AMED、5大学、11社と共同で「スマート治療室」のスタンダードモデルを開発、臨床研究を開始~IoTを活用した手術室内医療機器の接続と手術室外連携を信州大学医学部附属病院で実証~

2018.07.09

●現在、手術室等の医療現場では多種多様な機器の膨大な情報を医師やスタッフが限られた時間内に判断しつつ治療を行っている。
●そこでAMEDは、東京女子医科大学、信州大学等5大学、デンソー、日立製作所等11社と共に、IoTを活用して各種医療機器・設備を接続・連携させ、手術の進行や患者さんの状況を統合把握することにより、手術の精度と安全性を向上させる「スマート治療室」の開発を進めている。
●このたび、2019年度事業化を目指した「スタンダードモデル」が信州大学(信州大学医学部附属病院)に完成した。手術室のほぼ全ての機器をネットワークで接続し、病院医療用画像管理システムとの連携や、手術室外医師・スタッフとのコミュニケーション機能も備えており、今月より臨床研究を開始し、情報統合による手術の効率性・安全性等を実証する。

 現状、手術室等の現場では多種多様な医療機器・設備から発生する膨大な情報を医師やスタッフが限られた時間内に判断しつつ治療を行っている。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下AMED)は、こうした治療の現場においてIoTを活用して各種医療機器・設備を接続・連携させることで、手術の進行や患者さんの状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて整理統合し、医師やスタッフ間で共有できる「スマート治療室」の開発を世界に先駆けて進めている。
 本プロジェクトは東京女子医科大学が統括し、国内外の産業界で普及しているミドルウエア ORiN(Open Resource interface for the Network)をコア技術とした汎用性の高い治療室用インターフェース OPeLiNKをデンソーが中心となって開発し、日立製作所のオープンMRI等の手術室内医療機器・設備を接続している。2016年に「ベーシックモデル」を広島大学病院、「ハイパーモデル(プロトタイプ)」を東京女子医科大学に設置し、機器のパッケージ化や新規アプリケーション等の開発を進めてきた。

 このたび、2019年度事業化を目指して、OPeLiNKを備えた「スタンダードモデル」手術室が信州大学病院の包括先進医療棟内に完成した。各種医療情報を「時系列の治療記録」として収集・提供(表示)し、手術室外の医師・技師等にも共有することにより、治療の効率性や安全性の向上が期待される。これらを検証するための脳腫瘍に関する臨床研究を本月より開始する。スマート治療室の情報は将来的にはビッグデータとしての解析も可能で、保守・管理の面でも、機器操作ミスの防止や機器故障の未然検知、コスト管理(稼働時間の短縮)に大きなメリットをもたらす。
 「スタンダードモデル」は2019年度内の事業化を目指しており、スマート治療室の輸出等を通して日本の新たな産業基盤となることが期待される。パッケージとしての手術室の販売は日立製作所等が担当する。また、今年度末に臨床研究可能な「ハイパーモデル」を東京女子医科大学に設置し、ロボットベッド、新規精密誘導治療等の新しい技術を2020年度以降、適宜リリースしていく。本プロジェクトは、治療室の情報インフラとしてオープンな開発環境を提供するOPeLiNKを活用して、スマート治療室の普及を促進していく。
信州大学のスマート治療室

OprLink
スマート治療室 OPeLiNK概念図

表

●お問い合わせ
日本医療研究開発機構産学連携部医療機器研究課
(未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業)
TEL:03-6870-2213
URL:https://www.amed.go.jp