キヤノンメディカルシステムズ、画論25th The Best Imageを開催(Part1)

2018.01.29
立崎 寿氏
 キヤノンメディカルシステムズは2018年1月27日(土)、キヤノン本社(東京都大田区)にて画論25th The Best Imageを開催した。画像診断技術の発展はもとより、術者の撮影・処理技術における創意工夫によってうまれた「最良のイメージ」を選定し表彰することで、よりよい医療への貢献を目的としており、1993年に始まった同イベントは今年で25回目を迎える。会場ではモダリティ各のディスカッションが行われ、数多くの応募の中から、同社のモダリティによって撮影された質の高い臨床画像が発表された。また、併設された特別講演において同社の将来に向けた以下の取り組みが紹介された。

CT開発の変遷から現在の技術

 立崎 寿氏(キヤノンメディカルシステムズ 研究開発センター長)は、同社のこれまでの画像技術の取り組みについて、CT開発を例に25年の歴史を振り返った。1991年のヘリカルCTの開発に始まり、1993年には世界初となるリアルタイムCTを開発し、診断応用の幅が広がった。その後マルチスライスCTの発展に伴い、スキャン時間の短縮や被ばく低減、画質向上のためのCT画像再構成技術が飛躍的に進んだ。
 現在、低被ばく化技術であるAIDR 3D搭載CTの国内据付実績は、4,307台となっている。2017年に発表した超高精細CTでは従来の2倍の空間分解能を実現し、それによって得られる高空間分解能画像では冠動脈内腔診断能などの向上も期待できる。また、320列ADCTによって四次元的な動態観察が可能となり、機能画像においては分子標的治療薬の治療効果判定への有用性も見通される。

超音波―より微細な検出とスムーズな描出―

 超音波では、SMIにより従来のドプラでは捉えることができなかった微細な血流を検出でき、24MHzプローブと併用することで更に微小な循環血流の評価が行える。また、スマートフュージョンによりCTやMRIなど他モダリティ画像をリファレンスに超音波診断が可能となり、スムーズな描出を実現。3Dトラッキングデータから得られる4Dの動態画像は、同心拍の心室と心房の動きを同時に評価するだけでなく、収縮タイミングの違いや容量変化の可視化により客観的な情報を得られ、非常に有用である。
 現在はShare Wave Dispersion Imagingといった、同じ伝播速度で粘性の異なる二種類を結合したファントムの超音波画像への研究・開発を進めている。

MRI―Deep Leaningを用いた再構成技術―

 MRIでは、クラス最高レベルの傾斜磁場性能を持ったGalan 3T ZGOの開発により、骨整形領域においても高精細かつ明瞭な描出を実現。さらにMulti-Bandという高速撮像手法を併用することで、短時間で高分解能画像を収集できる。また、実撮像で得られた情報から、モーフォロジカルマッチングの技術を活用しマップ画像を作成することで、トレーニングスキャンレスを可能とした。
 今後は、Deep Leaningを用い、画像内のノイズを分離させるという新しい再構成技術によりS/Nの向上と収集時間の大幅な短縮を両立させる。

X線―低被ばくと造影剤低減の両立に向けて―

 X線では、Dose Tracking Systemにより患者の局所の入射皮膚線量をシステム内の仮想患者モデルに精算し、三次元的なカラーマップとしてリアルタイム表示する。また血流到達時間をカラーコードに変換し動画表示することで、硬膜動静脈瘻の治療に必要なShunt Pointを明瞭かつ直感的に理解することができる。
 今後は、脳血管内治療領域において、治療デバイスの微細化と治療領域の極小化に対応可能な高精細解像力の実現を目指す。また、キヤノンと連携し、医師が必要とする情報のみをリアルタイムで分離・強調する機能により、造影血管やデバイス、石灰化の高描出だけでなく、マスク収集なしのDSA実現による被ばくの低減にも貢献していく。

将来に向けた取り組みやソリューションの展開

 同社は「臨床医が目の前の患者さんにとって、より効率的で質の高い診療を提供するために必要な情報を収集し、統合し、加工して、届けること」をミッションとして掲げている。そのミッションを実現すべく、モダリティ以外のソリューションの展開も紹介した。
 ひとつは、AIを用いたビッグデータ解析など拡張性を見据えた、Abierto VNAという医療情報統合管理システムである。大規模な初期投資が不要なデータ共有から始められ、タグ・モーフィング技術により自在に大量データを交換することができる。これによってまずデータを集める仕組みを提供する。もうひとつは、医療情報統合ビューアAbierto Cockpitである。患者画像と診療情報の壁を超えた情報閲覧を可能にし、特定の抽出条件に基づくイベント検出機能や、タイムラインとパネルの時間軸連動にも対応する。
 最後に同氏は、これらのソリューション展開により、AIを用いたナレッジエンジンによるデータ利活用など可能性を広げていくと述べた。具体的には、蓄積されたデータ内からの知識・類似性・関連性の検出、データとフィードバックをもった臨床現場とのサイクル、そして、精密医療への貢献である。「情報を集めて解析し、インテリジェンスを引き出して提供することにより、医師の意思決定支援、経営への貢献、安全性の向上に役立つものとするべく取り組んでいく。今後も、先生方のご指導のもと、モダリティからデータを扱うソリューションまで一気通貫で医療貢献に尽力していきたい」と同氏は結んだ。