開催にあたり、ダニー・リスバーグ氏(同社代表取締役社長)により、同製品導入の市場背景についての解説が行われた。がんは日本における国民病とも呼べる疾患であり、国民の2人に1人が罹患し、3人に1人が亡くなっている。また、日本は世界に例を見ない速度で高齢化が進行しており、前立腺がんの罹患率は60歳を超えると急激に増加することから、2020年には日本人男性において最も罹患数が多くなると予測されている。「このような背景のもと、MRIガイド下前立腺生検システムは泌尿器科にとって非常に有用なイノベーションとなるだろう」とダニー氏同製品の有用性について語った。
続いて、門原 寛氏(同社マーケティング本部)により、同製品の紹介が行われた。同製品には運用のための4つのツールが存在する。画像診断用/バイオプシー用ワークステーションでは、穿刺ガイドに従うことで容易に術前シミュレーションを行うことが可能。ニードルガイドは経直腸超音波プローブと比べ針の太さが約半分のため、直腸への負担が少なく、ダイナトリムにより確実に穿刺することで、度重なる生検を受ける必要がなくなる。MRI対応の生検針はチタン製のため歪みを生じることがなく、MRIにてしっかりと穿刺されたか否かを容易に視認できる。この4つのツールを活用することで、MR装置で前立腺がんが良性なのか悪性なのかを鑑別することが可能だ。同製品は同社製MRIである、「Ingenia 1.5/3.0T(dS Torso 32ch coil)」、「Acheva 3.0T TX/X-series/A-series(Torso/Cardiac 32ch coil)」、「Multiva 1.5T(SENSE HST 16ch coil)」に使用することができる(2013年9月現在)。
最後に、片平和博氏(熊本中央病院)による「前立腺生検の現状とMRガイド下前立腺生検の必要性」が講演された。片平氏は前立腺がん発見の契機にPSAの高値を挙げ、問題点としてPSAが高値持続あるいは上昇傾向にあるにもかかわらず、現在の標準生検である超音波下系統的生検では診断がつかない、悪性度が過小評価されてしまう点を挙げた。また、極めて進行が遅く無治療積極的経過観察に適応するラテントがんを発見・治療してしまう問題点も指摘された。これらの問題点に対し、「MRIガイド下前立腺生検は再生検において有意に検出能が高く、生検偽陰性を解消するソリューションたりえる」と片平氏は同製品の臨床的有用性を語った。
同製品は2013年9月31日現在、薬事承認を得ているものの保険承認を得るには至っておらず、より広い普及のために早期の承認が望まれている。