鈴木隼人衆議院議員、認知症国会勉強会を開催

2018.03.14
徳田雄人氏
杉山孝博氏
 鈴木隼人氏(衆議院議員)は2月27日(火)、衆議院第2議員会館(東京都千代田区)にて日本医療政策機構と第一回認知症国会勉強会を共催した。氏はこれから超高齢化社会が進む中で大きな社会問題となっていく認知症へスピード感を持った取り組みをしていく必要性を説き、同会を毎月開催することで、認知症への理解を深めていきたいとの意欲が語られた。

 まず徳田雄人氏(NPO法人認知症フレンドシップクラブ理事)は「認知症の課題の現状と認知症フレンドリー社会」について講演した。認知症をとりまく現状の課題については企業側でも取り組みが始まっているが、ガイドラインがないこともあって対策は場当たり的である。また、インフラも不足しており知見と投資を強めていく必要があるという。
 氏はこれらの解決するべき課題の本質は認知症に歩み寄る環境作りだと語る。日本より発展した環境を持つ英国では、認知症フレンドリーコミュニティ(DFC)として活動している。DFCは認知症の課題解決の推進を行う民間のプラットフォームで、加盟団体がそれぞれ自分事として問題に取り組んでいる。各種団体の課題意識は共有され、それぞれの実践がより認知症の人に優しいまち作りへつながっていく。日本でも認知症の人が地域に溶け込めるように、各機関が認知症のことをより知った上でサービスをしていく必要がある。
 DFCを普及させるために必要なこととして、専門家が主体となって認知症の人を支える社会的負荷を軽減させる対処社会から、認知症の人やその家族、地域の人々が主体となり、誰もが普通に暮らせるフレンドリー社会への転換が提唱された。フレンドリー社会は認知症の人のほか、高齢者や子どもにまで対象を広げているため、フォローできる範囲も広い。氏は新しい施設を作るよりも既存のインフラを使いやすくする方がコストは少なくすみ、認知症の人と共に社会を設計する方が効率的であると語った。また認知症当事者による体験や知識はそのまま科学的知見として蓄積される。このような活きた知見はイノベーションとしてより良いインフラ作りに貢献していくだろう。認知症の人と積極的に関わっていくことで地域への溶け込みも期待できる。
 氏はコミュニティを作るための明確な根拠を定めること、イノベーションとインフラを充実させていくことを課題とした上で、今後DFCが発展していくことを期待するとした。

 杉山孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表)からは「認知症の人と家族を地域で支えるために」として認知症の種別とそれぞれの課題が語られた。
 認知症は知的機能低下による生活障害である。介護の視点で見ると、寝たきりよりも動ける認知症の方が労苦は大きい。しかし動ける分だけ要介護度が低くなってしまうというジレンマを抱えている。また認知症の人は、他人にはしっかりした言動を示すことがあり、介護者と周囲との間に認識の大きなギャップを生じさせ介護を難しくする。特に認知症以前のしっかりした本人の状態を知っている家族が介護をする場合、よりその傾向は強くなるだろう。
 認知症を取り巻く問題としてひとり世帯の認知症の増加がある。身近な人がいない分、24時間の見守りや生活全体を支える援助など、近隣とのかかわりによる地域ケアが不可欠だが、同時に軋轢が生じやすいところが難しい。近隣の理解と地域ぐるみの見守りを必要とし、全体の関係を構築していく必要があり、ひとり世帯認知症の地域ケアが有効に機能すれば、介護のすべての問題に対応できると言われている。
 若年性認知症も理解と早期の対応が必要となる病状の1つだ。若年性認知症は短期記憶の低下によってパソコンやメールでのやり取りは覚えていても、聞いたことや話したことはすぐに忘れてしまう。若いため認知症と気付かず、うつと誤診されて正しい治療まで遅れることも多く、速やかな理解と対応が求められる。早期発見のためには本人や家族間の交流の場や、認知症の知識を得る機会を増やすことが重要だ。認知症の人が仕事を続けるためにも、症状の段階に応じた就労支援をすることも必要になってくる。職場適応援助者(ジョブコーチ)は障害特性を踏まえた直接的な支援を行い、具体的な目標を定めたうえで職場適応、定着を図ってくれる。氏は若年性認知症を取り巻く問題解決の一助としてジョブコーチ支援の普及と利用の必要性を説いて結びとした。