GEヘルスケア・ジャパン、第13回ヘルシーマジネーション・カレッジを開催 “やさしい小児医療のあり方を考える”シリーズ ~子どもにやさしいMRI検査とは? 小児画像診断の安全性~
2016.03.16
川上 潤氏
相田典子氏
渡邉嘉之氏
会場風景
GEヘルスケア・ジャパン㈱は、2016年3月11日、日本GE赤坂パークビル(東京都港区)にて、第13回ヘルシーマジネーション・カレッジを開催した。
はじめに、川上 潤氏[GEヘルスケア・ジャパン(株)代表取締役兼CEO]より、開会の挨拶があった。同社が2013年にリリースしたSilent Scanが既に国内で89台(2016.3.8現在)のMRIで稼働していることを発表。今回の小児の撮像に対するSilent Scanの治療法、有用性を皮切りに、今後は具体的な臨床的効果を検証しながら、イノベーションを拡げていきたいと語った。
子どもにやさしい画像診断を目指して:小児画像診断を取り巻く状況
最初の講演は、相田典子氏(神奈川県立こども医療センター放射線科部長)より「子どもにやさしい画像診断を目指して:小児画像診断を取り巻く状況」。現在、小児画像診断に精通している医師は全国で100名にも満たないという同氏。「体格も小さく静止も困難な小児は成人の画像診断と同じ考えでは務まらない」とし、「小児は、スキャン中の安静を保つために鎮静剤が使用されることも少なくない。またMRI騒音は鎮静した患児の覚醒や体動の原因にもなる。両リスクを避けるため単純に速撮像可能なCTを検査法として選択しがちだが、小児の被ばく低減にはCTでの無駄な検査を減らすことが第一。必要な検査はきちんとした条件で施行し、できるだけMRI・超音波検査を活用すべき」と強調した。
また、同氏は2013年、日本小児科学会、日本小児麻酔学会、日本小児放射線学会が発表した「MRI検査時の申請に関する共同宣言」作成に参加し、日本の子どもが最適な画像診断を受けられない日本医療体制の問題を指摘している。「小児の画像診断はやり直しがきかないからこそ、きちんとした情報が得られる体動のない撮像が必要。そのため、鎮静を保てる静音MRIなど質の高い画像診断を享受できるよう努めたい。また被ばく低減を心掛け高い専門性を有する小児画像診断の専門医の増加が必要不可欠だ」と述べた。
小児MRにおけるSilent Scanの有用性と可能性
次の講演は、渡邉嘉之氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室准教授)より「小児MRにおけるSilent Scanの有用性と可能性」。まず、同氏はMRIの騒音原理とどうやってその騒音を無音化していくかについて言及した。「MRIは大きな電磁石で、傾斜磁場コイルに多方向から電流を流す時に、様々な周波数の大きな音が発生すると言われており、磁場の反転で通常90~108dBの撮像音が出ている。Silent Scan は1つ1つの磁場の反転を小さくすることで、電流の変化が小さくなり、そこに発生する振動を抑えて静音化している」と説明した。次に実際にガントリーから3mの地点で測定したT1強調像撮影時のFSEとSilent Scan 、T2強調像撮影時のFSEとSilent Scanの騒音差の実録を提示した。T2強調像では通常85.2dBのところ、59.6dB程度に静音化されている。Silent Scanでは明らかな静音が確認され環境音(環境音標準53.0dB)とほぼ同デシベルであった。
また、同氏は「Sirent Scanはおよそ5分で1mmの薄くスライスした画像を200枚ほど撮像する。矢状断のデータから横断像や冠状断像を同じ画質で作り、必要な場合は緻密な3D画像の作成も可能。今までのモダリティは高性能、高機能を追求し開発されてきたが、Sirent Scanは静音機能をプラスし患者にやさしい検査にパラダイムシフトがなされた」と強調。さらに「MRI検査では小児だけでなく大人も安静が保てない方もおり、確実に診断できる撮像のためには鎮静が必要である。鎮静をかけても、通常のMRIでは音に無意識下で反応し動いてしまう状況もあるが、Sirent Scanは導入時に音がしないため、少量の鎮静で開始でき、途中覚醒による鎮静追加も減少するため、音に敏感な小児の検査への有用性が期待される」と評した。
最後に同氏は「10年後にはSilent Scanが小児だけでなく全ての人にやさしい検査の標準となり、現在は頭部検査が中心だが、腹部や骨南部の検査にも広がり、より多くの部位に撮像、装置が普及していくであろう。またGE社を皮切りに他社メーカーが追随し、全ての装置に静音化の技術の開発を望みたい」と結んだ。
はじめに、川上 潤氏[GEヘルスケア・ジャパン(株)代表取締役兼CEO]より、開会の挨拶があった。同社が2013年にリリースしたSilent Scanが既に国内で89台(2016.3.8現在)のMRIで稼働していることを発表。今回の小児の撮像に対するSilent Scanの治療法、有用性を皮切りに、今後は具体的な臨床的効果を検証しながら、イノベーションを拡げていきたいと語った。
子どもにやさしい画像診断を目指して:小児画像診断を取り巻く状況
最初の講演は、相田典子氏(神奈川県立こども医療センター放射線科部長)より「子どもにやさしい画像診断を目指して:小児画像診断を取り巻く状況」。現在、小児画像診断に精通している医師は全国で100名にも満たないという同氏。「体格も小さく静止も困難な小児は成人の画像診断と同じ考えでは務まらない」とし、「小児は、スキャン中の安静を保つために鎮静剤が使用されることも少なくない。またMRI騒音は鎮静した患児の覚醒や体動の原因にもなる。両リスクを避けるため単純に速撮像可能なCTを検査法として選択しがちだが、小児の被ばく低減にはCTでの無駄な検査を減らすことが第一。必要な検査はきちんとした条件で施行し、できるだけMRI・超音波検査を活用すべき」と強調した。
また、同氏は2013年、日本小児科学会、日本小児麻酔学会、日本小児放射線学会が発表した「MRI検査時の申請に関する共同宣言」作成に参加し、日本の子どもが最適な画像診断を受けられない日本医療体制の問題を指摘している。「小児の画像診断はやり直しがきかないからこそ、きちんとした情報が得られる体動のない撮像が必要。そのため、鎮静を保てる静音MRIなど質の高い画像診断を享受できるよう努めたい。また被ばく低減を心掛け高い専門性を有する小児画像診断の専門医の増加が必要不可欠だ」と述べた。
小児MRにおけるSilent Scanの有用性と可能性
次の講演は、渡邉嘉之氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室准教授)より「小児MRにおけるSilent Scanの有用性と可能性」。まず、同氏はMRIの騒音原理とどうやってその騒音を無音化していくかについて言及した。「MRIは大きな電磁石で、傾斜磁場コイルに多方向から電流を流す時に、様々な周波数の大きな音が発生すると言われており、磁場の反転で通常90~108dBの撮像音が出ている。Silent Scan は1つ1つの磁場の反転を小さくすることで、電流の変化が小さくなり、そこに発生する振動を抑えて静音化している」と説明した。次に実際にガントリーから3mの地点で測定したT1強調像撮影時のFSEとSilent Scan 、T2強調像撮影時のFSEとSilent Scanの騒音差の実録を提示した。T2強調像では通常85.2dBのところ、59.6dB程度に静音化されている。Silent Scanでは明らかな静音が確認され環境音(環境音標準53.0dB)とほぼ同デシベルであった。
また、同氏は「Sirent Scanはおよそ5分で1mmの薄くスライスした画像を200枚ほど撮像する。矢状断のデータから横断像や冠状断像を同じ画質で作り、必要な場合は緻密な3D画像の作成も可能。今までのモダリティは高性能、高機能を追求し開発されてきたが、Sirent Scanは静音機能をプラスし患者にやさしい検査にパラダイムシフトがなされた」と強調。さらに「MRI検査では小児だけでなく大人も安静が保てない方もおり、確実に診断できる撮像のためには鎮静が必要である。鎮静をかけても、通常のMRIでは音に無意識下で反応し動いてしまう状況もあるが、Sirent Scanは導入時に音がしないため、少量の鎮静で開始でき、途中覚醒による鎮静追加も減少するため、音に敏感な小児の検査への有用性が期待される」と評した。
最後に同氏は「10年後にはSilent Scanが小児だけでなく全ての人にやさしい検査の標準となり、現在は頭部検査が中心だが、腹部や骨南部の検査にも広がり、より多くの部位に撮像、装置が普及していくであろう。またGE社を皮切りに他社メーカーが追随し、全ての装置に静音化の技術の開発を望みたい」と結んだ。