GEヘルスケア・ジャパン(株)は、9月30日に赤坂パークビル(東京都港区)にて、第12回ヘルシーマジネーション・カレッジを行った。
次に、「乳癌診療ガイドライン」の改訂により主流であった従来のマンモグラフィ検診のあり方の大きな転換の到来と超音波検診の有用性の検証試験が進むなか、日本の乳がん検診の現状と課題について、戸崎光宏氏(乳がん画像診断ネットワーク理事長、さがらブレストヘルスケアグループ乳腺科部長)が解説した。
キーワードは「デンスブレスト」
昨今、乳がんの罹患率・死亡率が上昇している。そんな中、過剰診断やデンスブレストの問題により「乳癌診療ガイドライン2015」が改訂され、マンモグラフィ検診の推奨グレードがAからBに引き下げられた。デンスブレストとは、高濃度乳腺(高濃度乳房)のことを指し、脂肪の割合が低く、乳腺濃度の高い乳房であり、マンモグラフィでは、脂肪性の乳房より白く写るため同様に白く写る石灰化や腫瘤を検出しづらくなる。雪山の中で白うさぎを探すようなものだ。このデンスブレストだが、日本人女性の8割がそのような乳腺の状態にある。しかし、日本ではほとんど知られておらず、乳がんの手術をした人のなかにも自分がデンスブレストであるという事実を知らない人が多数存在する。
超音波検診の有用性、課題と対策
乳がんを写し出すマンモグラフィ検査の結果、陰性であると判断されたが、その後超音波検診を受けると陽性だったということがある。マンモグラフィのみの検診とマンモグラフィと超音波を併用した検診では、どちらが健診精度が高いのかという厚生労働省が立ち上げた比較試験「J-START」が現在進行中だ。併用検診では視触診が要らなくなる、情報量が増えるのでがんの検出率が上昇するなどの期待がある。一方でがんではない、所謂がんもどきなどの異常まで検出してしまうため精度管理が重要である。また、超音波を用いた検査は施行者依存性が非常に強く、質の高い検査を国内全体に普及させるのは難しい。そこで、①対象を「高濃度乳腺をもつ女性」などと限定する、②施行者依存性の少ない「乳腺自動超音波装置」への期待。この二つが対策として挙げられると戸崎氏は話す。
超音波以外の選択肢
近年、乳房トモシンセシス検査とMRIスクリーニング・MRIガイド下生検への期待が高まっていると同氏は語る。
乳房トモシンセシス検査は、圧迫された乳房をスキャンして複数の角度から画像を収集し、個々の画像を一連の高解像度断層像に再構成して表示する。従来のマンモグラフィと比較して病変と乳腺の重なりが少ない画像が得られるのが特長である。海外では、比較試験や前向き臨床試験など行われているが、デンスブレストの多い日本人のデータはまだ無い。科学的根拠の立証がなされていないことから、同ガイドラインでも推奨グレードはC1である。
MRIスクリーニングは、遺伝子変異をもつ女性、所謂ハイリスクな女性に対し非常に有効だと同氏は話す。米国では、ハイリスク群においてMRI検診を年1度推奨している。また、同ガイドライン2013では、遺伝子変異をもつ女性に対する乳房MRIスクリーニングは早期発見にほぼ有効としている。加えて、海外のガイドライン(ACR、EUSOBI)ではMRIガイド下生検は必須とされている。日本では、同生検を導入している施設は増えてきてはいるがまだまだ少ないのが現状である。しかし、動画などのコンテンツ制作により普及活動を推進していると同氏は日本の乳がん検診の課題と対策を語った。