一般社団法人遠隔画像診断サービス連合会(ATS)第3回セミナーが開催

2014.06.03
煎本正博氏
前田一哉氏
森脇博信氏
松尾義朋氏
加納裕士氏
八木裕子氏
梅田知昭氏
会場風景
 一般社団法人遠隔画像診断サービス連合会(ATS)第3回セミナーが、5月24日に、エッサム神田(東京都千代田区)で行われた。3回目にあたる今回のテーマは「遠隔画像診断をささえる技術の進歩」であった。

 はじめに、煎本正博氏(イリモトメディカル)より、「遠隔画像診断をささえる技術の現状と問題点」が発表された。同氏は遠隔画像診断の歴史に触れ、元来遠隔画像診断とは、放射線科専門医不在の施設や「一人医長」施設等の問題を解決するために進化してきたと説明。その上で2014年度の診療報酬改定において画像診断管理加算に「当該保健医療機関以外の施設に読影又は診断を診断を委託していないこと」との施設条件が追加されたことを問題視した。ただし「管理加算は言葉通り、患者に最適なプロトコル設定や、社会的責任を負った報告書作成を全うしたことに対して加算される性質のもの」と煎本氏は述べ、その上で「今後の会で改善案ついて共に検討したい」と語った。また、遠隔画像診断企業において診断の質とコストパフォーマンスのバランスを取るためには、最新の技術をうまく応用し、人を育てていくことの重要性を説き、「永く遠隔画像診断事業を継続することが、ひいては社会全体に対する利益につながっていく」と主張した。

 「遠隔画像診断とモニタ」前田一哉氏(EIZO)では、液晶モニタの構造や、ガンマ値と視認の差異等が説明され、なぜ医療用モニタが遠隔画像診断において重要であるのか、が解説された。また、「モニタは経時劣化するものであり、読影の質を保つためには、ユーザではなく、モニタに詳しいメーカが主導となって品質管理していくことが重要だ」と述べた。発表後、設定やエビデンスについて活発な質問・意見交換が見られた。
 
 「ASPによる遠隔画像診断サービス」では、3社のATS会員企業からの発表があった。

 森脇博信氏(ドクターネット)は、クラウド型遠隔読影ASPサービス「Virtual-RAD」を紹介した。読影設備がクラウド上にあるため、どこからでも常に最新設備で読影することが出来、データ移送によるセキュリティ漏れも防げるという。今後は、クラウドAmiVoice(アドバンスト・メディア社と協力)や3DワークステーションのASP化に注力していく。

 松尾義朋氏(イーサイトヘルスケア)は、同社のモットーを「診断しない、システムを限定しない、クラウドにこだわる」と挙げ、クラウド化によって、精度の向上、コスト削減、コンシェルジュ的機能の強化が見込めると述べた。東大病院と共同開発したクラウド型画像診断CADサービス「CIRCUS+」や、予習から復習まですべてをクラウド上で行うラーニングシステム「神田塾」なども手がけている。

 加納裕士氏(医知悟)は、同社の「icombox」について「場所を選ばず、安全に、安価に読影でき、情報共有もできる、理想のシステムを目指した」と紹介した。また、これからの遠隔読影のあり方について同氏は「遠隔読影は今後、一企業ではなく社会全体のメリットを考えることが重要であり、まず報告書等がベンダー間でフェアに共有できる仕組み作りが望まれる」と述べた。
 三者三様のコンセプトを掲げつつも、各社とも症例集の有効活用に着目しており、今後の開発が期待される。

 最後に、「遠隔画像診断で用いるアプリケーション」として、八木裕子氏(PSP)、梅田知昭氏(富士フイルムメディカル)から自社遠隔読影サービスについての概説が行われた。また、梅田氏は類似症例検索システム「SYNAPSE Case Match」についても触れ、遠隔画像診断企業のビッグデータを反映した高品質な症例集の作成、また厳しい読影環境下での同製品のサポート機能に有用性が期待されるとした。