2012年6月22~23日に、石川県金沢市内にある金沢市文化ホールと金沢ニューグランドホテルにて開催された
第22回心臓核医学会総会・学術大会の参加報告を、松成一朗先生よりお送りいただきました!
第22回心臓核医学会・参加記
先端医学薬学研究センター 松成一朗
2012年6月22~23日にかけて、金沢大学医薬保健研究域医学系・核医学の中嶋憲一大会長の元、石川県金沢市内にある金沢市文化ホールと金沢ニューグランドホテルにおいて第22回心臓核医学会総会・学術大会が開催された(図1)。近年、心臓領域の画像診断、特にCTやMRIの発展は目覚ましいものがある。一方、心臓核医学は心筋血流だけでなく心筋代謝や交感神経機能など分子レベルで病態を可視化できる機能画像であり、また他の画像モダリティに比べ臨床例でのエビデンスが豊富なのが特徴である。今回のテーマは「リスクに基づく診断治療戦略」と題し、実際の臨床の現場でどのように心臓核医学画像を有効に利用するかについて活発な討論が行われた。以下にその概要を若干の私見を交えて報告する。
学会第1日目はイブニングセミナーと懇親会を兼ねた技術セミナーが開催された。イブニングセミナーでは2つの講演があり、最初に「DES時代の心臓核医学 予後改善を目指したPCIへの取り組み」と題して小倉記念病院の横井宏佳先生が講演された。小倉記念病院といえば日本における冠動脈インターベンションのメッカであり、質的にも量的にも日本トップレベルのPCI実績を誇る施設である。講演趣旨は、低リスクな虚血性心疾患患者では、最適化された薬物療法とPCIの予後は変わらなかったとするCourage試験の発表以来、冠動脈インターベンションを行う循環器医の意識は確実に変化してきている。それを表す象徴的な言葉がPhysiological PCIであり、解剖学的な狭窄ではなく冠血流予備能比(fractional flow reserve: FFR)や負荷心筋血流SPECTにより血行動態的に有意な虚血病変を検出することが、患者予後の改善や最適なPCIに直結すると言った内容であり、様々なエビデンスや自験例などを提示され、分かりやすく説明しておられた。この考え方は、本学会で開催された他のシンポジウムなどにも反映されており、そう言った意味で非常に重要な講演であった。
次いで金沢大学脂質研究講座特任教授である馬淵 宏先生による「遺伝性脂質異常症と冠動脈硬化症」の講演があった。馬淵先生と言えば、家族性高脂血症など脂質代謝研究で高名な先生であり、家族性高コレステロール血症やスタチンを始めとする高コレステロール血症治療の歴史を、大規模臨床試験の結果を中心に分かりやすく概説されていた。更には家族性CETP欠損症の研究から開発されたHDLコレステロール増加剤の最新の知見などについても言及されていた。中でも特に印象的だったのは、家族性高コレステロール血症は比較的希な疾患とされるが実はそうではないということである。事実、通常の高コレステロール血症と診断されている症例でも、ちゃんと調べれば家族性高コレステロール血症である例も少なからず存在することが知られている。これは馬淵先生の豊富な経験に基づくだけに説得力に富んでおり、私のような画像診断医にとっても興味ある講演であった。
学会2日目は、中嶋憲一大会長の開会挨拶に始まり、学会賞受賞講演、様々なシンポジウムやポスター発表など盛り沢山の1日であった。すべてを紹介するのは不可能であるので、個人的に印象的だった幾つかの内容を報告する。学会賞関連で特筆すべき点として、今回より技術部門の学会賞が新設され、学会賞、学会賞(技術部門)、若手研究者奨励賞の3つとなった点が挙げられる。ただ若手研究者奨励賞については応募が少なかったため、3名の受賞候補者からプレゼンや質疑応答などを含めた審査を経て最優秀賞を競うスタイルが踏襲できなかったのは少々残念である。しかし唯一の受賞者となった国立循環器病研究センターの越野一博先生のO-15心筋PETにおける体動の影響に関する詳細な検討は十分すばらしいものであった。また、学会賞には名古屋大学循環器内科/磯部内科クリニックの磯部 智先生が心筋症における一連の研究で受賞され、技術部門の学会賞には国立循環器病研究センターの西村圭弘先生が心臓核医学画像の3次元解析研究で受賞された。
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