バリアンメディカルシステムズ、「Varian Oncology Summit」を5月21日に神戸で開催―がんの脅威に負けない世界を目指してー
放射線治療装置及び関連システムを取り扱う株式会社バリアンメディカルシステムズ(本社:東京都品川区、代表取締役:ケネス・タン)は、2023年5月21日(日)、ホテルオークラ神戸(兵庫県神戸市)で「Varian Oncology Summit 2023」を開催した。
本サミットは、「A world without fear of cancer –がんの脅威に負けない世界」というバリアンメディカルシステムズのビジョンのもと、がん医療に携わられる医療関係者の皆様、その患者や家族へ貢献することを目的として開催している。今回の「Varian Oncology Summit 2023」は、ホテルオークラ神戸での現地開催と同時ライブ配信で、バリアンの最新情報を紹介後、4 つのセッションにて各領域のエキスパートの先生にご講演を賜った。また、午後には特別企画「Small Group Workshop -ESAPI & Brachytherapy -」として、少人数制のワークショップ2 種類を展開し、参加した先生に同社放射線治療ソリューションを体感していただいた。
プログラム全体編
■開会のご挨拶
株式会社バリアンメディカルシステムズ
専務執行役員シニアマネージングダイレクター
福島権一氏
■Varian Update座長:白井克幸先生(自治医科大学)「ETHOS™Therapy/IDENTIFY™」
演者:Sushil Beriwal, MD, PhD.
(Varian, Vice President, Multi-Disciplinary Oncology, Medical Affairs)
■Halcyon™+ TrueBeam®は本当にベストパートナーなのか?
座長:西村恭昌先生(生長会府中病院)
演者:稲田正浩先生(近畿大学)、松本賢治先生(近畿大学病院)
■これからの市民病院における放射線治療のあり方
座長:小久保雅樹先生(神戸市立医療センター中央市民病院)
演者:佐貫直子先生(市立四日市病院)、足立源樹先生(那覇市立病院)
■放射線治療における新しい技術を臨床使用する際に求められること
座長:吉岡靖生先生(がん研究会有明病院)
演者:神宮啓一先生、本間経康先生(東北大学)
■ランチョンセミナー、京都大学におけるRapidArc®15年の歴史と、今後の高精度放射線治療のあり方について
座長:永田靖先生(広島大学/広島がん高精度放射線治療センター)
演者:溝脇尚志先生、中村光宏先生(京都大学)
■閉会のご挨拶
バリアンメディカルシステムズカスタマーサポート本部 本部長 山本宣治氏
各セッションレポート
■開会のご挨拶
株式会社バリアンメディカルシステムズ専務執行役員シニアマネージングダイレクター福島権一氏が登壇し、こう挨拶してプログラムをスタートさせた。
「Varian Oncology Summitは、バリアンユーザーの先生方をお迎えして、対面とライブ配信のハイブリッドでベストプラクティスや最新情報をシェアできるのは、5年ぶりのことです。このコロナ禍においても、先生方の多大なご尽力により、放射線治療はその間も続けられてきたと認識しております。私たちバリアンは、「A world without fear of cancer(がんの脅威に負けない世界)」というビジョンのもと、がん医療に携わる医療従事者の皆様、患者様、そのご家族様への貢献を第一に考えて参りました。バリアン社製放射線治療装置の日本での臨床稼働台数はこの2023年度に入りまして、600台を超えました。これだけ多くのがん医療をサポートしていることに、あらためて身の引き締まる思いでございます」
■Varian Updateセッション
Sushil Beriwal, MD, PhD.(Varian, Vice President, Multi-Disciplinary Oncology, Medical Affairs)が、「ETHOS™Therapy/IDENTIFY™」と題し、「ETHOS Therapy」の特長について説明した。
「ETHOS Therapyは、毎回の位置決め画像とAIを用いて、日々変化する患者さまの解剖学的特徴、腫瘍の位置や形状変化に合わせ、放射線治療計画を最適化し、再治療計画を支援することで、放射線治療における個別化医療を推進します。
放射線治療は多くの場合、数日から数週間にわたって行います。そのなかで、これまで、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)や画像誘導放射線治療(Image-Guided Radiation Therapy: IGRT)の導入により、腫瘍への線量集中性を高め、周囲の正常組織への線量低減を行ってきましたが、毎回の照射の都度、日々変化する患者様の解剖学的特徴、腫瘍の位置や形状変化に合わせ、放射線治療計画を最適化し、再治療計画を行う適応放射線治療(Adaptive Radiotherapy:ART)は、その作業が複雑で時間がかかるため、毎回の照射の都度に行うことは実用的ではありませんでした。
それを「ETHOS Therapy」では、適応放射線治療を標準的治療時間内で実施できることを開発コンセプトに、AI を活用した治療計画作成機能とコンツーリング機能を組み合わせた、適応放射線治療ワークフローソリューションを実現しました。まず、あらかじめ定義されたテンプレートで医師が治療目標を定義し、この定義に基づいて最初の治療計画が作成されます。CBCT を最短17 秒で取得可能。最大画像取得範囲38.5cmで、治療時は患者さまの解剖学的特徴および腫瘍の形状と臓器位置の変化に適応するように治療計画が変更され、患者様を治療台に載せたまま、適応放射線治療を提供することができます」
■「HalcyonTM+ TrueBeam®は本当にベストパートナーなのか?」
稲田正浩先生(近畿大学)が、両者の違い、使い分けなどについて解説いたしました。Halcyon + TrueBeamの特性については、「TrueBeamは深部病変・浅部病変への対応ができること。6軸補正で長いターゲットにも安全に照射できる。ノンコプラナービームで頭尾側方向にConformalな定位照射に向いている。照射法も3D-CRT・固定IMRT・VMATと、基本的に何でも可能。Halcyonは、前立腺・頭部・肺など放射線治療のよい適応疾患をスピーディーに治療できること。1日2回照射で3-4周のVMATで行う治療も通常照射の時間枠を圧迫することなく素早く実施できる。そのうえ、低い寝台、広いボアで患者にも優しい。毎日のCBCTも素早く実施でき、想定外のターゲット変化にも対応してくれるといった利点がある」と説明した。
稲田先生はまた、「多発脳転移に対する脳定位照射の需要は急速に高まっている。迅速に治療を実施するにはOne isocenterが望ましい。そのうえで、Conformal な分布の作成には、ノンコプラナービームが重要です」とも伝えた。
松本賢治先生(近畿大学病院)は、「新型リニアックHalcyonと、今までのリニアックTrueBeamの違い」について、「高精度な照射に対応したIGRT装置」「IMRT特化型の装置(conventionalな照射も可能)」「1回転するのに~30秒(VMAT)と高速」「CBCTの撮影が可能(最短で16秒で撮影が可能)」「衝突の可能性がなく、防音性に優れる(リング型)」「MLC speed: 5.0cm/sec」「Representative beam data (RBD) を必ず使用する」「光照射野が無い」「gantry, collimator 角度が目視で確認できない」といった利点や現状の弱点を説明し、Halcyonの利点について、「VMATに特化して、治療時間は短縮できる」「故障が少なく、安定した治療ができる」「現状では定期的な部品の交換が必要」「TrueBeamの良きパートナーとして運用できる」とまとめた。
■「これからの市民病院における放射線治療のあり方」
佐貫直子先生(市立四日市病院)が「これからの市民病院における放射線治療のあり方三重県北部地域を担う公立病院の役割」についてご講演した。「治療機器の更新・購入には、長期ビジョンを共有しながら、人手不足を解消し仲間を増やしながら効率化し、地域ニーズに対応していくことが大事」と説いた。
足立源樹先生(那覇市立病院)は、「那覇市立病院の将来展望は?~放射線治療の微妙な立ち位置~」についてご講演した。同病院がHalcyon 導入後の効果について、「強度変調放射線治療(IMRT/VMAT) を、件数の制限をすることなく実施できるようになった」「地域がん診療連携拠点病院として十分な姿になった」「VMATを件数制限せずに行えるようになった」「地域がん診療連携拠点病院として満足できる放射線治療を提供できるようになった」などを挙げた。
■「放射線治療における新しい技術を臨床使用する際に求められること」
神宮啓一先生(東北大学)が、「放射線治療の業界でも医療Dx を推進すべきである。停滞は後退を意味する。これからもっと厳しい時代になる」「新規技術導入に向けて経営者としての管理が必要である」「できない理由は探さない」「導入した技術は常に検証を行い、患者あるいは医療スタッフに恩恵をもたらしているのかを確認」「新規技術もチームで改善していく。チーム内の風通しをよく」とまとめた。
また、本間経康先生(東北大学)は放射線治療分野における標的の移動や変形などの対策目的で開発されてきた有効な技術として、「主に画像誘導と照射制御」「画像化技術の著しい進展」「人工知能技術の台頭」を挙げた。さらに臨床応用に向けた展望については、「さらなる自動化による普及の可能性」「人工知能の有効活用」を挙げた。
■ランチョンセミナー「京都大学におけるRapidArc®15年の歴史と、今後の高精度放射線治療のあり方について」
2009年にRapidArcを開始した京都大学の溝脇尚志先生、中村光宏先生が登壇。京都大学におけるRapidArcの経験を報告した。中村光宏先生(京都大学)は、「2009年にRapidArc を臨床導入して以降、スループットが向上。パソコンのパフォーマンス向上により、待機時間が大幅に減少した。今後、TPS単体としての機能はほぼプラトーに達する(であろう)。集合知による機能拡充に期待したい」とまとめた。
また、溝脇尚志先生(京都大学)は、現在のRapidArcの特長について、「照射時間・MU値の大幅な短縮・低減」「線量分布は固定多門IMRTと同等以上」「最適化時間は大幅に短縮」「難しいプランは固定多門より短時間で立案可能」「設定した線量制約を満たすDVHとなるプランを比較的容易に実現(設定に無理がない場合)」を挙げた。
溝脇先生はさらに、「IMRT/RapidArcによる原発性脳腫瘍に対する永久脱毛防止照射」という最新トピックスも紹介。「とくに髄芽腫等の小児脳腫瘍では全脳・全脊髄照射が必須となり、治療例においては、発達障害と並んで永久脱毛もQOLを落とす大きな要因」と指摘し、進化したRapidArc によって、永久脱毛が避けられるようになったことを報告し、こうまとめた。
「RapidArc (VMAT) は、今やIMRTの標準技法。物理の限度内でかなり自由に線量分布調整が可能になった。また、線量分布の自由度が大幅に増加した一方で『各疾患・各症例ごとに適切な線量分布はどのようなものか』に関する知見や考察は大幅に不足しており今後の課題だ」
■閉会のご挨拶
バリアンメディカルシステムズカスタマーサポート本部 本部長 山本宣治氏が登壇。「バリアンは、放射線治療のリーディングカンパニーとして、新しい技術の開発、その新技術を実装し、世の中に普及させていくことに尽力しています。バリアン社製の放射線治療器具を採用いただいた際は、インスタレーションチーム、カスタマーエデュケーション、フィールドサービスエンジニアなどがワンチームで皆様をお支えすることを約束します。カスタマーサポート本部は、真のカスタマーケアをめざし、サービスを進化させて邁進していきます。具体的には、障害が発生した場合は迅速な復旧はもちろん、予防的なプリベンティブ、AIによるプレディクティブにも務め、『放射線治療を止めない』をモットーに、医療従事者様・がん患者様・そのご家族様に貢献していきます」と伝え、閉会した。
【特別企画】Small Group Workshop –ESAPI & Brachytherapy
プログラム終了後、13:45~15:30には、特別企画「Small Group Workshop –ESAPI & Brachytherapy -」と題した2種類のワークショップが開催され、多くの来場者がその最新テクノロジーを体感した。
Workshop I
「ESAPIに触れてみよう!ストラクチャー編」では、一般公開されているスクリプトをEclipseTMに取り込み実行するまでの手順、注意点について解説した。来場者の皆様は、実際にEclipseを使い、スクリプト「OptiMate」では、PTVやPRV、オーバーラップ領域、リングなどの計画および最適化構造の作成を自動化するプロセスを体感した。
座長:遠山尚紀先生(東京ベイ先端医療・幕張クリニック)
講師:小玉卓史先生(東京ベイ先端医療・幕張クリニック)、杉本聡先生(順天堂大学)、藤田幸男先生(駒澤大学)
WorkshopII
「Brachytherapy Workshop」では、九州医療センターの大賀先生を座長にお迎えし、Varian社のRALSをご導入頂いている演者の先生方からアプリケータの評価や臨床経験、治療計画についてご講演いただいた。当日はBRAVOS本体デモ機とアプリケータの実物を準備し、来場者の皆様にはお手に取ってご覧になって頂き、手技に関しての意見交換の場としてもご活用する機会になった。
座長:大賀才路先生(九州医療センター)
講師:Varian Applicator の導入使用経験~装置更新のご経験から~
橋本弥一郎先生(東京女子医科大学)
Varian Multi Channel Cylinder Applicator ~使用経験と使用開始まで~
中嶋綾先生、小野智博先生(京都大学)
Brachy Vision 16.1 の使用経験
黒岡将彦先生(東京医科大学)
Varian について
Varian の掲げるビジョンは、「A world without fear of cancer(がんの脅威に負けない世界)」だ。70 年以上にわたって、世界中の医療従事者の皆さまが何百万人もの患者さまを治療できるように、革新的ながん医療技術とソリューションを開発、構築、そして提供してきた。Intelligent Cancer Care(インテリジェントキャンサーケア)のアプローチにより、AI、機械学習、データ分析などの先端技術を活用して、がん治療を強化し、治療へのアクセスを拡げていく。約70 拠点の約11,000 人の社員が、がん医療における新たな勝利を後押しする中で、同社は患者さまと医療従事者の皆さまを自分たちの考えの中心に位置づけている。バリアンは、2021 年4 月15 日にSiemens Healthineers (シーメンスヘルシニアーズ)との組織統合が完了し、1つの会社となった。バリアンはSiemens Healthineers の一員として、共にがん医療に貢献していく。
Webサイト:http://www.varian.com/ja
会社概要
会社名:株式会社バリアンメディカルシステムズ
代表者:代表取締役ケネス・タン
資本金:4億9,000万円
設立:1999年3月
所在地:東京都中央区日本橋兜町5番1号兜町第1平和ビル
事業内容:医療用機器、衛生設備機器及び関連部品・付属品の設計、製造、販売、据付、修理、保守及び輸出入電子機器及び関連部品・付属品の設計、製造、販売、修理、保守及び輸出入上記業務に関連又は付随する技術指導、技術支援及び技術コンサルティング
主要取扱品目:米国Varian Medical Systems 社製医療用リニアックをはじめとする放射線治療システム及び関連システム
お問い合わせ先
株式会社バリアンメディカルシステムズ マーケティング部
E-mail: jp-marketing@varian.com