がん放射線治療では、体内のがん病巣へ正確に放射線を当て、周辺の正常細胞への影響をいかに最小化するかが追求されてきた。病巣に正確に照射するためには、位置合わせに多大な時間と労力が必要で、より効率よく照射できる機能の開発が求められていた。
同装置は、X線体内撮影画像装置から得られた情報により動くがん病巣の位置をリアルタイムに把握、放射線照射ヘッドを自在に動かし腫瘍全体をモニタリングしながら、がん病巣だけに集中照射することを可能にした。その結果、これまで難しいとされてきた揺れ動くがん病巣に対する正確な放射線照射を、世界最高レベルの精度で実現。正常組織への副作用を極力回避するだけでなく、患者・医療スタッフ双方の負担も大きく軽減する。
追尾照射機能は、同社が保有する画像処理と放射線を高精度に照射する技術を融合して実現した。これまでも放射線治療は、立体的(3次元)に腫瘍の位置を把握できるようになるなど進化を続けてきたが、この追尾照射の実現により、3次元情報に時間要素を加えた4次元治療へと進化したことになる。
なお、同装置の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の基盤技術研究促進事業により基盤技術を確立した後、次世代戦略技術実用化開発助成事業の支援を受け、取り組んできたもので、京都大学、先端医療センターおよび京都医療科学大学が同社に対し医療面の協力を行っている。
先端医療センターは、神戸医療産業都市構想に基づいて神戸市ポートアイランド内に設立された高度専門医療のための診療・研究施設。生命科学の研究成果を臨床に応用する橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)を通じて最先端医療を提供することを理念に、がん放射線治療においても最先端治療を行っている。同センターは2008年5月に同装置の初号機を導入、今回、新たに追尾照射機能を搭載して一層先進的で患者に優しい治療を手掛けることとなった。
●お問い合わせ
三菱重工業(株)
機械事業部
URL:http://www.mhi.co.jp/index.html