はじめに、津坂昌利氏(名古屋大学)より「医用画像表示用モニタの特徴と品質管理の実態」について講義が行われた。2014年12月に実施されたモニタ診断と品質管理に関する実態調査によると乳房撮影を除き、85%以上の施設でモニタ診断が行われており、モニタ診断の普及率は高い。
しかし、液晶モニタのキャリブレーションが十分でなければ同じ画像を表示しても異なる階調で表示されてしまうこともあり、ヒヤリハットの原因になる恐れもある。アクシデントの予防のためにもモニタの品質管理は重要であるといえ、同氏は液晶モニタの基礎から品質管理について解説した。モニタの表示方式にはTN型(ねじれ配列型)、VA型、IPS型があり、最も医療用モニタに用いられているIPS型は視野角特性が優れている。
また、モダリティによって適切な表示画素数を有するモニタを選ぶ必要があり、特にマンモグラフィの場合は画素が細かいため、モニタの解像度がオリジナル画像の解像度より低く縮小補完して全画面表示をすると情報量が減少するため注意が必要である。モニタの劣化によっても表示画像が異なって見える場合もあるため、モニタを長持ちさせるには最大輝度で使用せず推奨輝度に設定をし、使用しないときにはバックライトを消すようにするとよい。モニタの階調特性について、モニタ品質規格ではGSDFを基本特性としており、IHE(Integrating Healthcare Enterprise)のプロファイルCPI(Consistent Presentation of Images)でも採用されている。GSDFをベースにすることでモニタがイメージャの出力特性の違いによらずほぼ同等の階調特性で画像を表示・出力できるが、γ2.2特性よりコントラスが低くやや暗い階調となるため、注意も必要である。
昨年発表された「デジタル画像の取り扱いに関するガイドライン3.0版」での主たる更新項目は「CRTモニタ」の削除、「液晶モニタ」に関する記述の補足、「胸部エックス線画像診断用モニタ」の追加。ノートパソコンやタブレット端末の使用については、画像表示の一貫性や情報の安全性を担保するために画像参照用や緊急時に限定して使用されるべきであり、診療放射線技師が医師にこのような点もアドバイスなどができるとよいと同氏は述べた。
モニタ実機によるヒヤリハット体験では、EIZO(株)、NECディスプレイソリューションズ(株)、キヤノンライフケアソリューションズ(株)、(株)JVCケンウッド、(株)東陽テクニカ、バルコ(株)の6社協力のもと、デモを体感。部屋の明るさなどの読影環境により画像の見え方が変わることなどを実際に見て実感することで学んだ。
その後、モニタ品質管理に関するガイドライン(JESRA X-0093)の紹介と、モニタ品質管理のデモストレーションが行われ、津坂氏より「本セミナーは各社のモニタを実際に見ることができる点がいいところです。講義や実習を通して学んだことを現場に持ち帰って反映できるようにしてください」と閉講の挨拶があった。