島津製作所、乳房専用PET装置「Elmammo」販売開始

2014.09.12
Elmammo
 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)と(株)島津製作所は、乳房専用PET装置「Elmammo(エルマンモ)」の販売発表会を9月4日、東京都(千代田区)で開催した。
 今回、島津製作所から販売されるElmammoは大きく分けて4つの特徴をもつ。
①マンモグラフィのように圧迫板で挟まず、検出器ホールに乳房を入れるだけなので、痛みのない検査を実現。
②高精細な3次元画像を得られる。
③乳房に特化したリング形状の検出器を配置することにより、検出感度を向上。
④世界最小の検出素子を搭載した1辺1.44mmの高解像度を実現。
 会見では、まず、山崎知巳氏(NEDOバイオテクノロジー医療技術部)による悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクトの説明が行われた。同氏は、「近年、日本におけるがん患者数は増加の一途をたどり、日本人の死因の約3割をがんが占めている。特に2000年以降のデータでは女性の乳がん罹患者数の伸びが著しい」と、日本における乳がんの現状に触れた。「乳がんはがんの進行とともに、生存率が大きく低下するため、可能な限り早期に発見することが重要である。そのため、NEDOは生体細胞の分子レベルの機能変化を摘出・検出できる分子イメージング機器の開発を行うことを目的としたプロジェクトを2006~2009年にかけて実施した。「プロジェクトの成果として、Elmammoには、患者への負担軽減、微小な乳がんの検出、薬剤効果の事前確認(治療効果の予測)への利用、の3点を期待している」と述べた。
 同会では中本裕士氏(京都大学大学院)により同製品の有用性も紹介された。京都大学では2009年より実際に臨床現場で同製品を使用している。診断において、乳房を精細に摘出するための撮影時間の長さや、MRIや超音波画像と比べた診断能の違いなど、全4症例を紹介しながらElmammoの有用性を解説した。また、進行乳がんに対する化学療法の治療効果判定についての症例も紹介。「同製品を使用することにより、抗がん剤投与後の乳がんの状態について、1サイクルごとに的確な画像を得ることができる。投与を続けるのか、止めるのか、という早期判断が可能になる」と述べた。
 また、鈴木 悟氏(株式会社島津製作所取締役専務執行役員)より、本プロジェクトの成果と実用化、今後の展開が述べられた。2014年4月の診療報酬改定より、乳房用PET装置による検査は「乳房用ポジトロン断層撮影」として認められているが、全身PET/CTとの同日検査が保険適用の条件である。「将来的には、単独での使用を認められるようにしていきたい。また国内販売で臨床評価を頂いた上で、今後は、海外での販売を目指していきたい」とした。
 最後に井上芳浩氏(株式会社島津製作所医用機器事業部)より、ElmammoのPVとともに技術的特徴が解説された。同氏もElmammoについて「患者の負担を軽減させること、診断精度を向上させることに期待を寄せている」と語った。

山崎知巳氏
中本裕士氏

鈴木 悟氏
井上芳浩氏