鈴木隼人氏(衆議院議員)は3月27日(火)、衆議院第1議員会館(東京都千代田区)で日本医療政策機構と第二回認知症国会勉強会を主催した。
講師として招かれた山本朋史氏(元週刊朝日編集委員)は、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment、以下MCI) と診断されてから現在までの4年間の経験と早期発見の重要性について講演した。
同氏は定年退職後に契約社員として勤務していたが、勤務中のミスが定年前と比較して多発していることに気づいた。60歳にもなれば物忘れもあるだろうと思うものの、従来ではしないようなミスなどもあったことから仕事の継続ができるか不安になり検査を受けることを決意。東京医科歯科大学でのMRIや脳血流SPECTなど検査の結果、MCIであると診断を受けた。
デイケアや認知力向上トレーニングについて関心を抱いた同氏は、まだ仕事がしていたいと思うもののこの状態では全うに働けない、と藁にも縋る思いで職務と並行して週に1~2度デイケアに通い始めた。そこで習慣的に軽度の筋トレ、芸術療法、複数の作業を同時に行うマルチタスク、携帯端末などのアプリケーションでできる認知ゲームといったトレーニングを行っているという。これらの活動で脳に刺激を与えることにより脳の使用されていない部位を活性化させて認知力を向上させる、いわゆる代償作用により認知力を上昇させるという。「道具を使わない筋トレなどであれば自宅でもできるため、一日15分程度と時間を決め毎日続けることでより効果は発揮されるだろう」と続け、自身の生活習慣の変化についても語った。
しかし当初は「同じデイケアに通いはじめた自分よりも10歳以上年上の方にも後れを取っており、焦りからかなかなか効果を感じられずにいた。それでもデイケアの仲間たちから継続的に実行できれば誰でも効果を実感するようになる、と励ましを受けて訓練を継続し、結果機能の改善が感じられるようになった。現在では物忘れなどがあっても、仕事や日常生活への支障は全くない状態だ。4年間で脳の病状は進行しているが、それでも認知機能自体は回復している」と話した。
この経験から同氏はMCIの早期発見は大事だと主張した。「現在日本では65歳以上の4人に1人、90歳以上の5人に4人は発症している。MCIの段階であれば認知症に進みにくくなるが、この段階で何もしなければその約半数は5年で認知症を発症してしまう。脳の異常は自分以外にはわかりにくく、そのため不安や戸惑いも多い。もしMCIへの疑いが少しでもあるようであれば、専門医へ相談した方が早期発見や不安感の解消に繋がるだろう」と指摘した。さらに「MCIは軽度の手足のしびれ、幻視、物忘れ、感情コントロールの欠如などの症状が起こりうるが、どれも生活ができなくなるものではない。しかしその事実があまり知られておらず、同氏の周囲でも自身の病状を家族にも知られたくない、診断を受けたことが発覚したくない、などあまり前向きになれない方が多い。診断を受けた時点で手遅れであるといったイメージをなくしていかなければ、認知症の患者はさらに増大してゆくだろう。MCIの存在とその症状の周知が必要であり、今後も活動が必要である」と語った。
最後に鈴木氏が「認知症は加齢につれ誰もがなり得るもの、正しい理解を普及したい」と今後も認知症への理解を広める活動に対する意気込みを纏めた。