第6回消化管先進画像診断研究会(Gastrointestinal Advanced Imaging Academy: GAIA)が3月15日、神戸国際会議場(兵庫県神戸市)で開催された。本会は医師および医療従事者を対象に、大腸画像診断の新しいモダリティとして普及しつつある大腸CT検査を中心に、消化管の先進画像診断を検証・普及啓蒙していくことを目的としている。第6回テーマは「実地医療に生かす大腸CT」。本会は200名以上の来場者がみられた。
当番世話人の松本啓志氏(川崎医科大学)の開会挨拶に始まり、第1部は野崎良一氏(大腸肛門病センター高野病院)と安田貴明氏(長崎県上五島病院)司会のもと、大腸CT検査に関する臨床研究4題が報告された。はじめに木島茂喜氏(自治医科大学)は、低容量PEGを用いた大腸3DCTでの患者の受容性の検討について報告。PEG-CM法を用いた大腸CTと通常前処置での内視鏡検査を比較し、直後と5週後の検査の受容性を患者にアンケート調査したところ、大腸CTの受容性は高い結果となったが、5週後では大腸CT・内視鏡共に検査自体よりも前処置の受容性がより低下したため「前処置軽減が二次スクリーニング大腸CTでは重要」と結んだ。馬嶋健一郎氏(亀田メディカルセンター)は大腸CTの仮想内視鏡と大腸展開像を比較読影し、両読影法の精度とトレーニング効果を検証。展開群よりフライスルー群の感度が高かったが「精度は両読影法ともにトレーニング経験により良好となる可能性がある」と述べた。大澤元保氏(川崎医科大学)からは、全大腸内視鏡検査困難例に対する大腸CT検査の有効性について発表。内視鏡が通過しなかった例で大腸CTを施行した病変単位の診断精度は感度76.8%、陽性反応的中度は91.7%という結果で「内視鏡不通過例に大腸CTで全大腸を評価することは有効な検査法になる可能性がある」とした。加藤貴司氏(北海道消化器病院)は大腸癌術前診断における大腸CTの有用性について発表。「当院の術前大腸CTの診断精度は従来の報告と同程度の正診率が得られた」として有用性の高さを示唆した。
第2部は平山眞章氏(KKR札幌医療センター斗南病院)司会のもと、西田 睦氏(北海道大学病院検査・輸血部/超音波センター)の教育講演「高分解能リアルタイム画像診断法‐消化管超音波」が行われた。超音波で観察可能な消化管疾患の臨床例を多数供覧しながら、最新の知見を紹介した。
第3部は「大腸CT検査ワークステーション(WS)を学ぶ」。本田徹郎氏(長崎みなとメディカルセンター市民病院)、藤原正則氏(亀田メディカルセンター幕張)の司会のもと、大腸CT読影に用いられるWSについて、エキスパートの医師・技師による症例の読影手順や操作のコツが解説された。
第4部は松田一夫氏(福井県健康管理協会 県民健康センター) による特別講演「大腸がん検診 現在そして未来―大腸がん死亡を減らすために―」。松田氏は大腸がん検診に関する多数の重要なデータを示し、大腸CTについては「大腸がん検診の精検、スクリーニングに期待が集まるが、被曝低減と前処置・読影の統一が必要だろう」との見解を示した。
第5部はパネルディスカッション「実地医療への大腸CT検査の導入」。笹井信也氏(岡山画像診断センター)、岩月建磨氏(松田病院)司会のもと、大腸CT検査を導入した7施設の導入経験報告と実状についての報告の後、各施設の実際について会場との活発な質疑応答が催された。博愛病院(鳥取県)については松本孝文氏から、倉敷成人病センター(岡山県)については診療放射線技師が大腸CT導入の中心となったケースとして木下琢実氏が報告。松下記念病院(大阪府)については小谷知也氏から、尼崎中央病院(兵庫県)については鎌田照哲氏から、久万高原町立病院(愛媛県)は高齢者に対する大腸CTの現状について堂本泰愼氏から、こやまクリニック(兵庫県)については田上修二氏から、済生会松阪総合病院消化器センター(三重県)については堀内友紀子氏から、それぞれ自施設における大腸CT検査の導入経験が報告された。
最後に、第7回当番世話人の歌野健一氏(福島県立医科大学会津医療センター)より閉会挨拶が行われ、盛況のうちに幕を閉じた。次回は2015年9月27日にキヤノンSタワーホール(東京都)で開催予定である。