ソニー、細胞の動きを捉えるセルモーションイメージングシステム発表――創薬支援や再生医療の研究に有用性を発揮――

2014.10.08
近藤紀陽氏
ソニー株式会社メディカル事業ユニットライフサイエンス事業部事業部長
松居恵理子氏
ライフサイエンス事業部LCI事業室統括部長
早川智広氏
ライフサイエンス事業部LCI主任研究員
 ソニー(株)は、9月24日、本社(東京都港区)にて、再生医療研究などに向けた新商品を発表した。同社は、メディカル事業においてはライフサイエンス分野で事業拡大を目指し、先端医療に貢献する革新的な研究手法やクオリティの高い製品の提案を方針として掲げている。
 はじめに、近藤紀陽氏(同社メディカル事業ユニットライフサイエンス事業部事業部長)より新製品の技術開発の背景について説明がなされた。同氏は、「自社の強みであるAV機器の技術力を活かし今後は、医療・研究領域へと拡大していくことを目指している。テレビの3D、4K技術やブルーレイディスクレコーダーの技術を、iPS細胞研究などに役立てたい」と自社の技術力の高さを強調した。
 続いて、松居恵理子氏(同社ライフサイエンス事業部LCI事業室統括部長)、今回の新製品は「新製品セルモーションイメージングシステム」は、細胞の動きを解析するもので創薬や再生医療研究などに提案できる。「我々は日本製薬工業会医薬品評委員会基礎研究部会『ヒトiPS細胞応用安全性評価』に参加し、今後も研究を深めるつもりだ。また京都大学iPS細胞研究所中畑龍俊副所長からも、サイエンス領域で新たな可能性を切り開ける、と好評価を得ている。我々はメディカル事業においてライフサイエンス分野でも事業拡大をめざし、先端医療に貢献する革新的な研究や質の高い製品を提案していく」と意気込みを語った。
 最後に、早川智広氏(同社ライフサイエンス事業部LCI事業室主任研究員)より、「今回の新製品は自社のイメージング技術を応用し、細胞の機能を評価する『細胞の動き解析アルゴリズムMotion Vector Prediction Method (MVP法)』が組み込まれたものだ。業界初となる細胞の動きを非染色・非侵襲で細胞挙動評価を行い、細胞の動きを動画から検出することにより動きの定量化と機能解析が今後の細胞研究に使える多彩な解析パラメータとして発揮される」と締めくくった。
 MVP法を取り入れた製品となる。従来、細胞の生体組織や動き方を観察する手法としては、特殊な培養容器や染色試薬を利用し、細胞に色付けし観察していた。色付けすることにより細胞そのものの状態を観察することは難しい。しかし本製品では、細胞の動きを非染色・非侵襲で定量評価し、高性能ビデオカメラで撮影することにより、細胞そのものの姿を映し出すことが可能である。結果として、培養細胞の環境を維持したまま高速かつ高解像度に解析することに成功した。これにより、染色の専門技術や特殊な器具が不要となり、研究者の負担を軽減し作業効率化が可能となる。今後の展開としては、再生医療の最前線での研究に用いられることを期待されている。また、本製品は「第73回日本癌学会学術総会」(9月25~27日・パシフィコ横浜)と「Safety Pharmacology Society」(10月19~22日・ワシントンDC・アメリカ)への出展を予定している。