GEヘルスケア・ジャパン、小倉記念病院とAI技術を活用した冠動脈内腔自動検出の成果を示す

2019.09.04

~欧州心臓病学会(ESC)2019にて発表~

 一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院(以下、小倉記念病院)とGE ヘルスケア・ジャパン(株)(以下、GEヘルスケア)の間で、2018年8月に開始したAI(人工知能)技術を活用した冠動脈内腔自動検出の実現に向けた共同研究の成果について、2019年9月1日(日本時間9月2日)、小倉記念病院 循環器内科 山地杏平部長は、欧州心臓病学会(ESC)2019の中で、本共同研究により、AIの活用によって全自動ですべての冠動脈内腔を速やかに同定することが可能となったこと、臨床現場での早期実用化の展望について報告した。

 近年、急速な高齢化に伴い心臓疾患の患者数は増加傾向にある。特に、心臓に栄養を送る冠動脈が詰まる、急性心筋梗塞は日本における死因の上位をしめている。急性心筋梗塞は時間の経過とともに心筋が壊死してしまうため、病院到着から90分以内に正確な診断と速やかな治療を行う必要がある。現状では心臓CT検査の解析は、トレーニングを受けた医療従事者が行っても、数十分から1時間程度かかることもあり、また、心臓病は夜間や休日にもかかわらず発症するが、これらの時間帯では、解析が不可能である施設が大多数となっている。このため、急性心筋梗塞や、狭心症の診断に時間を要することが問題となっている。

 小倉記念病院 循環器内科 山地杏平部長とGEヘルスケアの共同研究チームは、AI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)に分類される「3次元畳み込みニューラルネットワーク(3D-CNN)※1」を用いて、小倉記念病院に蓄積された過去4年間約2万件の心臓CT検査画像から、心臓の特徴を学習させることにより、冠動脈内腔の自動抽出プログラムを作成した。心臓を栄養する冠動脈は、血管径約3mmと細く、また狭窄や閉塞といった血管内腔にある病変の診断には、血管の位置を同定する際に0.2~0.3mm程度でもずれてしまうと、評価が困難となることがある。このため、精度向上を目的に、まずAIを用いて冠動脈全体を抽出し、そのうえで、得られた冠動脈データからAIを用いて冠動脈内腔を抽出する、2段階アプローチにて、診断精度の向上に成功した(図1)。

図1 冠動脈内腔の自動抽出プログラム

  
 冠動脈に中等度狭窄が見られた際に、治療を行う必要があるか否かを判定するために、冠血流予備量比を測定するが、このためには、手首や足の動脈などを穿刺して行われる、冠動脈造影検査が必要となる。また、CT画像から冠血流予備量比を、計算でシミュレートする解析手法も用いられるが、解析に時間がかかることもある。

 これに対し、山地杏平部長は、「AIを用いて全自動ですべての冠動脈内腔を速やかに同定することが可能となったことにより、心臓CT検査を受けたのち、診断を受けるまでの待たなければならない時間が大幅に短縮され、緊急に治療を行わなければならない患者さんに、速やかに対応できるようになると期待される。特に人員が不足する夜間や休日においても、平日の日中と同様な診断プロセスを踏めることも期待される。さらには、緊急を要しない患者さんでも、自分は狭心症ではないかと不安に思いながら待つことなく、すぐに診断を受けることができることは大切なことである。また、冠動脈が支配する心筋(図2)を全自動で計算することができるようになったため、心筋の血流低下を定量的に評価することが可能となることを示すことができた(図3)。今後、さらに検証を進め、臨床現場で医師の判断を支援する知能としての早期実用化を目指していく。」と述べている。

図2 抽出された冠動脈と、それによって栄養されている心筋
図3 CT虚血指数(Ischemic Index)と冠動脈造影にて評価された冠血流予備量比

 

※1 CNNとはニューラルネットワークに畳み込み操作を導入したもので、全結合層、畳み込み層、プーリング層など幾つかの特徴的な機能を持った層で構成されるニューラルネットワークのこと
 

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