PCIワークフローを最適化するシステム「OPTIS™Integrated System」が心疾患治療のリスクを下げる~セント・ジュード・メディカル株式会社代表取締役社長ウィリアム・フィリップス氏インタビュー
「OPTIS™ IntegratedSystem」の特長
「虚血性疾患の治療において重要なのは生理学的検査に基づいて血管の評価を行うことです。もし虚血性疾患の疑いがあるとき、『OPTIS™ Integrated System』を用いて、従来の検査に、たった5分で終わるFFR測定を追加すれば、血管のより正しい状態を知ることができます」――本システムが患者にもたらすメリットについて、フィリップス氏はまずこう切り出した。
「OPTIS™ Integrated System」には血流狭窄の重症度を示す「心筋血流予備量比(FFR)」の測定技術が搭載されており、血管内のどの狭窄が患者の虚血の責任病変であるかといった情報もリアルタイムで取得可能である。さらに、光を使用した血管内イメージング技術である「光干渉断層撮影(OCT)」も搭載されている。OCTはIVUSなどの従来の冠動脈イメージング技術と比較しても解像度が約10〜15μmと約10倍高いといわれている。これを血管造影画像と同期(以下アンジオ同期)させることによって、医師はカテーテルの位置をマッピングしながら、同時に血管内部の様子を確認することができる。
OCTとアンジオ同期が1つのシステムに統合されており、より適切な治療法を判断しやすくなる。患者にとってはより安全で効果的な検査・治療を受けられるメリットがあり、病院にとっては、リスクの低減にも繋がるのだ。
日本における展開と今後
既に30ヶ国で導入が始まっている本システムの日本での上市について「日本人医師の『血管内を見る』技術は非常に高く、日本に導入できることを喜ばしく思う」と同氏は語る。グローバル企業として世界的に展開をしているセント・ジュード・メディカル社だが、日本で使用するOCTシステムの開発には日本人の血管の特徴などを考慮し、必ず日本の医師が臨床研究に参加している。
また、開発された技術はいち早く日本で導入するようにしているという。その理由として同氏は、「日本人を含むアジア人の虚血性疾患が欧米人に近いものに変わってきていること」を上げた。「アジア人の疾患のリスクが高まる中、弊社の血管内イメージングによって先生方のより良い判断のサポートをしていきたい」と述べている。
本システムが上市したばかりの現在、日本は重要なマーケットである。既に販売している製品にもアンジオ同期の機能を盛り込むなどして、更なる市場の拡大を狙う。
本システムについてはこれから「ILUMIENⅢ」という新しい国際的な多施設共同研究の実施を計画しているという。これは、OCTとIVUS及び標準的なアンジオを比較するもので、血管内のイメージングのエビデンスを強化するのが狙いだ。さらに、同社はこのスタディが学会のガイドラインの強化や、システムの更なる改良につながるものになると捉えている。
「OPTIS™ IntegratedSystem」がもたらすもの
「OPTIS™ Integrated System」は日本の医療にどのような変化を生むのだろうか?
この問いに対して、まず同氏はこのように述べた。
「高齢化が進む社会において、重大な慢性疾患に挑んでいくことは弊社の最大の使命だ。我々は、虚血性心疾患の疑いのある全ての患者にFFRによる評価を行うべきだと考えている。FFRによって血管の状態を正確に把握し、不要な手術や投薬といった、患者にとってのコストやリスクを減らすことができる」。
「また、OCTの重要性も高まっており、アンジオ同期は心疾患の治療のワークフローに変化をもたらす。OCT画像は高画質で、ステントのポジショニングにも非常に便利である。圧着不良などを防ぎ、再手術や治療といった術後の負担を減らすことにもつながる」。
「重大な慢性疾患」である虚血性疾患の診断・治療におけるFFRとOCTの重要性を強調した同氏は、これらのシステムが統合された「OPTIS™ Integrated System」について、「患者・病院にとってより良いアウトカムをもたらすだろう」と期待を寄せている。
日本国内では既にいくつかの医療施設での本システムの稼働が決定している。今後本システムの導入が進めば、同社の期待するように、虚血性疾患の診断・治療がより少ない負担でかつ精密に行うことができるようになるだろう。