瀧口登志夫氏
津島 総氏
粟井和夫氏
小川正人氏
遠藤和之氏
城戸康男氏
陣崎雅弘氏
宗内 淳氏
宇都宮大輔氏
会場風景
2016年3月5日(土)、品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)にて、TOSHIBA FIRST Symposium 2016が開催された。同社の最新CT機種、Aquilion ONE™ / ViSION FIRST Editionに搭載された逐次近似再構成法FIRSTについて、様々な観点からの検討が発表された。
はじめに
はじめに、瀧口登志夫氏(東芝メディカルシステムズ(株)代表取締役社長)より開会の挨拶があった。同社が医療機器事業100年を迎えるなか、1975年以来40年を迎えるCT事業には変わらぬ注力を誓い、今後も「Made for Life」をスローガンに、技術面、サポート面等で医療現場に貢献していきたい旨が述べられた。
また、津島 総氏(同社CT営業部)より、逐次近似再構成法FIRSTの概要が述べられ、現在既存の6種の部位パラメータに加え、頭部パラメータが開発中であることが発表された。
FIRSTと従来のFBP、AIDR 3Dとの比較検討
同会は、粟井和夫氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門放射線診断学)の座長のもと、小川正人氏(産業医科大学病院放射線部)の発表から始まった。
小川氏は、FIRSTと従来のFBP、AIDR 3Dとの物理評価をテーマとし、円形と楕円形のファントムを用いて、CT値・ノイズ・空間分解能の3つの特性について比較検討を行った。
・CT値:120~135kVでは見られなかった有意差が、ベース、水、アクリル等では低電圧領域においてFIRSTの方が低い値を示した。
・ノイズ:線量との相関があるものの、FBPに比べて若干の揺らぎが見られた。
・空間分解能:過度の高周波強調を付したFC30(FBP)を除き、全般的にFIRSTの方が優位であった。
・どの方式でも被写体形状によるCT値の変化、楕円形でのMTF劣化が見られた。
以上の結果を踏まえ、小川氏は「ノイズが気になる回もあったため、今後更なるパラメータの最適化が必要と思われる」としたものの、「FBPに比べて空間分解能の大幅な向上とノイズ低減によるSNの向上、被ばく線量の低減が可能であることが明確になった」と結んだ。
ワークフローからみたFIRST活用法
次いで、遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院放射線技術科)より、高分解能・ノイズ特性改善が目覚ましい一方、再構成時間が従来よりも長いFIRSTについて、どのように現場で活用していくかを自施設を例に紹介された。結果として、「1mm/30スライス程度の画像であれば、同院の検査ワークフロー上での5分の時間を使ってFIRSTを有効活用できる」とし、「今後再構成時間が短縮されれば、下肢CTAなどへの利用も積極的に考えたい」と期待を寄せた。最後に、FIRSTには部位と強度の2種のパラメータがあるため、設定を最適化するには多くの検討が今後も必要になると付け加えた。
アンダーシュートの軽減
ストリークアーチファクトの抑制
城戸康男氏(佐世保市立総合病院)からは整形領域におけるさまざまな症例が紹介され、FIRSTのアンダーシュートの軽減、ストリークアーチファクトの抑制が高く評価された。整形領域の他では、「薄くなった腸管の描出がよく、読影の一助になる」とした。また「FIRSTは脂肪髄内のわずかな吸収値の上昇も描出できるため、従来CTでは困難だった仙骨脆弱性骨折などの指摘が可能になり、MRI検査の要不要の決断が早くなるのではないか」との展望を挙げた。
なお、同院は東芝社のAquillionシリーズを2台所有しており、「旧型からViSIONへと東芝プロトコル通信でデータを転送することで2台分の画像をFIRST再構成ユニットに送るシステムを採用している」と活用法についても発表された。
小児心疾患でFIRSTを活かす
後半は陣崎雅弘氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室)が座長にかわり、さらに3名の講演があった。
宗内 淳氏(JCHO九州病院)は小児科医としての立場からFIRSTを評価した。「心拍が早く、構造が複雑で小さい小児の心臓を撮影するにはADCTが非常に有用である」としたうえで、FIRSTを使えば、「冠動脈や主要体肺動脈側副血管など細くわかりづらい血管の描出が可能になる」と言及。心肺に関する総合的な情報も得やすく、また低ひばくであるため複数回の手術計画が必要な患者に対しても安全性が高いと述べた。今後はこれらの画像を利用した4DCTへの挑戦、肺血管床定量評価への応用による機能情報の取得も視野に入れているという。
プラークやステントの描出能、遅延造影
宇都宮大輔氏(熊本大学大学院)は、冠動脈CTAを主として、プラークやステントの描出に対してFIRSTが与える影響を検討した。結果として、FIRSTはFBP、AIDR 3Dに比べ吸収値、境界の描出がわかりやすく、ステントにおいてはメッシュ地まで子細に見えるほか、ステントのアーチファクトによる内腔のHU上昇も抑えられていた。また、心筋の評価にも優れ、低ひばくでの遅延造影が可能であるとも述べた。
全身領域におけるFIRSTと今後の課題
最後に、粟井和夫氏(広島大学大学院)より、全身領域におけるFIRSTver.2の現在の性能が披露され、「FIRSTを使えば低線量健診の画質が精検画像に近づくのではないか」「超低線量健診が可能になるのではないか」「低電圧による肝PurfusionCTへの応用で血流解析が容易になるのではないか」等いくつかの提案を述べた。また同氏は、FIRSTは非線形画像であるため、従来の線形画像を前提としたNoise、SNR、CNR、NPS、MFT等のみでは真価を測りきれず、今後ユーザもFIRSTを使いこなすためには、総合的な評価が必要になってくると伝えた。
また座長を務めた陣崎氏より「総合的にFIRSTはとてもいいシステムであり、今後は再構成時間の短縮、旧機種への導入方法、非線形画像を意識したエビデンスの蓄積が課題になるのではないか」と総論が述べられ、会は盛況のうちに幕を閉じた。
はじめに
はじめに、瀧口登志夫氏(東芝メディカルシステムズ(株)代表取締役社長)より開会の挨拶があった。同社が医療機器事業100年を迎えるなか、1975年以来40年を迎えるCT事業には変わらぬ注力を誓い、今後も「Made for Life」をスローガンに、技術面、サポート面等で医療現場に貢献していきたい旨が述べられた。
また、津島 総氏(同社CT営業部)より、逐次近似再構成法FIRSTの概要が述べられ、現在既存の6種の部位パラメータに加え、頭部パラメータが開発中であることが発表された。
FIRSTと従来のFBP、AIDR 3Dとの比較検討
同会は、粟井和夫氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門放射線診断学)の座長のもと、小川正人氏(産業医科大学病院放射線部)の発表から始まった。
小川氏は、FIRSTと従来のFBP、AIDR 3Dとの物理評価をテーマとし、円形と楕円形のファントムを用いて、CT値・ノイズ・空間分解能の3つの特性について比較検討を行った。
・CT値:120~135kVでは見られなかった有意差が、ベース、水、アクリル等では低電圧領域においてFIRSTの方が低い値を示した。
・ノイズ:線量との相関があるものの、FBPに比べて若干の揺らぎが見られた。
・空間分解能:過度の高周波強調を付したFC30(FBP)を除き、全般的にFIRSTの方が優位であった。
・どの方式でも被写体形状によるCT値の変化、楕円形でのMTF劣化が見られた。
以上の結果を踏まえ、小川氏は「ノイズが気になる回もあったため、今後更なるパラメータの最適化が必要と思われる」としたものの、「FBPに比べて空間分解能の大幅な向上とノイズ低減によるSNの向上、被ばく線量の低減が可能であることが明確になった」と結んだ。
ワークフローからみたFIRST活用法
次いで、遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院放射線技術科)より、高分解能・ノイズ特性改善が目覚ましい一方、再構成時間が従来よりも長いFIRSTについて、どのように現場で活用していくかを自施設を例に紹介された。結果として、「1mm/30スライス程度の画像であれば、同院の検査ワークフロー上での5分の時間を使ってFIRSTを有効活用できる」とし、「今後再構成時間が短縮されれば、下肢CTAなどへの利用も積極的に考えたい」と期待を寄せた。最後に、FIRSTには部位と強度の2種のパラメータがあるため、設定を最適化するには多くの検討が今後も必要になると付け加えた。
アンダーシュートの軽減
ストリークアーチファクトの抑制
城戸康男氏(佐世保市立総合病院)からは整形領域におけるさまざまな症例が紹介され、FIRSTのアンダーシュートの軽減、ストリークアーチファクトの抑制が高く評価された。整形領域の他では、「薄くなった腸管の描出がよく、読影の一助になる」とした。また「FIRSTは脂肪髄内のわずかな吸収値の上昇も描出できるため、従来CTでは困難だった仙骨脆弱性骨折などの指摘が可能になり、MRI検査の要不要の決断が早くなるのではないか」との展望を挙げた。
なお、同院は東芝社のAquillionシリーズを2台所有しており、「旧型からViSIONへと東芝プロトコル通信でデータを転送することで2台分の画像をFIRST再構成ユニットに送るシステムを採用している」と活用法についても発表された。
小児心疾患でFIRSTを活かす
後半は陣崎雅弘氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室)が座長にかわり、さらに3名の講演があった。
宗内 淳氏(JCHO九州病院)は小児科医としての立場からFIRSTを評価した。「心拍が早く、構造が複雑で小さい小児の心臓を撮影するにはADCTが非常に有用である」としたうえで、FIRSTを使えば、「冠動脈や主要体肺動脈側副血管など細くわかりづらい血管の描出が可能になる」と言及。心肺に関する総合的な情報も得やすく、また低ひばくであるため複数回の手術計画が必要な患者に対しても安全性が高いと述べた。今後はこれらの画像を利用した4DCTへの挑戦、肺血管床定量評価への応用による機能情報の取得も視野に入れているという。
プラークやステントの描出能、遅延造影
宇都宮大輔氏(熊本大学大学院)は、冠動脈CTAを主として、プラークやステントの描出に対してFIRSTが与える影響を検討した。結果として、FIRSTはFBP、AIDR 3Dに比べ吸収値、境界の描出がわかりやすく、ステントにおいてはメッシュ地まで子細に見えるほか、ステントのアーチファクトによる内腔のHU上昇も抑えられていた。また、心筋の評価にも優れ、低ひばくでの遅延造影が可能であるとも述べた。
全身領域におけるFIRSTと今後の課題
最後に、粟井和夫氏(広島大学大学院)より、全身領域におけるFIRSTver.2の現在の性能が披露され、「FIRSTを使えば低線量健診の画質が精検画像に近づくのではないか」「超低線量健診が可能になるのではないか」「低電圧による肝PurfusionCTへの応用で血流解析が容易になるのではないか」等いくつかの提案を述べた。また同氏は、FIRSTは非線形画像であるため、従来の線形画像を前提としたNoise、SNR、CNR、NPS、MFT等のみでは真価を測りきれず、今後ユーザもFIRSTを使いこなすためには、総合的な評価が必要になってくると伝えた。
また座長を務めた陣崎氏より「総合的にFIRSTはとてもいいシステムであり、今後は再構成時間の短縮、旧機種への導入方法、非線形画像を意識したエビデンスの蓄積が課題になるのではないか」と総論が述べられ、会は盛況のうちに幕を閉じた。