JASTRO見聞記

2011.12.27

JASTRO見聞記

東京大学医学部附属病院放射線科
白石憲史郎

 2011年11月17日より19日までの3日間、JASTRO第24回学術大会(大会長 菱川良夫先生)が神戸ポートピアホテルにて開催された。本年は東日本大震災に見舞われた大変な年であったが、大会運営自体には大きな問題はなかったようであり、本年も全体に質の高い学術発表と活発な討議が多かった。個人的にもほぼ全日程に参加することができ、日本の放射線治療分野の顕著な発展とそれを可能とする人材の拡充・学会自体の成長を実感することができた。
 10月に米国Miamibeach市で開催されたASTROにも運よく参加する機会があり、ほぼ毎日早朝から行なわれるEducational Sessionや数多くのLectureに触れ、その質の高さと規模の大きさに圧倒されたものであったが、果たしてJASTROはいかに対比し得るのかも興味深い点であり、この観点からも我が国の放射線腫瘍学を俯瞰する好機となった。
 以下、自分が参加できた限られた範囲内ではあるが特に印象に残ったセッションにつき感想を述べたい。
 まずは2日目のシンポジウム5「大規模震災時の放射線治療」だが、個人的には今回の大会では最も興味深く拝聴させていただいた。石巻赤十字病院の藤本圭介先生からは、高次機能の甚大な損害を被る中、被災地内で唯一診療機能を保ち癌診療を継続し得たご努力と周辺地域との連携の重要性の発表があった。福島県立医大の佐藤久志先生からは、幸い急性障害を呈するような重篤な患者ではないものの、実際に原発事故で被曝した方の除染や地域の放射線スクリーニングに関して報告された。また東北大学病院で被災地病院からの患者受け入れおよび後方支援を担当された有賀久哲先生からは、生々しい震災の経験と共に非常事態でも治療ネットワークが機能していれば困難を克服し得るという力強い発表がなされた。
 このネットワークを機能たらしめる根幹としてデータベース(DB)の構築が不可欠なのであり、DB委員会の大阪大学沼崎穂高先生から、データ連携の標準化の重要性とJASTROホームページとJASTRO-gramによる全国の主要施設の円滑な情報共有・診療支援可能性が報告された。
 そして地震関連アドホック委員会の白土博樹先生から、同委員会の立ち上げと情報収集・復興支援につき具体的な説明が行われた。白土博樹先生のお話では、たまたま都内で地震に遭われたが、交通機関が軒並み麻痺し帰宅難民が大量に発生する中にもかかわらず北海道へ戻られてすぐに本委員会の設立を考えられたとのことであった。1995年の阪神淡路大震災当時、本大会長の菱川良夫先生が大変苦労されたとの経験から、JASTROとして迅速な支援の必要性を感じ、精力的に被災地の状況把握と要望に沿った支援を行うに至ったとのことである。

続きは「RadFan2月号」(2012年1月下旬発売)にてご高覧ください。