開棟式では黒岩祐治氏(神奈川県知事)、土屋了介氏(神奈川県立病院機構理事長)より式辞があり、続いて土井りゅうすけ氏(神奈川県議会議長)が挨拶をした。「今まで様々な式典に参加させて頂いているが、こんなに県議会員が集まっているのは初めて見ました」と同氏が述べるほど、会場には議員をはじめ神奈川県立病院機構の方々、国立がん研究センター東病院の院長等、錚々たる面々が一堂に会した。来賓を代表して、城 博俊氏(横浜市医療局長)より「がんに苦しむ人に普遍的な治療になるように後援していきたい」と祝辞が述べられた。
さらに日本で初めてとなる特徴として、治療室にCTが設置されている(Rail-on in-room CT)。設置されているものはAquilion16列CT(東芝メディカルシステムズ)。今まで治療計画室でしかCTを使用することができなかったが、治療室に設置することで、治療の直前、直後にも照射位置をCTスキャンで確認することが可能となった。これは、より正確な位置合わせが必要となる重粒子線治療のニーズに応えた設計である。当面は、治療室内での位置決め画像照合には従来通りの2方向X線画像を用い、照射後CT画像を撮影し、オフラインでの線量分布に基づく検証に用いる。将来的には照射直前にCTスキャンをし、線量分布に基づく位置照合・治療計画の修正をその場で行い照射することを目指している。国内で初めてとなり前例がないので、この特徴の生かし方は使い慣れないと難しいところもあると思われるがよりよいがん治療の提供に役立つことであろう。
位置決め室(治療計画用CT撮影室)にもAquilion16列CT(東芝メディカルシステムズ)が設置されている。開口径は90cmのラージボアとなり閉塞感が少ない。4DCTも撮影でき、治療計画に役立つ。また、室内にはコントロールパネルがあり、タッチパネルでの操作が可能。室内の照明や寝台の動作の操作も、画面をタッチすることでできるので使い勝手がよく術者にもやさしい。リモコンの小さいボタンでの操作ではなく、大きい画面でタッチすることで機器の操作ができることには驚いた。撮影中心は、CTと2方向X線(治療室ではアイソセンタ)で並進移動するため一致・再現でき、全治療室および位置決め室で幾何学的配置は同じであるので、等価な操作を実現としている。
加速器室にはシンクロトロンがあり、想像よりも小さい印象を受けた。さすが国内で3台しかない小型シンクロトロンである。
治療開始は今月(2015年12月)予定となっているが薬事承認が下り次第、開始となる。その後臨床試験を10例集め、申請をして認可されれば先進医療と認められる。同施設ではペンシルビームスキャニング法が用いられるが、従来の拡大ビーム照射法と同様な呼吸同期照射を実現する、呼吸位相同期リペインティング法(Phase Controlled Repainting、PCR)を導入予定。現在、放射線医学総合研究所で開発中であるという。従来の呼吸同期だと体外の金属マーカーを指標として照射を行っているが、PCRは体内に指標をもち、呼吸同期で照射する。