SPECT装置は体内に投与した放射性医薬品から放出される微弱なガンマ線やX線を検出してその分布を画像化する装置。血流量や代謝情報が得られるため、主にがんの骨転移診断、心筋梗塞や狭心症などの心疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害やアルツハイマー病などに使用されている。特に定期的ながんの転移診断や心筋・脳の血流測定に優れており、国内では現在、先端的な研究機関から大学病院・心臓検診センターまでの約1,200の施設で幅広く導入されている。
今回発売するDiscovery NM630は、2004年の発売以来、約150台の国内納入実績を誇る「Infinia(インフィニア)」シリーズの上位機種。検査時間の短縮や開放感のあるデザインの採用で、患者の快適性を高め、小児やがんの骨転移による痛みのある方などこれまでSPECT装置で撮影が難しかった患者も手軽に安心して検査できるようにした装置となっている。
核医学検査は、CT(コンピューター断層撮影装置)や超音波診断装置の撮影と比較して一般的に検査時間が長く、その間同じ体勢を保つ必要があるため、小児や痛みを伴う患者への検査は大きな負担となっていた。また撮影機構部(ガントリー)の開口径が小さく、かつ検査時には大型の検出器が体の周囲を回転するため、撮影時に患者が圧迫感を感じるケースが多くあった。
Discovery NM630では、新開発の画像処理用ソフトウェア「Evolution(エボリューション)」を搭載することで、従来と同等の画質を維持したまま、がんの骨転移などを調べる場合の全身像の撮影時間を約15分から7分半へ、さらにSPECT像の撮影時間も7分半と短縮できるため、断層像を追加しても検査時間はトータルで15分と短縮する。加えて、従来から厚みを13cm薄く、重量を80キロ軽くした新開発のElite NXT(エリート・エヌエックスティー)検出器や、開口径を従来の60cmから70cmに約15%拡大したガントリーを採用し、検査時の患者の圧迫感を大きく削減した。
検査時間の短縮と快適性のアップを高い次元で融合したDiscovery NM630は、これまでSPECT装置で撮影が難しかった小児やがんの骨転移による痛みのある患者においても身近で安心感の高い検査を可能にすることで、SPECT検査の適用可能患者層を拡大し、SPECT検査をより身近なものにすると期待されている。
Discovery NM630に搭載された新開発のElite NXT検出器は従来から厚みを13cm薄く、重量を80キロ軽くして小型・軽量化を図ったほか、光電子増倍管や電気回路を一新することで、基本となるエネルギー分解能を向上。従来に比べて電気的ノイズや高エネルギーの散乱線を軽減することで画質の向上と高い安定性を実現し、ファントムでは4.8mmのCold Spotを描出可能。
またコリメータと検出器に起因する画像の劣化を補正する新開発の画像処理用ソフトウェアEvolutionは、SPECT断層像において画質を維持したまま撮影時間を半減できる。そのため撮影時間の関係上、従来は平面画像で対応することが多かった関心領域の撮影がより精細なSPECT画像に代わることで診断における情報量が増える。撮影した3Dの機能画像はCTやMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などで撮影した形態画像と重ね合わせることで、より精度の高い病変部の位置特定につながるため、一段と高レベルの診断支援が可能となる。