第7回消化管先進画像診断研究会が、9月27日、キヤノンホールSタワーホール(東京都港区)で行われた。「大腸画像診断の新たな潮流 」をテーマに、遠隔画像診断、大腸3D-CT、ワークステーションの紹介等、大腸CTの現状と今後の見通しに対する理解が深まる研究会であった。
本稿では、第1部一般演題と第4部パネルディスカッションを中心に報告したい。
第1部一般演題
永田浩一氏(国立がん研究センター)と松本啓志氏(川崎医科大学)が司会を務めた一般演題では、佐々木崇洋氏(自治医科大学)、齊藤公平氏(栃木医療センター)、丸山 健氏(NTT東日本伊豆病院)、今井瑞香氏(癌研有明病院健診センター)、菅野朋史氏(福島県立医科大学会津医療センター)、鈴木雅裕氏(国立がんセンター中央病院)の6氏が登壇し、発表を行った。
佐々木氏の演題は「大腸3D-CTと内視鏡による大腸憩室症の比較‐大腸3D-CTをゴールドスタンダードとして‐」。大腸3D-CTおよび内視鏡における憩室の検出能についての検討結果として、大腸3D-CTが主目的とする大腸癌のスクリーニング検査のみならず、頻度の高い疾患である憩室疾患を高精度に拾い上げることができると述べた。
齊藤氏は「当院における大腸3D-CT導入とその検討」と題し、栃木医療センターで2014年11月から運用をしている大腸3D-CTの撮影および解析例を報告。腸管拡張の検討では良好な拡張が得られ、拡張不良部位の傾向は先行する論文と近似、今後さらなる症例集積を経て精度管理をしていく必要があるとした。
丸山氏の「低管電圧撮影による大腸CTの低線量化は有効か?」と題した講演では、低管電圧撮影時の画質について検討結果が報告された。高BMI症例においては逐次近似応用再構成でも補正できない程度の画質低下を認めたが、低管電圧撮影は少ない造影剤で良好なタギングを可能とする有用な被ばく低減技術であるとし、低管電流に比べて微調整が難しいため、臨床での応用には更なる検討を要するとしめくくった。
今井氏の演題「大腸3D-CTにおける新たな腸管前処置法の試み」では腸管洗浄剤を用いない方法での腸管前処置法に対する評価・検討結果が発表された。腸管洗浄剤を用いない前処置法は、前処置状態および受診者の受容性に優れており、大腸3D-CTの普及に貢献できるだろうと期待を込めた。
菅野氏による「腹腔鏡下大腸癌施術に求められる術前症例の上・下腸間膜動脈の血管走行分類」では、腹腔鏡下大腸癌術前に行った大腸造影CT検査において同時にCTアンギオを施行して得られた血管走行分類の結果が示され、解剖学的誤認による血管、周囲臓器への損傷を引き起こす危険性がある腹腔鏡下大腸癌手術には、大腸造影CT検査による血管走行分類が特に有用な情報と考えられるとした。
鈴木氏による演題「大腸CTにおけるポリープ計測精度に関する検討」では、消化管CT技術研究会と大腸解析ソフトメーカーとの共同研究によって精度を担保したポリープ計測ツールの開発に成功したことを受けて、ツールによる計測の精度について検討、5mm以上のポリープを対象とした場合、ツールにおける計測精度は、誤差率が10%程度となると発表した。
第4部パネルディスカッション
パネルディスカッションでは司会に本田徹郎氏(長崎みなとメディカルセンター市民病院)と加藤貴司氏(北海道消化器科病院)を迎え、会場も含めた全員参加型の形式で行われた。
ディスカッサーは岩月建磨氏(松田病院)、岩野晃明氏(徳島健生病院)、清水徳人氏(まつおかクリニック)、高林 健氏(北海道消化器科病院)、藤原正則氏(亀田メディカルセンター幕張)、安田貴明氏(長崎上五島病院)の6名。
今回は、大腸CTに関して実際に遭遇するシチュエーションを設定し、設定に対してパネリストが意見を延べ、それを臨床現場で参考にしてもらうことを目的としてディスカッションが行われた。
大腸CTの撮影時に、「炭酸ガスを入れても大腸が膨らまないという状況下で撮影担当の放射線技師にどのような助言をするか」という設定に対して、藤原氏は「肛門から抜けていないかをチェックする」、高林氏と岩野氏はバルーンの使い分けに言及し、「ダブルバルーンの使用を勧める」(高林氏)、「状況に応じて3種類のバルーンを使い分けている」(岩野氏)と、各院での対応状況や経験則から意見を出した。岩月氏は体位の変更、安田氏は設定圧を下げてみることを勧めると答え、各人各様の対応が示された。
「午後15時以降にしかCTの枠がない場合の前処置の内容やスケジュールをどうすればよいか」については、「PEG-C法を行う際に、PEG溶液の内服時間を早めることで対応する」という意見が高林氏と安田氏から出されたが、一方で岩月氏は「CT実施の時間が遅くなる場合には、患者の空腹感も相当なものになる、患者の負担を考慮し他の日程検討もする」とした。
「病院の放射線技師に「一次読影をやってみようかと思っています」と言われた場合の助言をどうするか」に対しては、岩野氏から「襞の上の読影が難しいので、大腸拡張をしっかりとやること」、藤原氏から「まずは出っ張っているところを見付けるところから始め、違和感を覚える箇所を増やしていく」と、実践的な内容が提示された。高林氏は、「実際にテキストに記載された症例20例について若手の放射線技師に読影を実施させてみたが、より多くの経験を積まなければ厳しいと感じた」と述べ、一次読影ができるようになるまでに必要となる経験値について、具体的な内容が示された。
今回のパネルディスカッションでは実際に現場で生じうる場合を想定した議論で、ディスカッサーの意見や会場との質疑応答は内容の充実したものであった。次回の内容にも期待したい。