富士フイルム、医療用X線動画技術を開発

2017.04.10

デジタルX線画像診断分野で培った画像技術を、動画に応用
医療用X線動画技術を開発
ノイズを抑えた高鮮鋭な動画をリアルタイムで表示可能

 富士フイルム(株)は、デジタルX線画像診断分野で培った画像技術と、画像解析に伴う複雑で膨大な演算を高速で行う*1新開発の画像処理エンジンによって、ノイズを抑えた高鮮鋭なX線動画をリアルタイムで表示することができる医療用X線動画技術を開発した。本技術には、以下の画像技術が活用されている。

<本技術に活用されている技術>
①X線画像にランダムに生じるノイズを高精度に抽出する画像解析技術
②観察部位の動きを正確に検知する画像解析技術
③X線エネルギーの検出効率を向上させる画像読取技術

同社は今後、外科用イメージへの搭載など、本技術の早期実用化を目指す。

 X線動画は、手術中にX線を継続的に照射して、体内の様子を観察することができる方法だ。整形外科や脳神経外科領域などの手術では、患者の身体的負担を軽減するため、血管内のカテーテル治療など低侵襲な手技が広く用いられている。これらの手術では、X線動画を用いて術中に患部の位置や状態を把握するため、X線動画は高鮮鋭であることが求められている。一般的に、X線動画のノイズを除去するには、動画を構成する連続的な静止画(フレーム)を単純に重ね合わせて、その平均値を元に画像処理を行う方法が用いられている。しかし、この方法は、フレーム間で観察部位が動くと、観察部位が残像のように複数に見えたり、観察部位の鮮鋭性が低下するなどの課題があった。

 今回同社が開発した医療用X線動画技術は、前後のフレームに写っている観察部位を比較して、観察部位が動いた領域を高精度に検出する。動いた領域の位置を重ね合わせてから加算平均を行い、鮮鋭性の低下を抑制する。また、ノイズが増加しやすい低線量の撮影であっても、フレーム毎のノイズを高精度に抽出する画像解析技術が、ノイズの大幅な軽減に寄与する。この一連の画像処理は、新開発の画像処理エンジンによって高速で行われるため、高鮮鋭なX線動画をリアルタイムで得ることができる。

 同社はこれまで、ノイズ低減回路と、X線エネルギーの検出効率を向上させるISS方式*2を採用したフラットパネルディテクターを開発し、数々のX線画像診断システムに搭載してきた。特に、同社のカセッテサイズデジタルX線撮影装置は、画像の周辺部まで歪みがない高画質なX線静止画が低線量で得られるため、国内市場でトップシェア*3を堅持するなど、多くの医療現場から高い評価を得ている。
 また昨年は、ノイズ成分を算出して除去する技術を開発し、従来の半分のX線量でも、高画質で画像診断がしやすいX線画像が得られるようになった。

 富士フイルムは、医療現場で急速に高まるX線画像の高画質化や低被ばく化のニーズに、先進の技術をもって取り組んできた。今後は、X線動画の分野においても、同社技術を活かし、さらなる医療の質の向上に貢献していく。

*1 処理時間は、約20ms/フレーム。「ms」は、1000分の1秒。
*2 ISS(Irradiation Side Sampling)方式。従来型のフラットパネルディテクターと反対側のX線照射面側にセンサーを配置し、X線の照射面側よりX線から変換された光信号を読み取る。
*3 平成28年12月時点。同社調べ。



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