国際マルチセンタースタディによる非造影MRアンギオの臨床的有用性を欧州放射線学会で発表

2013.05.29
国際マルチセンタースタディによる非造影MRアンギオの臨床的有用性を欧州放射線学会で発表
-より安全な非造影MRアンギオ検査による腎動脈狭窄診断の有用性を報告-

 東芝メディカルシステムズ株式会社(本社:栃木県大田原市、社長:綱川 智)が後援する、“REACT”(リアクト;REnal Artery Contrast-free Trial)が、2013年3月7日にオーストリアのウィーンで開催された欧州放射線学会(ECR)で発表された。より安全な検査で、腎動脈狭窄を診断する非造影MRアンギオ(MRA)検査の有用性が報告された。

マルチセンタースタディの背景
 米国食品医薬品局(FDA)は、2006年慢性腎疾患患者だけでなく末期腎疾患、急性腎不全の患者にガドリニウム系造影剤を使用することによって腎性全身性線維症(NSF)を発症する危険があるという警告を発表した。現在NSFの効果的な治療法がないため、この病気を避けるためには予防が重要になる。そこで、ガドリニウム系造影剤を使わずに血管を高精細に描出可能な非造影MRAが広く注目されるようになった。

国際マルチセンター臨床研究“REACT”
 腎動脈狭窄の診断ツールとしての非造影MRAの有用性を検証するため、同社は米国、フランス、スペイン、中国、日本の5カ国6施設と共同して国際マルチセンター臨床研究 REACT(REnal Artery Contrast-free Trial)を立ち上げた。日本からは、東京大学が参加した。登録患者は75名で、被験者全員に対し、腎動脈狭窄の評価を目的として非造影腎MRA検査(1.5T MRI装置 EXCELART Vantage TM powered by AtlasとVantage Titan TMの両方の装置を使用)およびCTアンギオグラフィ(CTA)を実施した。この研究では非造影MRA撮像法の高い感度、特異度、および診断精度を示す結果が得られた。また同時に、腎動脈狭窄の診断能に関しては非造影MRAとCTAの間に統計的差異は認められないことも示され、非造影腎MRAの臨床的有用性が確認された。
 合計75人の患者(年齢:58±13歳(平均±SD)、うち男性41人(55%))に対してすべての撮像検査が実施され、150の腎動脈が解析のためのデータとして得られた。CTAを参照基準としたとき、腎動脈狭窄の検出における患者ベースのMRAの診断精度は0.89、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率はそれぞれ0.74、0.92、0.63、0.95だった。また、MRAの画質評価は96%の症例で”good”または”excellent”だった。これらの結果は、「ゴールドスタンダード」であるCTAと比較しても非造影MRAが腎動脈の有意狭窄 (>50%を有意狭窄と定義)の有無を判断する正確な手法であることを示している。

欧州放射線学会で発表
 この結果は、2013年3月7日にオーストリアのウィーンで開催された欧州放射線学会で、本マルチセンター臨床研究の首席研究者であるDr.Timothy Albert(デューク大学医療センター客員准教授、循環器診断センター所長)によって発表された。この研究で収集されたデータに基づき、非造影腎MRAは非造影撮像の有用な手法であり、ガドリニウム系造影剤による腎性全身性線維症(NSF)や腎性線維化性皮膚症(NFD)といった稀ではあるが致命的となりうる皮膚疾患などの副作用のリスクを回避すると同時に、高い信頼性で患者さんを診断するための正確かつ非侵襲的な手法であることが発表された。
「REACTの研究結果は、新しい非造影血管イメージング手法の妥当性を裏付けています。これは臨床上重要なマイルストーンであり、我々はさらに安全で効果的な撮像法を開発すべく努力を続けていきます」とDr.Albertは述べている。

同社独自の先進的非造影MRA手法
 腎臓疾患のある患者さんを含めた全ての患者さんに対する撮像の安全性を向上させるため、同社は造影剤なしでMRA検査を実施できる先進的な非造影MRA手法を開発した。非造影MRAは全身に適用可能で、血行動態の評価、機能評価、および血管構造物の描出に有用である。この手法では見たい血管のみを選択的に描出することができるため、特に腎動脈、門脈系、肺動脈のように多方向に走行する複数の血管と複雑な血行動態をもっている血管の選択的描出に有用である。
 同社は、経営スローガンとしてとして揚げている「Made for Life TM」に基づき、患者さんのリスクを最小限に抑えながら最善の治療に貢献できる優れた画像を提供できるよう開発を推進している。REACTでは、造影剤を使用せずに腎動脈狭窄を検出できるようになったことが確認された。非造影MRA法によりガドリニウム系造影剤に伴うリスクを減少させ、より安全でより快適な検査が可能になることが期待される。
 同社独自の先進的非造影MRAは非侵襲的で痛みのない手法であり、ガドリニウム系造影剤に伴うリスクを排除するだけでなく、セットアップにかかる時間も短縮できるため、画質を損なうことなくより快適な、より短時間で終わるMR検査を患者さんに提供できる。

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