一般社団法人 日本医療機器産業連合会(医機連)は2015年5月26日、飯田橋スクエアビル(東京都新宿区)にてメディアセミナーを開催した。今回のメディアセミナーは初めての試みであり、医機連の情報発信の場として重要なものに位置付けられている。
セミナーではまず菊地康昭氏(医機連専務理事)より医機連の概要について説明があり、重点施策として「政策提言力強化」「産業基盤強化」「国際化推進」の3点が挙げられ、平成26年度の活動実績について報告された。この中で、マレーシアや台湾、ブラジルなどでの海外事業展開の支援について触れ、行政と連携した外国薬事規制手続きの簡素化に向けた活動で一定の進展があったと昨年度を振り返った。
(医機連専務理事)
次に三澤 裕氏(産業政策会議議長)より、医療機器産業の成長戦略について説明があった。
始めに、医療機器の市場規模が国内の平成26年予測が約2.9兆円、世界では2018年に約40兆円と、それぞれの成長率が5~7%の見込みであることに触れ、世界的にも高齢化と人口増が進むことから、高齢化の最先行医療環境にある日本のモノづくり力が求められており、「医療機器産業は日本でこそ育成すべき」と展望を述べた。また、日本の医療と産業の基本課題としては「医療費の伸び抑制の中での医療の向上」と「産業成長と国際競争力強化」を指摘し、そのための行政への要望事項として「製品開発環境の整備・充実」「イノベーション評価制度の整備・拡充」「医療のIT化に向けた環境整備」「医療の国際展開推進」「医療機器備蓄と医療情報保管に向けた予算措置」について言及した。
まず、「製品開発環境の整備・充実」では、医薬品医療機器法における合理的な運用の推進として、一部変更申請不要範囲の拡大、QMS調査要領、要求資料および審査要求事項の国際的ハーモナイゼーションを示した。また、医療機器審査の更なる迅速化、先進の未承認医療機器の早期導入スキームの検討・整理に加え、PDMAの運営財源については運営費用の84 %が企業の審査相談手数料や拠出金に頼っていることから適切な水準の国費投入による財源見直しを訴えた。
続いて、「イノベーション評価制度の整備・拡充」では、保険償還制度における透明性や予見性の高さや、事業の継続性を考慮すべきとし、機能区分のさらなる細分化や医療材料機能区分特性制度の継続を挙げた。
さらに「医療のIT化に向けた環境整備」では、遠隔医療、在宅医療、医療情報の活用に向けたルール整備や規制緩和、インフラ等の環境整備とともに、急性期から予後、在宅、介護へのスムーズで有機的な連携を行う地域包括ケアシステムにおけるICTの重要性に言及した。
(産業政策会議議長)
「医療の国際展開推進」については2014年度に経済産業省のアウトバウンドプロジェクトとして合計33のプロジェクトが進んでいることを挙げ、中小企業製品の海外販路構築の支援など医療と教育の分野についてアカデミア、行政、産業のさらなる連携の必要性を訴えた。
「医療機器備蓄と医療情報保管に向けた予算措置」として東日本大震災時の教訓から、災害やパンデミックへの迅速な対応に向けた流行初期段階で必要な医療機器の備蓄や、ITインフラ・データベースの整備による医療情報の集積管理について述べた。
最後に中尾浩治氏(医機連会長)より総括として、団塊世代が後期高齢者に達する2025年問題など今後の医療の課題と、国内外の情勢分析が行われた。海外情勢では、台湾で行われている「個人へのマイナンバー、患者としての医療ID、医師へのID付与により一元的に医療情報が管理され、過去の診療情報がリアルタイムで参照されることで薬剤の重複投与など医療の無駄を削減している」事例が紹介された。
(医機連会長)
同氏は「日本は環境が整っており、ものづくりは得意。多くの部品メーカが頑張っている中で、完成品を作る総合力が求められている」とし、医療費抑制については「より少ない費用でより良い医療を行うための議論が必要」として、今後も医機連が行政への提言を積極的に行う姿勢を強調した。