まず多田荘一郎氏(同社代表取締役社長兼CEO)が挨拶をした。「今後は超高齢化社会が進み、製品だけでなくサービスも大事になる。テクノロジーもデジタル化で色々なものを連携し、人々を豊かにして、最終的には患者様に貢献したい。今回の「Vscan Extend」は人・地域・医療を繋ぐだけに進化したものといえるだろう」。
続いて清水俊博氏(同社超音波本部プライマリケア部部長)による製品概要説明が行われた。今回発表された「Vscan Extend」は特にプライマリ・ケアにフォーカスし、使用者がポケットに入れて持ち運びすばやく使用できるよう重量0.5kg以下、5インチのタッチパネル式ディスプレイと軽量で、使用者がひとりで操作を行いながらカラー・モノクロの切替など片手で画面を操作することができる。また、同品から保存したデータをWi-Fiを通して直接DICOMやCloud上にあげられるなどのデジタル・IT連携における効率化が図られた。
在宅・訪問診療におけるポータブル
医療機器とICTの活用
佐々木 淳氏(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長)が「在宅・訪問診療におけるポータブル医療機器とICTの活用」について講演を行った。今後わが国が高齢化社会を迎え、患者の大部分が高齢者になり、外来での通院が困難な患者が治療を継続できるようにすること、病院死が77.3%と先進国の中でもっとも高い数値であることへの対策として、在宅医療の充実の重要性に触れた。また、プライマリ・ケアの2つの課題として、通院困難な高齢者への対応と自宅・地域での看取りを増加させることを挙げ、増加する高齢者の在宅医療の中でポータブル超音波診断装置を使用することで、症状が出にくい・症状が非典型的・患者が症状を訴えない(認知症など意思の疎通が図りにくい場合も含む)で発見が遅れ、重篤化しやすい高齢者の診断を、合併症・副作用がなく現場で迅速に行えるため、早期診断に寄与すると述べた。またCloud等を通して画像を送り超音波専門医に遠隔診断を仰げることから、万一、在宅治療の継続が困難な場合でも事前に適切な施設を選んで搬送することができると述べた。
産科診療における超音波機器の役割
次に、松岡 隆氏(昭和大学医学部産婦人科学講座准教授)により「産科診療における超音波機器の役割」について以下のように述べた。同氏は「エコー=聴診器」と掲げ、産科診療(周産期)において超音波診断装置は、母体・胎児ともの診察に必要不可欠な医療機器である旨を示しつつ、母体における合併症の有無や胎児の数や性別など多くの情報を手に入れることができるようになるなどより高解像度で深達度の良い画像が得られるようになった反面、特に胎児については倫理的問題をはらむことがあるため、運用には何かしらのルールが必要であるとした。さらに産科診療において医師と助産婦の協働が重要である中、携帯エコーはすぐに使用できてトリアージの精度をあげることができると述べた。また、帝王切開前の逆子が直っているかの判断などの手術直前の最終確認を患者様にも見せながら最終確認が行えること、東日本大震災の際には巡回検診で使用し、その場で患者さんにも胎児を確認してもらうことができた」と述べた。
プライマリ・ケアを専門的診療へ
渡辺弘之氏(東京ベイ・浦安市川医療センターハートセンター長)は、「プライマリ・ケアを専門的診療へ」と題して、患者が高齢化・高リスク化している中における弁膜症の診断等について語った。
「我々の心エコー室では70歳以上の患者が全体の50%以上を占めており、ここ4年間で増加している。弁膜病治療の母集団は高齢化していること、これにより活動性が下がり症状が隠されてしまう、症状があってもすべて加齢によるものと思い込むなど弁膜症に気付かないことが増えるという課題があり、改善のために聴診器と心エコーを活かし、早期診断でリスクを減らすげきだ。実際に「Vscan Extend」は大動脈弁狭窄で心停止し、心臓マッサージで息を吹き返した症例において活躍した」。と述べた。
講演終了後は、トークセッションや質疑応答が行われ、閉会した。閉会後は、渡辺弘之氏が実際に「Vscan Extend」を使用した診察の様子をデモンストレーションした。