東芝メディカルシステムズ(株)は2014年8月23日(土)、ANAインターコンチネンタルホテル東京をメイン会場に、ライブ中継で結ばれた札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡のサテライト会場と共に「Global Standard CT Symposium 2014」を開催した。
開会にあたって瀧口登志夫氏(同社代表取締役社長)より「“Made for Life”をキーワードに日本のCTの医療被ばくを半減させたい」と力強い発言があったのち、「Aquilion ONE ViSON Editionの開発」と題し田中 敬氏(同社CT開発部)より2014年に実装が進んだVer.7 Functional Suitesの解説が行われた。これにより「4D脳動脈形態計測」「Adaptive Motion Correction」「4D気管支トラッキング」「4D骨関節計測」など動態撮影に貢献する機能の向上が図られている。
そして前半の講演「Technology of Area Detector CT」は座長に陣崎雅弘氏(慶應義塾大学)を迎え、立神史稔氏(広島大学)の発表「Full Iterative reconstruction:開発と臨床応用」から始まった。開発中の新たな逐次近似画像再構成法「Full IR」は低線量撮影においてノイズとアーチファクトを飛躍的に軽減させることができるだけでなく、空間分解能の向上やAIDR 3D以上の低コントラスト領域における分解能の向上により、低被ばくと画質向上の両立が期待できると述べた。
次に村山和宏氏(藤田保健衛生大学)による「Aquilion ONE頭部アプリケーションの臨床応用」は、MRAとの対比を交えながら頭部領域への臨床応用についての発表。全脳をカバーできるADCTならではのCT灌流画像、Dynamic CTAがもたらす虚血性脳血管疾患や動脈瘤の定量評価の可能性、SEMARによる金属アーチファクト低減効果、血腫と造影剤の鑑別を鮮明にするDual Energy CTの効果について語った。
続いて森谷浩史氏(大原綜合病院)の発表「Aquilion ONE胸部アプリケーションの臨床応用」はADCTによる呼吸動態撮影が主題、となった。まずブタ肺を用いた撮影方法と解析技術の研究について解説。続いて、肺癌の胸壁浸潤/癒着診断の臨床例などを挙げAquilion ONEを用いた呼吸動態撮影は簡便である点にも触れた。気管支トラッキングシステムなど定点追跡技術は重要な呼吸動態解析ツールとなるため「動態解析に有効なソフトウエアの登場にも期待したい」と今後への展望も含んだ発表となった。
そして後半「Clinical Benefit of Area Detector CT」は、座長に木村文子氏(埼玉医科大学)を迎え、臨床データを多数紹介されながらの講演となった。まず吉川 武氏(神戸大学大学院)の発表「腹部領域の臨床応用」ではCT Perfusionが肝腫瘍や肝機能評価に有用であるという臨床例を提示。普及には最適化・標準化が必要であり現状では固定したプロトコールにて実施する必要があるが、Aquilion ONEは少量の造影剤、低線量での撮影という厳しい条件に対応している点に言及。また腹部の侵襲的治療後の経過観察で金属アーチファクト除去には必須の技術としてSEMARに大きな信頼を寄せた。
次に平井俊憲氏(熊本大学大学院)の「頭部領域の臨床応用」はADCTの頭部への初期経験を通じての発表。MRI使用の場合との対比を用いつつ「AIDR 3D併用のADCTは1分程度のdynamic volume scanで低被ばくながら形態・機能情報が得られるため脳血管障害や脳腫瘍の診断に有用」という意見を述べた。
続いて小林泰之氏(聖マリアンナ医科大学)の発表「循環器領域の臨床応用」ではADCTならでの有用な画像診断のケースの症例を挙げた。小児や重症患者など体動や息止め困難な患者、不整脈に対応した心臓スキャンに対するメリットについて述べるだけでなく、ADCTでは関節や呼吸運動などあえて動態をスキャンし新たな情報を得ることもできるという画像診断の可能性も提示した。
最後を務めた吉岡邦浩氏(岩手医科大学)による発表「冠動脈サブトラクションの臨床応用」では、冠動脈サブトラクションCTと通常の冠動脈CTとの比較で臨床応用への効果を述べた。第一世代Aquilion ONEの使用であっても、高度石灰化の患者を対象とした場合、冠動脈CTに比べ評価不能セグメントを少なく抑られたと語ったほか、現実的に対応可能な冠動脈サブトラクションを行う際のカルシウムスコア、撮影心拍数の例を挙げた。
瀧口登志夫氏
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田中 敬氏
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陣崎雅弘氏
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立神史稔氏
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村山和宏氏
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森谷浩史氏
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木村文子氏
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吉川 武氏
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平井俊憲氏
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