富士通株式会社
柔軟なオープンネットワークの構築に貢献する5G仮想化基地局ソリューションを提供開始

2023.02.21

NVIDIA製GPUにより処理能力を向上させ、基地局機能とエッジアプリケーションを同一サーバで運用可能

 富士通株式会社(以下、富士通)は、通信事業者などの客向けに、社の無線基地局ソフトウェア(vCU、vDU)と、NVIDIA社注1(以下、NVIDIA)のGPU技術を組み合わせた、5G仮想化基地局ソリューションを2023年3月よりグローバルに提供を開始した。本ソリューションの開発は株式会社NTTドコモ注2(以下、NTTドコモ)が推進する「5GオープンRANエコシステム」注3(以下、OREC)の枠組みのもとで協創し、NTTドコモは本ソリューションの性能検証、評価に協力した。

 本ソリューションは、基地局における物理レイヤーの処理を担うGPUにNVIDIA製の「NVIDIA A100X」注4(以下、「A100X」)を適用することで、処理能力の向上を図り、同一サーバ上で仮想化基地局とエッジアプリケーションの処理を並列に行うことが可能なオールインワン構成を実現している。また無線装置(RU)の収容数と処理能力を向上させ、高品質な通信環境を実現するとともに、将来的なアンテナ技術の向上による演算負荷の増加に対しても、ソフトウェアのアップグレードで柔軟かつ容易に対応できる。

 当社は、本ソリューションの提供を通じて、NTTドコモなどの通信事業者と協力し、オープンな5Gネットワークのグローバル展開に貢献する。本ソリューションは2023年2月27日(月曜日)から3月2日(木曜日)までスペインのバルセロナで開催される世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2023」に出展する。

背景

 次世代通信規格5Gの普及が進むにつれて、無線通信の用途は多様化し、接続する端末数や種類も増加している。通信事業者や自社でネットワークを保有する事業者は、従来以上に高性能かつレジリエントなシステムの構築が急務となっている。また、O-RAN注5など無線基地局仕様のオープン化の世界的な潮流を背景に、柔軟な機器調達と構築コストの削減が可能な、専用ハードウェアを用いない、ソフトウェアで構成された仮想化基地局の導入も世界的に進んでいる。加えてマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)の活用による、5Gの持つ超高速、大容量、低遅延の特長を活かした新たなサービスの創出も期待されている。

本仮想化基地局ソリューションの特長

 今回富士通が提供開始するソリューションは、2022年3月から提供を開始した仮想化基地局注6に、NVIDIA製のGPU処理エンジン「A100X」と、基地局処理を実行するアクセラレーション「NVIDIA Aerial SDK」注7(以下、「Aerial SDK」)や包括的なAIフレームワークを組み合わせたことにより、通信事業者からエンタープライズの客まで幅広いユースケースに展開が可能である。

図:本仮想化基地局ソリューションのイメージ

1. GPUリソースの仮想化機能による、基地局機能とコンピューティング機能の並列化

 仮想化基地局内のNVIDIAのGPU処理エンジン「A100X」のハードウェアリソースを仮想化することで、演算リソースを分散させて処理させることが可能である。これにより、無線基地局の通信処理と、AIなどを用いたコンピューティング処理を同一GPU上で並行して行えるため、従来より簡便なオールインワンの機器構成で多様なアプリケーションを5Gネットワークと連携させて運用することができる。製造現場におけるAGV(無人搬送車)の制御や、ARやVR技術を活用した映像配信など、エンタープライズの客による5Gの超高速、大容量、低遅延通信の特長を活かした新たなサービス提供にも貢献する。

2. GPUを採用したことによる、無線通信の処理能力向上と先進アンテナ技術に対応可能な拡張性

 「A100X」の演算性能を活用し、基地局の処理能力を向上させ多くのユーザーに高品質な通信環境を提供することができる。また、Massive MIMO注9をはじめとする将来的なアンテナ技術の向上に伴う高負荷なデータ処理にも、ソフトウェアのアップグレードのみで容易に対応することが可能である。

 富士通は5G仮想化基地局ソリューションを、NTTドコモをはじめとする通信事業者にグローバルに提供し、高品質な5Gネットワークインフラの拡充と、エンドユーザーの客の快適な通信とビジネスの発展に貢献する。

NTTドコモグローバルビジネス部 ORECエバンジェリスト 安部田貞行氏のコメント

 柔軟性と拡張性が高く、インテリジェントなネットワークを構築するために、モバイルオペレーターのオープンRANやvRANへの関心は高く、導入に向けた検討が進められています。ドコモは、富士通やNVIDIAなどの優れたORECパートナーと共に業界を変革し、世界中のネットワークの進化、発展に寄与していきます。

NVIDIA Senior Vice President Telecom, Ronnie Vasistha氏のコメント

 NVIDIAは、NTTドコモや富士通をはじめとするエコシステムパートナーと協力して、ソフトウェアベースの5G仮想化基地局とエッジAIアプリケーションを、GPUで高速化されたオールインワンのシステムで実現できることを嬉しく思います。NVIDIAの5G対応のAerial、仮想現実向けのXRや、デジタルツイン実現のためのOmniverseを一つのシステムに組み合わせることで、GPUを搭載したサーバが、AIアプリケーションを強化し、5Gネットワーク上でデジタルとリアルのツインワールドの没入体験をどのように提供できるか示すことができます。

富士通モバイルシステム事業本部長 理事 谷口正樹氏のコメント

 完全仮想化された5G基地局ソフトウェアとAIやXRアプリケーションを活用したマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)を同一コンピューティングリソース上にオールインワン構成で実現し、超低遅延サービスの提供並びに高度に最適化されたTCO(Total Cost of Ownership)と、グリーン性能を実現しました。 今後もNTTドコモ、NVIDIAをはじめとするグローバルなオープンエコシステムパートナーと協力して、通信事業者及びエンタープライズのお客様のビジネス発展やグローバルでのデジタル化の進展に貢献していきます。

富士通株式会社よりの謝辞

 本ソリューションの技術には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」(JPNP20017)の成果の一部を活用している。

商標について

 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標である。

注釈

注1 NVIDIA社:
   本社:米国 カリフォルニア州、CEO: Jensen Huang

注2 株式会社NTTドコモ:
   本社:東京都港区、代表取締役社長:井伊 基之。

注3 5GオープンRANエコシステム:
   多様なニーズに応えられる柔軟なネットワークの構築を可能とする、オープンな無線アクセスネットワークのグローバル展開を目的とした、vRANの商用化を含むNTTドコモ、富士通およびパートナー企業による取り組み。

注4 NVIDIA A100X:
   GPUによるパワフルな並列演算とDPU による高速なネットワーキング処理が融合した、NVIDIAが提供するコンバージド アクセラレータ。

注5 O-RAN:
   相互運用可能でオープンな無線アクセスネットワーク(Open RAN)の仕様策定を推進する標準化団体「O-RAN ALLIANCE」の仕様のことで、Open RANソリューションは、本仕様に準拠。当社は、「O-RAN ALLIANCE」に加盟。

注6 2022年3月から提供を開始した仮想化基地局:
   低消費電力と高性能を両立した5G仮想化基地局を提供開始(2022年2月24日プレスリリース)

注7 NVIDIA Aerial SDK:
   ソフトウェアで定義された仮想化基地局機能を GPU を用いて展開するためのソフトウェア開発者キット

注8 UPF:
   User Plane Functionの略。ユーザデータの送受信処理を行う機能。

注9 Massive MIMO:
   大容量通信、利用効率の効果を期待する超多素子アンテナを採用した要素技術。

関連リンク

富士通株式会社のSDGsへの貢献について

 2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標である。富士通のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものである。

本件が貢献を目指す主なSDGs

お問い合わせ

担当:
  富士通 広報IR室 
  山本 (070-3052-8898、yamamoto.dai@fujitsu.com)
  松苗 (070-3052-1613、ryutaro_m@fujitsu.com)