バイエル薬品、プレスセミナー-医療用画像診断におけるAI活用の最新動向と未来-を開催

2023.04.19

 バイエル薬品株式会社は、4月10日に「画像診断におけるAI(人工知能)の役割」というテーマでオンラインで講演会を行った。

 基調講演として村上卓道氏(神戸大学院医学研究科)は、次のように語った。

村上卓道氏

 放射線科医の分野において、現在の医師数は放射線科医が約9,000人、放射線専門医は約7,000人とされている。この数字は米国の10分の1ほどであり、日本の人口が米国の2分の1ほどと考えると少ないといえる。一方で、放射線科医の画像読影業務は近年急激に増えている。そのため、村上氏は画像診断のアシスト、機器の進歩、検診などの簡便な検査の一次チェックを推進させるためにAIの必要性を説いた。

 さらに、村上氏は”第2の意見”として運用されている、コンピュータ支援診断において、AIが使われる可能性を指摘している。AIが担える画像診断として、撮像、存在診断、質的診断、定量作業の四つの工程が提案される。具体的に、同氏は「人工知能による肝細胞癌病変自動同定・診断」を例として発表した。Gd-EOB-DTPA enhanced MRIのAI画像診断では、HACARUSと神戸大学の共同研究により、肝臓の切り出し、Superpixel segmentation、Feature extraction、予測・診断の技術が開発され、その可能性を示した。

 しかし、今後AIが放射線科医やメディカルスタッフの仕事を奪うことを村上氏は否定している。なぜなら、読影は医師法に基づいた医療行為であること、被ばくボタンの自動化の不可能性、放射線科医と比較するとAIの読影能力の不足が露呈していること、そしてAIは診断に責任が持てないことを理由にあげている。

 おわりに、村上氏は今後の画像診断におけるAIの役割について語った。日本国内の放射線科医の人数が少ないことを考えると、画像診断にAIが活用されることは間違いないが、一方でAIは当分の間はエキスパートである放射線科医の診断能力を超えることはない。しかし、一次検診、多次元画像、機能画像、融合画像といった莫大なデータを解析する際に、AIは放射線科医や診療放射線技師にとって大きな味方になると展望を述べた。 基調講演の最後に、三川雅人氏(バイエル薬品)と藤原健真氏(HACARUS社)のトークセッションが開かれた。その中で、「Cal.Liver.Lesion」の利点などを語り、今後の有用性などを述べた。