北海道大学と(株)島津製作所は、「次世代高精度放射線治療のための新動体追跡技術システム」の試作機が完成したことを、11月16日に発表した。
本試作機は、同大の白土博樹教授と石川正純教授らが研究を進めてきたもの。がんの放射線治療で使用するX線治療装置と組み合わせるシステムで、呼吸の影響により体内で一定の位置や形状を保たない肺や肝臓のような体幹部のX線治療の場合でも、正常組織へのX線照射を避け、がん組織のみにピンポイントで照射できる。
今後は、試作機による様々な試験を行いシステムの完成度を高めるとともに、白土博樹教授らが関わるスーパー特区(ミニマムリスク型放射線治療機器開発)等を通じ、橋渡し研究支援機関である北海道臨床開発機構の支援のもと、2012年度の商品化を目指すという。また、国内市場投入に続き、海外市場への投入も視野に入れている模様だ。
大学発の基礎研究の成果を広く臨床の場で使えるようにするため、産学連携で共同開発を進めてきた北大と島津は、その具体的な成果として臨床現場に最先端医療技術を一日でも早く提供できるよう、引き続き努力するという。
【開発中の新動体追跡システムの概要】
呼吸性の移動等により位置を変える臓器の腫瘍位置をリアルタイムで把握し、治療用のX線ビームを照射するタイミング、止めるタイミングをX線治療装置に指示。X線管、X線検出器、X線高電圧装置、同期制御装置、動体追跡処理装置からなるシステム。
製品化に伴い、複数マーカーへの対応を可能にし、より詳細な腫瘍位置の情報を得ることで、ピンポイント照射の精度向上を図る。また、X線管・X線検出器の保持器に改良を加え、移動する腫瘍位置の追跡がよりスムーズに行えるようにした。さらに、X線検出器部分は、I.I.(イメージインテンシファイア)の他に、フラットパネル検出器を用いるタイプもラインナップできるよう開発を進めている。
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