)

 同社看板製品のPACS。PACS専業メーカーとして培ってきた多くのノウハウにより、柔軟に対応できる非常に使い勝手のいいPACSといえる。多くの放射線科医の声を聞き、多彩な機能を搭載している。読影から、カンファレンスなどに対応でき、画像表示の迅速さやユーザーインターフェースに自由自在にできる点も評価が高い。
 さらにJPEGファイルなどをビューア上へドラッグ&ドロップすることだけで、PACSサーバーに登録できる点も嬉しい。なおDICOM変換コンバータは不要であり、全ての端末上で、Axial、Coronal、Sagittalを同じビューア上で再構成表示ができる。