キヤノンメディカルシステムズ㈱(以下、キヤノン)は公益社団法人発明協会が主催する平成30年度全国発明表彰において、「2つの基本波の差周波と第2高調波を利用する超音波診断装置の発明(特許第4557573号)」で「文部科学大臣賞」および「発明実施功績賞」を受賞した。
超音波診断装置は超音波を体表に当てて、組織からの反射を受信し、リアルタイムに映像化する装置だ。体の負担が少なく、腹部、循環器、表在、血管、産婦人科、整形外科など、幅広い臨床領域で使用されており、技術の進歩とともにさらなる臨床応用が期待されている。
本発明は、従来は映像化できなかった深部の組織を高解像度で映像化する技術で、超音波診断装置の基本性能を飛躍的に向上させることができた。本発明により病変の早期発見が可能となると共に、胃や腸などの消化管や筋肉・腱の高解像度の映像化により、新たな診断を確立した。キヤノン製超音波診断装置のラインアップには「D-THI(Differential Tissue Harmonic Imaging)」として本技術を搭載している。さらに、本技術は多くの他社の超音波装置にも搭載され、日常診療に不可欠な基本性能となっており、より確実な診断をサポートしている。
キヤノンはこれからも尊い命に貢献するため最新の医療システムを提供していく。
2.受賞技術について
背景:従来、消化管や筋肉・腱は、触診等で検査されることが多く、より客観的な診断が期待されていた。超音波診断装置では、体内組織を映像化するために、超音波が体内を伝搬する際に組織から発生する第2高調波を検出して映像化する技術が一般的だった。しかし、第2高調波は高周波であり、周波数帯域が狭かったため、体表から離れた深部組織を映像化できず、得られた映像も解像度が低いという問題があった。
発明技術:周波数が異なる複数の基本波を同時に送信し、基本波が体内を伝播する際に組織から発生する差周波を、第2高調波と効果的に干渉させる(図1)。これにより、映像化する超音波の周波数帯域が低周波数側に広がったため、深部組織の映像化が可能になり、映像の解像度が向上した(図2)。また、差周波と第2高調波の周波数分布が打ち消し合わないよう、送信する基本波の周波数と位相を制御して感度を高めた。
3.全国発明表彰について
全国発明表彰は、大正8年の第1回帝国発明表彰にはじまり、優れた発明を完成した者、実施化に尽力した者、発明の指導・奨励・育成に貢献した者を顕彰することにより発明の奨励・育成を図り、我が国科学技術の向上と産業の振興に寄与することを目的としている。
●お問い合わせ
キヤノンメディカルシステムズ㈱ 広報室 江野
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