島津製作所、安全な手技と検査スループットの向上を支援 ~X線テレビシステム用ソフトウェア「Smart FOV」を発売~

2024.10.07

 島津製作所は、10月3日にX線テレビシステム「SONIALVISION G4」向けソフトウェア「Smart FOV(スマートエフオーブイ)」を国内で発売した。本ソフトウェアを使用することで、X線透視撮影の際、装置の寝台を動かすことなく撮影視野を移動でき、内視鏡を通じてカテーテルやガイドワイヤなどのデバイスを胆管や膵管に進めて透視・撮影しながら検査・治療を行うERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography、内視鏡的逆行性胆管膵管造影)や患者の嚥下機能を透視撮影で観察する嚥下造影検査において、安全性の向上と検査・治療時間の短縮を実現できる。

 ERCPは、胆石の詰まりによる胆管の閉塞や膵管の狭窄などの疾患に対して用いられる治療法だ。口から入れた内視鏡を通したガイドワイヤやカテーテルを胆管や膵管に挿入。カテーテルを通じて造影剤を注入し、X線透視と撮影を行いながら胆管や膵管の異常を詳しく調べる。ERCPの臨床現場においては「寝台を動かさずに安全に撮影視野の移動を行いたい」「予期せぬ寝台移動により内視鏡が十二指腸から抜けるリスクを回避したい」というニーズがあった。島津製作所はこれらのニーズに応え、視野移動と画像拡大表示を可能にするデジタル処理技術により、寝台を動かさずに、X線検出器のサイズ内の任意の位置に視野を移動できる「Smart FOV」を開発した。「Smart FOV」は医師が意図しないタイミングで寝台が動くリスクを抑えて、「患者の安全性の確保」「手技の効率化」「医療従事者間の円滑なコミュニケーション」を支援する。

 また、本ソフトウェアの発売に合わせて、透視画像上のデバイスを強調し、視認性を高める透視画像処理技術「DeEP」の操作性を改善した。「Smart FOV」の提供と、臨床有用性が高い「DeEP」の性能向上により、島津製作所は患者および医療従事者の負担を軽減する。なお、「Smart FOV」は今冬から海外発売を予定しており、12月に開催されるRSNA(Radiological Society of North America、北米放射線学会)にも出展する。

 島津製作所は中期経営計画において、画像診断機器とAIやIoT技術を用いて新たな付加価値を提供する、「イメージングトランスフォーメーション(IMX)」戦略を推進している。今後もカテーテルなどデバイスの微小化や高度化に対応した画像診断機器・ソフトウェアを通じて、低侵襲治療を支援していく。

「Smart FOV」利用イメージ
(点線部分が検査開始時、黄色い部分が移動後の視野範囲を表す)

新製品の特長

1. 寝台を固定したままで撮影視野を移動可能

 従来、視野を移動させるためには寝台の移動が必要で、デバイスが患者の体内に入った状況での移動は胆管などを傷つけるリスクや内視鏡が十二指腸から抜けてしまうリスクがあった。本ソフトウェアは、X線検出器の視野サイズ(17インチ×17インチ)内の任意の位置に視野を移動できるため、寝台の移動を必要とせず、任意の箇所を撮影可能になる。既に「SONIALVISION G4」をご使用中のお客様は本ソフトウェアを搭載することで、同機能が利用可能となる。

2. 主力製品の操作性をさらに向上

 本ソフトウェアを搭載可能なX線テレビシステム「SONIALVISION G4」は島津製作所の主力製品で、デバイス強調透視画像処理技術「DeEP」を搭載している。「DeEP」は、難視認性のガイドワイヤやステントなどのデバイスの視認性を向上させる島津製作所の独自技術である。このたび、「Smart FOV」の発売に合わせて「DeEP」の操作性が改良された。従来は検査室外で切り替えていた「DeEP」の利用有無を検査室内のローカルコンソールでも切り替えが可能になり、操作性が向上した。

3. シニアヘルスケア領域に貢献

 咀嚼・嚥下機能を観察する検査(嚥下造影検査)ではX線テレビシステムによる透視検査を行う。従来は、視野の中心から意図した撮影箇所が外れてしまう場合、患者が座っている車椅子などを動かして位置を微調整する必要があった。「Smart FOV」を使用すれば、検出器の視野サイズ(17インチ×17インチ)内で視野の位置の任意移動や、拡大表示が可能なため、車椅子などの位置を動かすことなく撮影したい箇所を画面の中心に移動させることができる。島津製作所は、高齢化が進む社会において、需要の高まっている嚥下造影検査の円滑な実施を支援して、シニアヘルスケア領域に貢献していく。

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