キヤノンメディカルシステムズ株式会社は2021年12月19日(日)に「画論29th The Best Image」を昨年に引き続きオンラインで開催した。今回で29回目を迎える同イベントは、プレゼンテーションやディスカッションを通じて、診断・治療に有用な画像のクオリティ、被検者へのメリット、テクニックの創意工夫などを総合的に判断し、画像診断技術の発展と医療への貢献に役立つ知見を共有することを目的としている。当日のプログラムでは、CT・MR・超音波の各部門での最終審査プレゼンテーション、最終審査と発表式が行なわれた。
第二部では新井 一氏(順天堂大学学長)による特別講演「脳神経外科学の発展をもたらしたNeuroimagingの進歩」が行なわれた。同氏は、「国内における脳神経外科の歴史を振り返り、CTやMRIの導入などを始めとする様々な技術的進歩・革新によって大きく発展した。さらに、1975年に日本へEMI社製の頭部用CT第1号機が導入されたことにより、以降のNeuroimagingの爆発的な進歩があり、より微細な解剖構造の描出や神経機能の可視化を可能にしてきた。そして、脳神経外科診療に機能温存・低侵襲外科が可能になってきた」と述べ、神経膠腫(グリオーマ)治療、てんかん治療や脳深部刺激療法(DBS)の症例提示を行ない、治療実例・手法についての説明を行った。
続いて同氏は、Neuroimagingの次のターゲット・課題を2点挙げた。一つめは、大脳生理学への展開として、Functional MRIとDTIを用いたバイリンガル脳の解析をした結果を提示。「今後は、大脳の生理が解明出来るのではないかと大いに期待をする」と語った。また、7Tの必要性として、脳の高次機能の解析など7Tでなければ行えない分野があり、今後の技術発展に期待すると展望を述べた。
さらに、新井氏は「適切・確実な治療への貢献として、今、脳神経血管内治療が主流になりつつある。日常診療では、CT・MRI・Angiographyなどの様々なモダリティを組み合わせて診断と治療が行われている。さらに、治療方針を決める上での術前画像診断や、様々な治療デバイスを用いる上で安全な治療手技へ貢献する術中画像も極めて重要。術後の再発・再治療に対して経過観察として、適切な術後評価によって安全な治療が完結できる」と語った。
最後にNeuroimagingによって支えられてきた進歩は、今後、ゲノム医療、再生医療、BMI、AIなどがキーワードになると考えられる。ただ確実に言えるのは、神経科学の爆発的進歩が今後も継続し、その進歩を遂げた神経科学を臨床の現場にフィードバックする脳神経外科医の役割はますます大きなものになるとした。
次回「画論 30th The Best Image」は、2022年12月18日(日)に開催の予定。
各部門最優秀賞
CT部門最優秀賞
1~160列部門
社会福祉法人 恩賜財団 済生会横浜市東部病院
Hybrid ERにおけるOne stop stroke protocolを用いた急性期脳梗塞
Aquilion ONE部門
東海大学医学部付属八王子病院
転移性骨腫瘍(乳癌)
Aquilion Precision部門
藤田医科大学病院
Monckeberg様硬化症を伴うClassical Giant cell arteritis
MR部門最優秀賞
1.5テスラ以下(脳神経)部門
医療法人河内友紘会 河内総合病院
急性期脳梗塞の疑い
1.5テスラ以下部門
頭とからだのクリニック かねなか脳神経外科
左頸動脈狭窄(3D M-Echo法を使用したBone-like imageによる石灰化プラークの描出)
3テスラ(脳神経)部門
杏林大学医学部付属病院
左lenticulostriate artery灌流領域における急性期脳梗塞
3テスラ部門
地域医療支援病院オープンシステム 徳山医師会病院
若年者腰椎分離症のMR Bone Image
超音波部門最優秀賞
血管部門
東邦大学医療センター大森病院
特発性腹腔動脈解離
乳腺・甲状腺・表在部門
医療法人IRO 名古屋膠原病リウマチ痛風クリニック
全身性強皮症 (SSc:systemic sclerosis)
腹部部門
公立大学法人 福島県立医科大学附属病院
小腸静脈瘤
心臓部門
淀川キリスト教病院
感染性心内膜炎精査で肺動脈弁下型心室中隔欠損症の初回同定と、さらに2つの瘻孔部位も同定した一例