まず、村松禎久氏(国立がん研究センター東病院放射線技術部)が、「CT被ばく管理:画像診断管理加算3の背景と波及効果」と題して、講演を行った。同院では、キヤノンメディカルシステムズの被ばく管理ソフトウェアなどを用いて被ばく管理を行っており、CT検査の正当化を前提に、被ばくの最適化を記録、評価、保存するシステム構築と体制整備の準備が重要であると訴えた。
次に、檜垣 徹氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科先進画像診断開発)が「DLR『AiCE』の物理特性の検証」報告を行った。DLR「AiCE」の特徴として、「MBIRが苦手とする低コントラスト領域の画質改善を得意とする」「幅広い線量域の入力に対し安定して画質改善できる」「高コスト(高線量・長時間)の画像を簡易的に短時間で得る技術」の3つをあげ、SNRが低い(低コントラスト・低線量)場合はDLRが有利で、SNRが高い(高コントラスト・高線量)場合はMBIRが高画質であるとした。
続いて、大村知己氏(秋田県立脳血管研究センター放射線科)が、「ベイジアンアルゴリズムによる頭部血流灌瘤の評価」をテーマに講演した。氏はキヤノンメディカルシステムズの画像解析ワークステーション「Vitrea」のベイジアンアルゴリズムを用いた手法では安定した結果が得られたことを報告した。また、ADCTの4D技術をベースに脳虚血疾患の多様なニーズに対応できる可能性が示唆された、と述べた。
Session1の最後として、森谷浩史氏(大原綜合病院放射線科)が、「Area Detector CTによる呼吸動態撮影の臨床応用」と題して、講演を行った。320列ADCTの4次元X線CT技術を用いた呼吸動態CTについて概説した。癒着・浸潤診断・気管支径のdynamic narrowing・動きの不均一性などが診断可能であるとし、全肺撮影により全肺体積変動・関心領域の変動の計測が可能となったことで、新しい呼吸機能評価が行えるかもしれないという。
Session 2では、市川智章氏(埼玉医科大学国際医療センター画像診断科)が座長を務め、はじめに五明美穂氏(杏林大学医学部放射線医学教室)が「超高精細CTの特性を活かした中枢神経領域における当院での取り組みと臨床応用」と題して、発表した。超高精細CTの空間分解能向上により従来CTでは困難だった主幹動脈皮質枝や穿通枝動脈の描出が可能となったと結論付け、高精度CTへの期待と需要が増加するなか、解剖学的知識の習得や臨床的視点の情報共有の大切さも訴えた。
次に、中村優子氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室)が「DLR『AiCE』の腹部領域における初期経験」をテーマに、「CTによる肝画像診断の現状」を示しつつ、「腹部CTにおけるDLRの可能性」について報告した。検討結果から、Deep learningを用いたDLRは肝腫瘍検出能を向上させる可能性が示唆されたことを示すとともに、DLRは超高精細においても腹部CTのノイズを低減させることができ、今後超高精細CTにおける有用性の検討が必要であると述べた。
続いて、吉満研吾氏(福岡大学医学部放射線医学教室)が「ADCTによる腹部 ECV(細胞外容積)解析:肝&膵」と題し、SURE subtractionによるECVは従来のmanualROI法、旧algorithmによるECVよりも、より正確に肝線維化を反映する可能性と、膵実質のECVは、HCV感染によるインスリン抵抗性に対する膵実質の二次的変化を反映している可能性を示した。最後に、ECV mapは通常の診断CTデータから後方視的に作成可能な臓器の「間質強調画像」であり、種々の病態(慢性疾患)を表す指標となる可能性があるとまとめた。
そして最後に、森谷氏が「超高精細CT Aquilion Precisionの胸部における有用性について」講演を行った。同院は2017年12月に民間病院として初めてAquilion Precisionを導入し、活用しており、Aquilion Precisionでは、胸部単純写真にも迫る超高精細な画像を得られることを報告した。そして最後に、「あらゆる領域に威力を発揮するCTであることは想像に難くない」とまとめた。