シーメンスヘルスケア、心臓CTに適したCT装置「SOMATOM Pro.Pulse」の販売を開始増加する心疾患の診療ニーズに応え、心臓CTに適したデュアルソースCTでラインアップを拡充

2024.02.28

 シーメンスヘルスケア株式会社(東京都品川区、代表取締役社長: 森 秀顕氏、以下 シーメンスヘルスケア)は、心臓CTに適したデュアルソースCT 装置「SOMATOM Pro.Pulse(ゾマトム プロパルス)」を2月28日より販売した。

  • 独自の画像補正技術により、マルチスライス画像の継ぎ目を解消し、連続性を保った信頼性の高い心臓CT画像を提供
  • AI技術を用いて開発された全自動撮影システム「myExam Companion」により、高効率な検査を実現
  • 消費電力を従来比20%削減、ランニングコストと環境負荷低減に貢献
ゾマトム Pro Pulse

 心不全の有病率は加齢とともに高くなることが知られており、人口の高齢化により、1950年には5万人以下であった新規発症数が2030年には35万人を突破すると予測されている。急激な心不全の増加が「心不全パンデミック」と呼ばれるなど、医療のひっ迫が懸念されると同時に、疾患の臨床的管理の重要性が注目されている。心臓CTはカテーテル検査に比べて非侵襲であることに加え、2022年に安定冠動脈疾患の診断と治療に関するガイドラインが改訂され、心臓CTがファーストラインの検査とされたことで、今後検査数の増加が予想されている。一方で、撮影画像が心拍の影響を受けてしまうため、撮影者の技量や患者さんの心拍により検査の成功率が左右されてしまうことが課題であった。

 デュアルソースCTは、X線管と検出器を2対搭載したCT装置であり、世界でもSiemens Healthineersのみが 製品化している。2対のX線管と検出器が同時にデータを収集することにより、シングルソースCTの約2倍高い時間分解能を実現することによって、心拍の影響を受けにくい精度の高い心血管イメージングを可能にしている。すでに精緻な撮影画像を必要とする世界各地の医療施設に導入されているが、この度、心不全をはじめとする心疾患の高精度な診療へのニーズに応えるべく、SOMATOM Pro. Pulseを開発した。

独自の画像補正技術により、マルチスライス画像の継ぎ目を解消し、連続性を保った信頼性の高い心臓CT画像を提供


 心臓のCTスキャンにおいては、呼吸や心臓の動きによるモーション・アーチファクト(偽像)を排除するために、高い時間分解能とスキャン速度が重要となる。デュアルソース CTは、2つのX線管を用いた撮影により、心臓CTスキャンにおいてベンチマークとなる100msを下回る86msという時間分解能を実現し、心拍の影響を受けにくい安定した画像の提供が可能である。一方で、マルチスライス撮影により撮影画像の継ぎ目にズレが生じてしまうバンディング・アーチファクトが課題となっていた。本装置は、今回新たに開発した画像補正技術「ZeeFree」により、このバンディング・アーチファクトを解消し、連続性を保ったCT画像により、高心拍や不整脈が見られる場合でも、信頼性の高い心臓CT画像を提供する。

AI技術を用いて開発された全自動撮影システム「myExam Companion」により、高効率な検査を実現
 

 本装置には、AI技術を用いて開発された全自動撮影システム「myExam Companion」をデュアルソース CTとして初めて搭載している。性別、身長、年齢などに加え、心拍数や息止め可能時間など、CT検査に必要な個々のデータを組み合わせて、必要な検査内容を自動で作成するだけでなく、検査を受ける方固有のスキャンパラメーターを自動で調整することで、撮影前の準備時間の短縮や撮り直しの低減に貢献する。また、検査目的に応じて撮影後の高度な画像処理が必要とされる場合も、myExam Companionが自動でプロトコル選択と画像処理を行うため、撮影後の画像処理時間の短縮が可能だ。技師の経験やスキルに関わらず、高精度のポジショニングや高スループットにより高効率な検査を実現し、撮影者や読影者の業務負荷軽減に貢献できる。



消費電力を従来比20%削減、ランニングコストと環境負荷低減に貢献


 本装置は、電源容量を従来のデュアルソースCTの3分の2まで小型化し、X線発生装置をガントリー内に収納したり、空冷方式を採用した設計により、コンパクトな設置サイズを実現している。これにより、消費電力を従来のデュアルソースCT比で20%削減しました。ランニングコストの削減だけでなく、環境負荷の低減に貢献する。

 なお、本装置は、2024年4月12日(金)から14日(日)までパシフィコ横浜で開催される、「2024国際医用画像総合展(ITEM2024)」の当社ブースに展示される。



Siemens HealthineersのデュアルソースCT技術の歴史

デュアルソース CTの強み

1.高い時間分解能
 CT検査において呼吸や心臓の動きによるモーション・アーチファクトを最小限に抑えるためには、X線管の回転スピードをできるだけ速くすることが大切だ。シングルソースCTでは、回転スピードの限界により、時間分解能100msを超えることができなかった。デュアルソース CTでは、2本のX線管を使用することにより、それぞれのX線管が90度回転するだけで180度分のデータ収集が可能になり、100ms以下の時間分解能の実現が可能だ。CT検査において心拍数を下げるために使用されるベータ遮断薬の使用が難しい被検者や、コントロールの難しい高心拍・不整脈の被検者の方に対しても、冠動脈、心筋、弁などの高精度な撮影画像の提供に貢献していく。

2.高速な撮影
 身体の広範囲にわたる撮影を行う際に、撮影速度が十分でない場合、撮影画像にモーション・アーチファクトが発生する可能性がある。デュアルソース CTでは2つのX線管がそれぞれ異なる軌道を描いて撮影を行う高速2重らせん撮影を行うことにより高速な撮影を実現する。心臓の動きが静まる一瞬のタイミングを見定めて高速で撮影することや、体幹部を1秒程度で撮影することが可能だ。撮影時間を短縮することにより、被ばく量の低減にも貢献していく。

3.高精度なデュアルエナジー撮影 
 異なる管電圧を使用した撮影方式であるデュアルエナジー撮影 では、物理的にはいくつかの撮影方式が可能だが、当社のデュアルソース CTでは、それぞれのX線管で異なる管電圧(kV)とmAs値(管電流×照射時間)値を設定することで、高速で広範囲なデュアルエナジー撮影 が可能になる。また、X線スペクトルの重なりを防止するフィルタ(錫フィルタ)を使用することで、デュアルエナジー撮影において重要になる精度の高いスペクトル解析を実現するだけでなく、シングルエナジー撮影と同等またはそれ以下のX線量で高精度なイメージングが可能なことが報告されている。

4.造影剤の投与量低減に貢献するコントラストの高い低管電圧撮影
 高齢の方を含め、腎機能が低下している患者さんは、造影剤投与後に腎機能が低下することが報告されており、造影剤の投与量を抑えた検査へのニーズが高まっている。X線管の電圧を下げた低管電圧撮影を行うことで、造影剤のコントラストが向上することが分かっており、造影剤の投与量を抑えるために、管電圧を下げてCT検査を実施する重要性が高まっている。デュアルソース CTでは、2つのX線管を搭載していることで、従来の2倍のX線出力が可能なため、低管電圧撮影において大きな体格の被検者でも造影剤投与量を抑えた撮影が可能となる。

5.4D撮影に対応するテーブル制御技術
 テーブルを繰り返し往復移動させてデータを収集する4D撮影は十分な撮影範囲を確保しつつ、往復移動に関わるテーブル制御の精度を高める必要がある。デュアルソースCTの高速撮影で培った正確なテーブル制御技術は、適切なタイミングで十分な撮影範囲を撮影することを可能とし、最大42.5cmの4D撮影を実現している。CTパーフュージョン(灌流)撮影だけでなく、広範囲にわたる血流の動態評価などをサポートする。

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