富士通、日本のドラッグ・ロス解消に向けて、治験のデジタル化を加速するエコシステムを構築~パートナーシップの締結とAIを活用したオファリング提供開始~

2024.08.26

 富士通は、クロスインダストリーで社会課題を解決する事業モデル「Fujitsu Uvance」のもと、人々のウェルビーイングの向上に取り組む「Healthy Living」において、海外で承認された新薬が日本で使えないドラッグ・ロスの課題解決に向けて、製薬企業や医療機関などと共に、治験領域で医療データを活用した新たなエコシステムを構築することで、国際共同治験を日本へ誘致する取り組みを開始する。

 同社は、世界最先端の治験プラットフォームを提供する米国スタートアップ企業であるParadigm Health, Inc.(以下、Paradigm)と2024年7月に戦略的パートナーシップ契約を締結した。Paradigmの治験プラットフォームと、同社の医療データ利活用基盤「Healthy Living Platform」およびAIサービス「Fujitsu Kozuchi」を活用することで、医療機関が持つ医療データの収集や加工を促進し、治験計画業務の効率化と期間短縮を実現する。

 さらに、「Healthy Living」の新規オファリング「Patient-centric Clinical Trials」として、同社LLMを活用した治験文書の自動作成サービスを2024年8月26日より提供開始する。

 今後、富士通は、治験計画だけでなく、その後の実行段階まで支援領域を拡大し、治験プロセス全体の課題を解決していく。これにより、同社は、治験領域において2030年度に200億円の売上を目指すとともに、患者が必要な医薬品を早期に入手でき、自分にあった治療を選択できる社会の実現に貢献していく。

背景

 日本では治験の対象となる患者が複数の病院に分散しているため、治験計画に必要な症例収集に多くの時間とコストを要している。薬価抑制策も相まって、世界規模での新薬開発のために企画される国際共同治験の対象地域から日本が除外されるケースが増加している。

 その結果、2023年3月時点で海外で実用化しているものの日本で未承認の医薬品は143品目に上り、海外で承認されている薬を日本で投与できないドラッグ・ロスの問題が深刻化している。

取り組み概要


1. Paradigmとのパートナーシップにより治験領域のデジタル化を加速

 製薬企業と医療機関向けに治験の計画から実行までのプロセスをワンストップで支援している米国のParadigmと提携し、これまで困難だった医療データを活用した新たな治験環境の整備を実現する。圧倒的な国際共同治験数を誇る米国を中心に多くの実績を持つParadigmの治験プラットフォームと、富士通の日本におけるヘルスケアとライフサイエンス領域での業務支援ノウハウやサービス、最先端テクノロジーを融合する。

 具体的には、同社が医療データ利活用基盤「Healthy Living Platform」を通じて医療機関から収集した診療データやゲノムなどの臨床データをAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のLLMを用いて、各種規制に準拠した形式に加工し、Paradigmに提供する。またParadigmは、同社の治験プラットフォーム上でこれらのデータを分析し、治験の計画および実施に必要なインサイトを製薬企業に提供することで、治験計画段階において治験を実施する医療機関や患者分布の実態を加味できるようになり、製薬企業の治験設計業務の大幅な効率化を実現する。

 医療機関も、Paradigmの治験プラットフォーム上で、患者が参加できる治験の情報を早期に把握できるため、適切なタイミングで患者に治験の参加を促しやすくなる。
 両社は、2024年9月から、臨床研究中核病院への提供を皮切りに、これらのソリューションを展開していく。

2. 治験特化型LLMで業務効率化を実現する新オファリング「Patient-centric Clinical Trials」提供

 製薬企業が新薬開発に向けて作成する必要がある数百におよぶ治験関連のドキュメントは、未だに手作業で作成や管理がされていますが、同社の治験特化型LLMを活用することで、これら膨大なドキュメントを、規制に準拠した形に自動作成できるサービスを「Healthy Living」の「Patient-centric Clinical Trials」オファリングとして日本国内で提供する。

 同社の有する治験領域での高い実績と法規制への深い理解に基づき、製薬企業の既存ドキュメントを法規制に準拠したデータ構造へと自動変換する。さらに、熟練者が実施していた情報の検索や要約、法規制に則った表記や翻訳などの高度な作業を可能とする当社の治験特化型LLMにより、これら変換データから治験関連のドキュメントを自動生成する。

 本オファリングの実証試験を製薬企業と行った結果、各ドキュメントの80%をLLMで自動作成した。同社の試算では、ドキュメント作成に要する期間が従来の50%まで削減する見込みである。同社は本オファリングを通じて、製薬企業における治験計画業務における効率化と期間短縮に貢献していく。

今後について

 同社は、さらなるパートナーとの提携やオファリングの拡充により、治験計画業務だけでなく治験の実行段階を含めたプロセス全体を包括的に支援することで、日本の治験環境におけるデジタル化を加速していく。これにより、日本で多くの国際共同治験が実施される土壌をつくり、ドラッグ・ロスの解消を目指す。
 同社は今後も、人々のウェルビーイングの向上を追求する「Healthy Living」の取り組みを推進し、医療データ利活用による新たな価値創造を通じて、一人ひとりが自ら自分らしい生き方を選択できる社会の実現に貢献する。

商標について

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