活気ある国家:生きがいの創出
-革新的な医療機器及び医療技術の価値:経済成長、生産性向上、及び医療費削減―
日本医師会と先進医療技術工業会(AdvaMed)、米国医療機器・IVD工業会(AMDD)が共催して、6月1日、ザ・キャピトルホテル東急(東京都千代田区)において、「活気ある国家:生きがいの創出」-革新的な医療機器及び医療技術の価値:経済成長、生産性向上、及び医療費削減―をテーマにシンポジウムを開催した。先進的な医療技術への関心の高まりを反映して多くの国会議員も出席した。
開会挨拶では、世界医師会会長でもある日本医師会会長の横倉義武氏が「日本の平均寿命の高さはユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)としての国民皆保険によるところが大きい。この優れた医療システムを世界的にも推進していきたい。医療機器の革新や医療技術の進展もそのUHCの基盤の上になくてはいけない」と挨拶した。
AMDD会長でエドワーズライフサイエンス社長の加藤幸輔氏がシンポジウムのテーマについて説明し、主題である「生きがいの創出」において、医療機器の進展が、入院期間の短縮・早期回復、介護費抑制などに大きな役割を担っていることを表明した。
続いて基調対談として、池野文昭氏(スタンフォード大学メディカルセンター主任研究員)がモデレーターとして、メドトロニック社メディカルアフェアーズバイスプレジデントのロバート・コワル氏と、同社の心臓ペースメーカー開発の考え方などについて意見を交わした。コワル氏は、93%も大幅な縮小を果たした同社の最新のペースメーカーが、使用者の体の負担が少なく、社会復帰や生きがいにつながるものと強調した。
さらに、印南一路氏(慶応大総合政策学部教授)が座長を務め、臨床、医療行政、患者のそれぞれの立場に立ってパネルディスカッションを行った。患者代表として人工股関節の置換術を受けたバレエインストラクターの小島祥子氏、臨床医師の立場から福岡山王病院循環器センター長で国際医療福祉大学循環器内科教授の横井宏佳氏、厚生労働省医政局長の武田俊彦氏、経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ商務・サービス政策統括調整官の江崎禎英氏、それと池野氏の5人が意見を述べた。
小島氏は自身の体験について「手術への不安はあったが、手術によって痛みもなくなり、どうしてもっと早くこの手術を受けなかったのだろうと思っている。ほかの方にも勧めていきたい」と話した。横井氏は「カテーテル治療、またステントの開発によって心筋梗塞は胸を切らずに治せるようになった。以前はあった海外との医療機器のデバイスラグも行政、企業との協力でほとんどなくなった。それでも治せる人と治せない人がいる。新しい医療機器の開発によって次には治せるというような力を貸してほしい」と革新的医療機器への期待を表明した。
武田氏は「目指すべき方向は健康寿命の延ばすことに焦点を当てる。医療費増の要因として医療の高度化、高額薬剤、新しい医療機器への対応が挙げられるが、質の高い医療、持続可能な保険制度を両立させながら進めていく必要がある。医療面でのイノベーション促進も大切で世界に向けての貢献を期待したい」と語った。江崎氏は「医療の面でもオープンイノベーションが必要だ。産業界では医療面でのリスクを避ける空気が強いが、いきなり重症化した人を治すような治療機器を目指すということでなく、高齢者社会を支えるような医療技術で世界に貢献できる」と提言した。池野氏は「日本でなかなか医療のイノベーションが起こらないのは失敗のリスクを避けようとの空気があるからだ。そうしたリスクに挑戦していくことを教育面からもエンカレッジしていく必要がある」と指摘した。この後、これからの国内での革新的医療機器開発の可能性や方策などについて意見を交わした。