日本放射線腫瘍学会(JASTRO)、プレスカンファレンスを開催

2015.10.22

 日本放射線腫瘍学会(以下、JASTRO)は、10月7日、マイナビルーム(東京都千代田区)で、JASTRO第28回学術大会の案内と粒子線治療を含む放射線治療の現状について、
プレスカンファレンスを開催した。 

西村恭昌氏
中野隆史氏
永田 靖氏
櫻井英幸氏
根本建二氏

 最初に、西村恭昌氏(JASTRO理事長)により、開会の挨拶としてカンファレンスのプログラムが提示された。
 中野隆史氏(同第28回学術大会長)は、第28回学術大会・市民公開講座のハイライトを紹介した。同大会は、平成27年11月19~21日にベイシア文化ホール、前橋商工会議所会館(群馬県前橋市)にて、開催される。同大会のテーマは、国際化への対応、地域社会への還元である。具体的には、海外から演者を積極的に招聘したり、JASTROと群馬大学、群馬県共催で、地域住民を対象とした講演会を実施する予定。演者として、尾身幸次氏(元財務大臣、科学技術政策担当大臣)や、高橋忠幸氏(宇宙航空研究開発機構JAXA)などが講演を行う。「歴史と自然の魅力に富んだ群馬を楽しみながら、多くの人に同大会に来てほしい」と中野氏は結んだ。
 次に、永田 靖氏(同がん放射線治療推進委員長)は、放射線治療の現状と課題について、「現在の日本は、放射線腫瘍医と診療放射線技師の人数が国際基準よりも少なく、放射線治療はスタッフの面でまだ不十分である」と、説明した。そのため、JASTROでは、学術的会合の開催及び学術研究の支援や、放射線治療についての普及と啓発活動、そして放射線治療の標準化に資する事業を行っている。過去には、若手の育成を目的として、医学生向け就職イベントでの放射線腫瘍学講座の紹介活動や、医学生、研修医のための放射線治療セミナーの開催をした。「がんの放射線治療は様々な医療従事者で行うチーム医療であり、学術面だけでなく多方面的に放射線治療の普及に努力している」と、同氏は語った。
 続いて、櫻井英幸氏(同粒子線治療ワーキンググループ委員長代理)が、粒子線治療の現状と課題について述べた。粒子線治療は、一般的に用いられるX線治療と比べ、病巣に集中し、かつ強い作用があるため効果と安全性の向上が期待され、特に重粒子線治療においては日本が世界の中でも研究が進み、リードしているようだ。しかし、先進国で粒子線治療の保険収載が進む中で、日本ではまだ実現がされていない。約1年半前の前回保険収載改訂時には、粒子線治療は先進医療としての評価に耐えうるデータの蓄積、解析が行われておらず、JASTROは適切に評価できる体制を構築すべきだと指摘を受けた。そこで、粒子線治療が有効と考えられる疾患に対する多施設共同後ろ向き調査研究や、粒子線治療と既存治療の成績の適切な比較を外部評価も含め行い、客観的な視点でのデータの蓄積を進めている。研究の結果、小児腫瘍では二次がん発症率がX線治療に比べ約1/3に抑えられること、頭蓋底腫瘍に対しては局所制御率が高く、生存率が上がること、骨軟部肉腫では切除非対応の肉腫に対しても切除可能な症例と同じくらいの治癒が可能となるなど、様々な結果が得られていることが報告された。さらに、研究が進む中で、強度変調粒子線治療(IMPT)という、粒子線治療の技術的進歩もあり、「今まで、がんに対して塊で当てていたものを細かい粒で当てることでむだのない照射が可能となり、がんに対して、より有効な治療ができる。すでに利用が始まっており、このような技術が広まることで粒子線治療の効果、安全性が高まる」と同氏は述べた。
 最後に、閉会の挨拶として根本建二氏(同専務理事)が、「JASTROとして、公正な判断のもと患者に対して適正な還元をしていきたい」とし、「日本ではがん患者の放射線治療受診率が3割程度と少ないため、より多くの人に放射線治療を受けてもらえるようにしたい」と結んだ。

会場風景